数年前に花火を撮る方法をブログに掲載したのだけれど、あの頃から花火撮影の経験を積み上げていき、今では若干異なる設定で撮影しているので、記事を改めて書くことにした。必要な機材やカメラの設定などを書き記しておくので、花火撮影の際に参考にして頂ければと思う。
余り長い記事になっても読みにくくなるだろうから、テーマを絞って数回に分けて掲載していく。今回は花火撮影に必要な機材に焦点を絞って、詳しく解説していく。
必要な機材
- 一眼カメラ
- 交換レンズ
- リモートスイッチ
- 三脚
- CFカード・SDメモリーカード
- マスキングテープ
- NDフィルター(任意)
- 黒い団扇(任意)
- 小型のLEDライト(任意)
デジタル一眼カメラの選び方
最近のスマホは高性能なので、スマホで花火を撮れないこともない。例えばハート型や鹿の形をした花火なら、一眼カメラを使って長秒露光で撮るよりも、一瞬を撮るスマホの方がきちんとした形で撮れる。
しかし花火を作品として綺麗に撮ろうとするとなると、今現在のスマホでは限界がある。また次々と打ち上がる花火を一枚の写真に収めたい場合も、長秒露光が可能な一眼カメラが必要となる。
スマホでも撮れるが余り綺麗には撮れない
スマホでもシャッタースピードを5秒や10秒に設定でき、またF値をF8やF11などに設定できて、三脚を使う事が出来るならば、一眼カメラで撮るような花火を撮影することは論理的には可能だ。長秒露光が可能なスマホアプリもあるので、インストールして三脚を使って撮ると良いだろう。しかし筆者はやったことがないのでスマホでの花火撮影についてはここでは省く。
スマホのカメラはセンサーサイズが小さいので、一眼カメラと比べると余り綺麗には写らない。iPhoneで撮った写真も小さなデバイスで見れば綺麗に見えるが、iMacのようなデスクトップパソコンで見ると描写に粗が目立つ。本格的な写真を綺麗に撮りたいのなら一眼カメラは必須だろう。
バルブモードで撮れるカメラを選ぶ
どのような一眼カメラが良いかだが、バルブ撮影が出来るカメラなら何でも良い。バルブ撮影モードにすると、シャッターボタンを押している間、シャッター幕が開いた状態になり、シャッターボタンを放すとシャッター幕が閉じる。シャッターが開いている状態、すなわち露光している間に次々と上げる花火を収めることが出来る。
カメラのカタログにバルブ撮影モードが可能か、Canon製品の場合はカメラ上部のダイヤルにA、Tv、Av、といった表記の他にバルブモードを表すBの表記がある。カタログを見てバルブ撮影モードが備わっているか確かめてみよう。
今現在お手持ちのカメラにバルブモードがなくても撮れないことはない。マニュアルモード、もしくはシャッタースピード優先モードで、シャッタースピードを10秒前後に設定し、F値が11になるように設定して撮っていけばなんとか撮れるが、花火の打ち上がるタイミングが捉えられなかったり、打ち上がっている最中にシャッターが閉じてしまうことにもなる。つまり難易度が高くなり、撮影中にストレスも溜まる。花火撮影はバルブモードで撮影した方が楽なので、バルブ撮影機能の付いているカメラをお薦めする。
花火撮影にお薦めの交換レンズ
レンズ一体型のコンパクトデジタルカメラと違い、一眼カメラにはレンズを着けないと写真は撮れない。ではどのようなレンズが良いか。これは撮影場所によって異なってくる。
作例のカメラとレンズを調べて、最適なレンズを決める
撮影場所から花火が打ち上がるまでの距離によって、花火の大きさは当然異なってくるのだから、カメラのフレーム内にほどよく収まるようなレンズを選ぶ必要がある。場所によっては焦点距離16mmの超広角レンズが収まりが良いこともあれば、70mmがよい場合もあるし、200mmが良い場合もあるので、一概には言えない。そこで事前に「撮影場所 花火 写真 レンズ 焦点距離」といった幾つかのキーワードの組み合わせでネット検索して、出てきた写真がどのカメラとレンズで撮っているかを調べる。
