大阪にあるハウススタジオ、シェルエンブレイズで4回ほど20人前後の大型併せを撮影した。ここに4回の撮影を通して得た教訓を書き記していきたい。集合写真というと全員にピントを合わせることが必須となる。大人数の集合写真を撮るときの一助としてもらえれば幸いである。
まずこのスタジオのダイニングで撮影した写真のカメラの設定と使用レンズ、ライティングから書き記しておこう。
- カメラの設定・・・F値10、シャッタースピード1/60秒、ISO感度1600
- 使用レンズ・・・Canon EF24-70mm F4 IS USM
- ライティング・・・ソフトボックス大中2個とアンブレラ1本それぞれに、Canon600EX-RTを設置。
- ストロボの光量・・・それぞれ1/2〜1/4前後。
F値10はかなり絞り込んでいる。海外の写真撮影に関する本を読んでいると、ピンショットのスタジオポートレートでもF11の設定で撮っている場合が多い。20人前後の大型併せで、上にあげた写真のように前後していると、やはりF10の設定が必要になってくる。ここまで絞れば、当該レンズの場合は解像感が十二分に引き出されて綺麗な写真が撮れるというのもある。さらに理想を言えばF11の設定が欲しい。
シャッタースピードは1/60秒。これは焦点距離35mmで撮影しているというのと、手振れ防止機能(IS)をオンにしているということもある。手ぶれしないシャッタースピードの目安は1/焦点距離×2ということを考えると、このあたりが妥当か。これ以上シャッタースピードを遅くすると、今度は被写体ブレが生じる恐れがある。じっと止まってくれていればいいのだけれど、20人前後全員をブレることなく撮影するためにも、シャッタースピードはある程度余裕を持って保険をかけておいた方が良い。
他にもシャッタースピードを1/100秒を切るギリギリの遅さに設定したのは、背景の明るさを確保したいという点もある。やはりF11まで絞ると、スタジオの場合はかなり暗くなる。ISO感度を1600まで上げて明るさを確保しているが、それでも暗くなる恐れがあるので、手ぶれと被写体ブレが生じないギリギリの1/60秒とした。
ISO感度は1600。フルサイズ機だとノイズは気にならない。JPEG撮影モードの場合はカメラ内部、RAWモードの場合はキヤノンの純正RAW現像ソフトで自動的にノイズを減らす処理をしてくれるので、ノイズは載っていない。写真を等倍表示で確認したが、ノイズ処理が施されているため、ノイズは全く確認できないと言って良い。ISO感度100で撮るよりもノイズ処理によって肌がツルッとなっているほどだ。これ以上ISO感度を上げるとノイズが気になりだすかもしれない。
それでも明るさが足りなければ、RAW現像ソフトもしくはPhotoshopなどの画像編集ソフトで明るさを上げる。今回はストロボ光の助けもあり、明るさは上げずに済んでいるが、好みに応じて明るさを上げるのもいいだろう。
スタジオには片側に窓があったがブラインドを全開にして、少しでもスタジオ内が明るくなるように自然光を取り込んだ。
焦点距離は35mmになるように設定。試しに50mm前後で撮ってみたが、これだけ前後に幅があると、さすがに最後列のメンバーが若干ボケてしまった。35mmがやはり妥当か。35mmならF10でも全員にピントが合う。一番上にあげた写真のF値の設定はF10となっている。理想はF11。
どうしてもピントが全員に合わない場合は、最前列のメンバーにピントを合わせることを優先しよう。35mmの焦点距離で被写体(メンバー)との距離を縮めて撮影した場合、前のメンバーは大きく、後ろに行くにつれて小さく写る。一番前のメンバーが一番目につくので、そこがボケてしまうと写真として引き締まらない。
欲を言えば焦点距離50mmで撮るのが理想だ。35mmでも両サイドが若干歪みが生じているように見受けられる。またカメラと被写体との距離によって前後するメンバーの大きさの比率にも影響が出てくるはずだ。被写体から距離をあけて撮れば全メンバーの大きさが均一に近づいて行く。そこは絵作りの好みでもあるだろうし、要求が細かすぎる気もするので、お任せといったところだろうか。遠近感を出すか、圧縮効果を狙うかの違いだ。
APS-C機でのカメラの設定
ここまでの解説はフルサイズ機での撮影を前提に進めていった。APS−C機ではどうなるだろうか。検証してみよう。
理論的には焦点距離24mmが妥当となる。広角域ではあるが、撮像素子がフルサイズよりも一回り小さいので、歪みの生じる部分はトリミングされ、広角レンズ特有の歪みはそれほど生じないのではないだろうか。APS−C機を所有していないので分からない。実際に撮影した方からの報告を待ちたい。
使用するレンズは24mmの焦点距離で撮れるものなら何でも構わない。手振れ防止機能がついているとなお良いだろう。同じ位置から、より広角の24mmで撮るということはフルサイズよりもボケにくいから全員にピントが合わせやすいだろうが、フレーム内に余白が生じると被写体に近づいて撮影しがちなので、遠近感が強くなり奥のメンバーがより小さく写ることも有り得る。また広角ゆえの歪みも生じるならば、出てきた写真に納得がいかない場合もあるだろう。
その場合は35mmの焦点距離に変えて、モデルから離れて撮影する。
ISO感度は1600だとノイジーな写真になるかもしれないが機種による。以前スタジオでご一緒した女性のカメラの方に、高感度で撮れば肌が綺麗に写りませんかと聞いてみたら、う〜んと首を傾げていた。
ISO感度をなるべくあげないで撮る対策としては、F値の設定を小さくすることだ。明るさが足りなければF値を段階的に下げて行く。ピントは最前列のメンバーに合わせる。一番目立つ最前列にピントが合うことを優先させる。全員にピントがあった写真を撮るかノイズで画質が損なわれていない写真を撮るか、トレードオフとなる。
広角寄りの焦点距離で遠近感を効かせて集合写真を撮った場合、後ろの方のメンバーは前のメンバーよりも相当小さく写ることになる。つまり多少はボケていてもあまり目立たない。SNS用に1000px前後の写真に縮小して載せるなら、後ろのメンバーがわずかにボケていても、そこまでは気にならないだろう。ただし理想は全員にピントがあっていること。この点を常に念頭に入れておく事が重要だ。