春先に岩美町に遠征撮影に行くことになり、昔岩美町聖地巡礼で撮った写真3回分を見返していた。
過去に撮影した写真を振り返ると、自分の撮影スタイルの長所と欠点が見えてくる。1回目は初めての土地とあまり興味のなかった聖地巡礼という行為ということもあり、どう撮って良いのか構図においてもカメラの設定においても迷いが見受けられる。
3回目は慣れた感じで、構図にも様々なチャレンジの跡が見受けられ、絞りも絞って撮っていた。
4回目は高級レンズを使って開放でたくさん撮っていたが、解像感にやや満足できない写真が多めだった、とそれぞれの撮影に特徴がある事が分かった。
この遠征撮影の内、2回目の撮影が一番写真としては出来が良かった。というわけで、これからは開放撮影時の収差を徹底的に排除したOtusといえども、絞って撮ることを忘れないようにしようという新しい撮影スタイルを導き出した。
そして先日のスタジオ撮影で、新たに打ち立てた撮影スタイルを実践した。結果はご覧の通り。解像感に秀でた写真をたくさん撮ることが出来た。絞りを絞ることで見えてくる世界もあることを改めて感じた一日だった。
写真撮影で優れた解像感を得る為の三大要素
解像度の高い写真を撮るにはどうすれば良いのか。尖った解像感を得るには、3つの要素が絡み合っている。
- レンズの性能
- カメラの性能
- 被写界深度
この内のどれか一つの要素を重要視すれば、解像感を得ることが出来る。3つとも揃えば最高の解像感を得ることが可能だ。
写真が綺麗に写るのはレンズの性能に依る所が大きいとはよく知られた話だ。カメラを買うならレンズを買えというアドバイスもよく聞く。
しかし実践に移すとなると、なかなか難しい。なぜなら良いレンズは高価で、10万円以上はするからだ。
キヤノンのLレンズなら、単焦点50mmが実売価格15万円、85mmが20万円、35mmが25万円、24-70mmの大三元ズームレンズが20万円。Otusなら55mmで40万円、85mmで50万円と簡単に手が出せる値段ではない。
ではカメラを最新の機種を買い替えたらどうかという話になるが、こちらもハードルが高い。エントリ機でも6万円から8万円はする。ミドルクラスで15万円、フルサイズなら30万円だ。そして先に挙げたアドバイスに従えば、カメラ本体よりもレンズを買った方が良いという。でも高級レンズは高嶺の花。堂々巡りだ。
そこで手っ取り早いのが被写界深度を深く設定することだ。これならどのカメラでもどのレンズでも出来る。レンズは開放から二段絞ると性能を発揮すると言われている。撮った写真の解像感に不満があるなら、どんどん絞って撮ろう。
F値はどうやって決める?
では実際、どれくらい絞るかといった話になる。どのF値に設定すれば良いのか。過去の遠征撮影を見返してみて、ここではこのF値を選んだ、ここではこのF値に設定した、と記録で振り返った。
それらの数値はあくまで目安であり、ロケ現場の周辺環境や、使用しているレンズ、被写体の人数や性別など様々な要素からこのF値に設定したという思考の過程が大事なのであり、F値の決定値そのものを重要視してはいけない。そんなものは現場でコロコロ変わる。あくまで思考の過程における道標的なものであり、参考程度にとどめるのが良い。
大事なのは、撮影現場に立ったら、自分の頭で考えることだ。どのような意図の写真を撮りたいかを頭の中でひねくり返すことで、F値は自ずと導き出される。
とはいうものの目安のようなものはある。女性キャラを撮る時はF2.2、男性キャラはF4。この数値を基準軸にして、撮影環境を考慮してその都度F値を設定している。
だいたいこれくらい絞ればシャープで綺麗な写真が撮れるかなと、それくらい気楽な気持ちで設定するといいのではないだろうか。レンズの焦点距離や被写体との距離が写真に対して生み出す効果に精通するようになれば、自然とどのF値に設定すればどれくらいシャープに写り、どれくらい暈けるのか、どのような写真が撮れるのかがおぼろげながら見えてくる。
カメラという精密な機械を、撮りたい写真を生み出す為に自分の好きなようにいじる楽しみを味わう。これも1つのカメラの楽しみ方だと感じた1日だった。