なぜカメラの情報も重要かというと、フルサイズ機とAPS-C機ではセンサーサイズの大きさの違いから、写る広さが異なってくる。フルサイズ機に100mmのレンズを装着して撮影したフレームいっぱいの収まりの良い花火の写真があったとして、APS-C機で同じレンズを使って撮ると、フルサイズ換算で150mm〜160mmの画角となる。フルサイズで撮影したレンズの焦点距離を参考にしてレンズ選びをすると、その作例より望遠になってしまい花火が大きくはみ出てしまう恐れがある。その点に注意しておかなければならない。
ズームレンズを使うと傑作が撮りやすくなる
理想的な焦点距離が決まったとして、次に問題になってくるのが、単焦点レンズで撮るかズームレンズで撮るかという問題だ。結論から言うとズームレンズの方がいい。実際に撮影現場に訪れて、背景のあれやこれやを入れて撮りたいとなった時に、単焦点レンズでは融通が利かない。花火撮影の場所は混雑していることが多く、一度場所を決めると動けない。また理想的な位置に場所取りできるとも限らないので、場所取りがうまくいかなかった分を、焦点距離を自在に変化できるズームレンズで補うことが出来る。特に200mmの望遠レンズを使うのが一番収まりが良いような、花火の打ち上げ位置から数キロ遠く離れた場所では、少し後方に移動したところで、フレーム内に収まる夜景などの範囲は余り変わらないので、単焦点レンズよりもズームレンズを持っていった方が、もっと夜景をいっぱい入れたいとか、自分の理想とするフレーミングが可能となる。
開放F値が小さくて高価なLレンズを紹介してみたが、どうせ絞って撮るので、花火目的というのなら安いレンズでも構わない。重要なのは焦点距離だ。
明るい単焦点レンズは最小絞りが小さい面でも不向き
単焦点レンズは確かに綺麗に写ると言われているが、花火撮影の場合はF8からF22まで絞る。またF1.2のような明るい単焦点レンズの場合はF16迄しか絞れない製品もある。Canon EF50mm F1.2L USM、Canon EF85mm F1.2L USM、Zeiss Otus1.4/55、Zeiss Otus1.4/85などは最小絞りがF16なので、白くて明るいスターマインを間近で撮ろうとしてF22まで絞りたい場合には、NDフィルターを着けて対処する必要がある。
どちらにしても花火撮影の場合はF8からF22迄の間で絞って撮る事になる。筆者自身は最近F11が多いだろうか。絞って撮ればどのようなレンズでも解像力が増す。だいたい開放F値から2段絞ればそのレンズの持つ描写性能が引き出されると言われている。Canonのレンズに関してはキヤノン EFレンズ FANBOOKを参考にするといいだろう。
絞れば絞るほど全体が綺麗に写るというわけではなく、絞りすぎると描写がボンヤリとなる小絞り暈けの影響が出てくる。APS-C機F9以上、フルサイズ機F11以上の設定で描写に影響が出てくると言われている。花火撮影ではF22迄絞ることもあるが、小絞り暈けが写真描写に与える影響の点も留意しておきたい。
単焦点レンズの強みは背景を思い切り暈かすことが出来る点だが、花火撮影の場合は暈かして撮ることはほぼないと言っていいだろう。手前に人物を入れて花火を暈かして撮るという特殊なポートレート撮影などでは暈かして撮ることも考えられるが、今回の記事では花火をメインの被写体として撮ることに重点を当てて解説していく。
リモートスイッチは必須!
花火撮影ではリモートスイッチは必須となる。バルブ撮影を行う場合は、このリモートスイッチを押し続ける、または押して下に下げてロックを掛けて、シャッターを開きっぱなしにし、程よいところで、スイッチを離す、もしくはロックを解除してスイッチを離すといった作業を行う。
リモートスイッチを使わずに直接手でシャッターボタンを押したり押し続けたり離したりすると、指の衝撃がブレとなって写真に現れてしまう。特に長秒露光ではこのような些細な衝撃によるブレが顕著に表れるので、リモートスイッチは必須だ。純正品のシンプルな機能のみを備えた一番安いもので良い。余り機能がたくさんあると大きくて嵩張るしややこしいし、高価なので、花火撮影の用途なら、シンプルな機能のみのリモートスイッチで十分だ。
三脚も必須!
