スタジオ撮影と言えば、ソフトボックスやアンブレラを使って一灯や多灯ライティングで決めるという方法が、コスプレ撮影では定番となりつつある。
しかし5人くらいの併せの撮影となると、多灯でも全員に均等に光を当てるのは難しい。また多灯ライティングは荷物が増えるので、女性カメラマンにとっては重荷になるのではないだろうか。他にもソフトボックスやアンブレラ、ライトスタンド、アンブレラホルダーなどライティング機材をそろえたりしないといけないから出費がかさむ。多灯ライティングとなると更にストロボ代もかさむ。
そこでストロボ一つで手っ取り早く人物を綺麗に撮る方法を今回は試してみた。
それは壁バウンス。おそらく初めてストロボを購入し、これといったライティング補助機材もなく、どう人物を撮ればいいのか迷った人が、まずはじめに試す方法ではないだろうか。僕自身もストロボ撮影を始めた頃には壁バウンスで撮影していた。
そこで今回は初心に返って壁バウンスで集合写真を撮ってみた。ストロボをカメラのホットシューに取り付け、ストロボの発光部を後ろ側に回して斜め上にし、ストロボ光を天井や後ろの壁にバウンスさせる。気になるのはカメラの上にのせているストロボから発せられる光の漏れが、直接被写体に当たって堅いイメージになりはしないかという点だった。
ストロボの光量設定はマニュアルではなく、EーTTLに。光源の位置が固定するソフトボックスやアンブレラとは異なり、ストロボを載せたカメラを握ったカメラマンが動くことになるので、自動調光の方が面倒くさくなくてよいという判断。一度試し撮りしてから、調光補正で+2に設定してみた。
ソフトボックスやアンブレラと変わらないライティングの質感
家に帰ってから、ソフトボックスで撮った写真と壁バウンスで撮った写真から似た構図を1枚ずつ選び出し、明るさや色味も同じになるようRAW現像で調整してみた。
等倍で見てもライティングの質感にそんなに違いがあるようには見えない。あるとすれば壁バウンスの方はキャッチライトが一つだが、3灯ライティングはキャッチライトが三つ入っている。顔の向きによっては陰が出るが、それはソフトボックスの時も同じこと。キャッチライトが入っていないメンバーがいるのが気になるくらいだ。懸念だったストロボ光の漏れは確認できなかった。
一番の違いはキャッチライトの数と大きさだろうか。被写体から離れれば離れる程、キャッチライトは小さくなる。アンブレラやソフトボックスは大きいのでキャッチライトが大きめに入る。キャッチライトの有無や大きさはやはり人物、特に女性を撮る際には最重要事項の一つだと思われるので、このあたり、壁バウンスで撮影する場合にどう対処するかが今後の課題だ。
先ほど色味もRAW現像で調整したと述べたが、壁バウンスで撮影した方の写真、実は色がかなり暖色に寄っていた。というのも、後ろの壁の一部がレンガ模様で薄茶色だったからだ。おそらくその薄茶色で光の色が変わってしまったものと推察される。しかしこれもRAWで撮影していれば、あとから色温度や色かぶり補正のパラメータを調整することで、ソフトボックスで撮った色と同じ色に出来る。
JPEGモードオンリーで撮っている場合は、暖色にブレたなら、ホワイトバランスをK(ケルビン)にして、直接数値を入力すると良いだろう。この場合は2800〜4000Kあたりが妥当だろうか。寒色にブレたならKの数値を大きくする。こちらは6000〜8000くらいだろうか。他にもホワイトバランス微調整を使って、写真の色を微調整すれば、色がブレていても理想的な肌色で撮影することが出来る。
かといって黒い壁のスタジオでは、壁バウンスの方法では効果がない。黒は光を吸収してしまうからだ。壁バウンスが通用するのは天井や背後の壁が白いスタジオだけであるという点に留意しておく。
ストロボを被写体に直接向けて撮ると、いかにもストロボを当てた感じのテカテカの仕上がりになるが、ストロボを天井や後ろに向けて光をバウンスさせれば、ソフトボックスやアンブレラと似た効果が得られる。5人前後の集合写真を撮影するときのお手軽ライティングだ。
壁バウンスのデメリット
ではオンストロボでの壁バウンスのデメリットは何か。ソフトボックスのように被写体に陰影をつけることが出来ない。キャッチライトが小さい、もしくは入らない。黒壁では使えない。この3点。
- 陰影をつけることが出来ない
- キャッチライトが小さい
- 黒壁では使えない
つまりキャッチライトが小さくてもかまわなくて、陰影をつける必要のない撮影で、スタジオが白壁ならば、積極的に壁バウンスを試していきたいところだ。ライティング機材がなくても、ストロボ一つで集合写真を綺麗に撮ることが出来る。