先だってキヤノンから、430EX II-RTの後継機種、430EX III-RTが発売された。実売価格27,000円ながら、電波通信方式を採用しており、カメラから離してストロボを光らせたい場合や、多灯ストロなど、ワイヤレス仕様で有効活用できる。
ワイヤレス仕様と言っても、2種類ある。先に述べた電波通信方式と光通信方式だ。この2つの違いは、カメラとストロボの間に障害物がある場合に決定的に異なる。
結論から言うと電波式は障害物があっても難なくストロボを光らせることが出来るが、光通信方式の場合は障害物があると遮蔽されるために、ストロボを光らせるのに難渋する。
旧機種の430EX II-RTは光通信方式だったが、新機種430EX III-RTは電波通信方式に対応した。今まではフラッグシップストロボの600EX II-RTしか電波通信方式に対応してなかったが、こちらは実売価格で5~6万円する。430EX III-RTを選べばお手頃な価格で電波通信方式ストロボが手に入る。
カメラから離して電波式ストロボを使用する場合は、電波通信に対応した25,000円程度のトランスミッターを別途購入する必要がある。結局の所、アンブレラやソフトボックスを使って撮影したり、多灯ストロボをやろうとすると出費がかさむのだが、主にスタジオで被写体を綺麗に撮りたかったり、表現の幅を拡げようとするなら、やむを得ない。
さて、ここで出費を極力抑えるために、フラッグシップストロボは狙わず、価格のお手頃な430EX III-RTを使うという選択肢がある。しかし最近430EX III-RTを2灯使っていて不満な点がいくつか出てきた。
1つには光量の問題がある。スタジオでストロボ撮影をしていると、フラッグシップストロボ600EX-RTを使っていても光量の足りなさを実感する時が往々にしてある。
スタジオ撮影でF11まで絞ってポートレート写真を撮りたい場合、ストロボの光量もそれなりに上げなければならないのだが、1/2迄上げても光量が足りないと感じることすらある。1/1のフル発光はストロボが発熱して自動的に停止状態になることが頻繁にあるので現実的な選択ではない。
そこでISO感度を上げることで、ストロボの光量を明るく出来るが、ご存じの通りISO感度はノイズが発生するし、なるべくなら綺麗な写真が撮りたい。
スタジオ撮影で430EX III-RTをメインの光量として使うのは少し力不足を感じる。そもそも430EX III-RTを購入したのは、白ホリゾントで背景を飛ばしたり、色を付けたいというのが理由だった。つまり多灯ストロボにおける補助的な役割がメインだ。
しかし実際に600EX-RTと併せて使って撮影を続けていると、どうも430EX III-RTの光量が足りないような気がする。そこで光量をめいいっぱい上げて使っていたのだが、そうすると電池の減りが早くて光らなくなる。
多灯ストロボでは1つのストロボが光らなくなるとすべてのストロボが光らなくなる。試しにテストしてみたが、光らなかったのは430EX III-RTだった。電池を交換したら光り出したが、結局その日は4時間の撮影で2回電池交換した。こんな事態が3度の撮影で続いた。
これなら600EX II-RTを購入しておけば良かったかなと少し後悔した。コンパクトで軽量なので多灯ストロボにしたい場合は持って来いの機種なのだが、どうもこう電池交換が頻繁だと、撮影の流れが滞る。
コスプレ撮影はストロボを使った幅広い表現が必要とされる分野で、つまりは撮影者の表現力が試されるのだが、コスプレ撮影の表現力は機材力とも直結する。430EX III-RTを2灯買うよりも、600EX II-RTを1灯買って快適な撮影環境にすれば良かったかなと思ったのだ。
大は小を兼ねるとはよく言われているが、ストロボにおいても光量の大きいストロボを買った方が、撮影において何かと融通が利くだろう。レイヤーから要求される様々な表現方法に対応できるはずだ。