三脚も花火撮影には必須となる。三脚の選び方はご自身がお使いのカメラとレンズの重量に対応した三脚を選ぶと良い。これも耐重量という項目で三脚のカタログに載っているので、ご自身が使用するカメラとレンズの総重量を調べて、耐重量以内に収まっているかどうか参考にするといいだろう。三脚と雲台一体型と、三脚の脚のみ、雲台のみの製品のように分けて販売されている。一体型の方がおそらく個別で買うよりも価格的にはお得だ。
花火撮影は人混みの中で撮ることが多い。座って撮るか、立って撮るかは場所にもよる。皆が座ってみているところで立って撮っていたら後方の花火閲覧客の視界の邪魔になる。余り高さのある三脚を使うと後ろの人たちが見えないので、止めておいた方が良いかもしれないが、これも場所によるのでなんとも言えない。例えば背が高すぎる三脚は逆に視界の邪魔にならないこともある。とてつもなく大きい三脚、まぁ混雑しそうな場所ではどうなんだろうなという気持ちもあるが、各自判断に任せたい。
自由雲台は構図の微調整に使いにくい
自由雲台がいいか、3WAY雲台か、花火の場合は3WAY雲台の方が構図を決めやすい。
自由雲台は細かく構図を決めるのに不向きだ。自由雲台はボール型になっていて、ぐるぐると自由に回るので夜空を撮る時に思いっきり上に向けたりする場合は楽と言えば楽だが、花火のような写真は水平をきちんと取り、かつ周りにビルなどの夜景をどれくらい入れるか、花火がはみ出ない位置に細かくきっちり合わせたりする必要がある。
自由雲台は自由すぎる分、動きが行き過ぎたり、実際にセットすると下に下がっていたりするので、細かい調整にかなり時間がかかる。
その点3WAY雲台は動きの幅が余り自由でない反面、微調整しやすくカッチリと決めやすい。
三脚メーカー一覧
CFカード・SD・SDHC・SDXCメモリーカード
CFカード・SD・SDHC・SDXCなどのメモリーカード、これを忘れるとシャレにならない。外出前にしっかりと確認しておくこと。容量は32GBあれば足りる。
メモリーカードは転送速度がなるべく早い製品を選んだ方が良い。特に超高画素のカメラは花火を撮り終わって次の花火が打ち上がるまでの間に書き込みを終えない遅いものもあるので、書き込み速度が速い製品を選びたい。SDカードかCFカードか迷うところだが、カメラの機種によっては最新規格のメモリーカードに対応しておらず能力を最大限に発揮できない恐れもあるので、お手持ちのカメラの取扱説明書やメーカーのサイトでどのタイプのメモリーカードの規格に対応している価格にしてから購入したい。
例えばサンディスクのSDカードを使うとして、Canon 5DsRはUHS-I対応(読み込み速度最大 95 MB/s・書き込み速度最大 90 MB/s)だが、UHS-II(読み込み速度最大 300 MB/s・書き込み速度最大 260 MB/s)には対応していない。互換性はあり使用できるが性能を発揮できない。そこで選択肢として、一回り大きいCFカードを使用する。
CFカードは、『タイプI準拠、UDMAモード7対応』とあるので、以下の製品が使用できる。
国内正規版と海外パッケージ版の違い
同じサンディスクでも海外パッケージでは半額以下の値段となっている。どちらを買うか迷うところだが、貴重なデータを確実に保存したいなら正規版を買っておいた方が無難だろう。海外パッケージ版は平行輸入盤という言い方もされており、正規版とは流通経路が異なる。価格が安いが業者が介在するので、中には偽物が含まれている可能性もある。またメーカー保証が受けられない。
例えば上で紹介した商品の品番は、サンディスクの場合は次のように意異なる。
- SDCFXPS-032G-J61・・・正規版
- SDCFXPS-032G-X46・・・海外パッケージ版
海外パッケージ版の方が安いが、万が一の不良品だった場合はメーカー保証が受けられないので、安物買いの銭失いになりかねない。
また他のメーカーの安いメモリーカードも壊れたという話をよく聞く。一期一会の大切なデータを守るためにも、記録カードにはお金を惜しまない方が良い。消失したデータはお金では取り戻せない。取り戻せたとしても高価なメモリーカードを買うよりも高いお金がかかる。
マスキングテープ
AFもしくはMFで花火の発射位置にピントを合わせ、レンズ側でマニュアルフォーカスに切り替えた後にマスキングテープを使ってピントを固定するのに使う。
NDフィルターで明るさを抑える
必須ではないがあると便利。最小絞りがF16のレンズを使っている場合や、F22でも花火が白飛びするようなシーンでは、明るさを下げるNDフィルターが役に立つ。筆者は花火撮影では使ったことがないので解説はここまでで置く。
黒い団扇は納涼アイテムとしてもオススメ
フィルムカメラ時代はシャッターを開きっぱなしにしたまま、花火の打ち上がる合間に黒い内輪をレンズの前に掲げて、一枚にたくさんの花火を収める多重露光のような効果のある写真を撮っていたそうだ。
今現在はデジタルカメラなので、Photoshopを使えば簡単に複数枚の花火の写真を一枚に合成できる。また花火のプログラムによっては一発撮りで簡単に撮れる花火もあるので、花火撮影に内輪はいならいかなぁという思いが強い。Canonがキャンペーンで内輪をプレゼントしたので、今でも使うのだろうかと思った次第。花火大会によっては役立つのかも知れない。ただ、花火が始まるまでの蒸し暑い待ち時間の間に仰ぐと涼しいので、納涼アイテムとしては意外と役に立つ。
小型のLEDライト
花火撮影終了後は、暗闇の中で作業することになる事が多い。出来れば頭に着けるタイプのLEDライトなら両手が空くので楽だが、荷物を増やしたくない場合はペンライト型のLEDライトが役に立つ。スマホのライトでも代用できる。LEDライトを1本持っておくと、徹夜での撮影などにも便利だ。
次の記事では、花火の撮影スポットの見つけ方と、場所取りの方法を解説していく。