電波通信方式で多灯ストロボを行う場合の、ストロボの設定方法を解説していきたい。
今回はマニュアルモードでの設定方法を解説していく。というのも自動的にストロボの光量を調節してくれるE-TTLモードやE-TTL IIモードは、カメラの上にストロボを取り付けたカメラマンと被写体との距離がめまぐるしく変わる結婚式の撮影には最適だが、ソフトボックスとモデルとの距離が余り変わることのないオフカメラによるストロボ撮影では、マニュアルモードで撮影した方が効率が良いという理由がある。
また自動調光による多灯ストロボ撮影だと、光量比でストロボ設定を行わなければならないのでややこしい上に自由度が制限されるが、マニュアルモードなら各ストロボを自分の好きな光量に設定できるので、厳密な表現が求められるコスプレ撮影には打ってつけだ。何よりマニュアルモードで撮影した方が、単純で簡単なのだ。
今回使用するストロボの機種はCanon 600EX-RT。Canon ST-E3-RTをトランスミッターとして使用した場合を例に解説していく。既に後続機の600EX II−RTが発売されているが、お値段も高いので旧機種を使っている方も多いかと思われる。直感的に操作しにくいインターフェイスなので、なるべく分かりやすく、写真付きで簡潔に述べていきたい。
ストロボ側の設定
1.スイッチをオンにする。
2.左端の矢印ボタンを二回押す。電波通信方式のスレーブSLAVE状態になる。スレーブは英語で従属装置という意味。
3.液晶画面に表示されているGrの下にあるボタンを押すとA→B→C→D→E→Aと表示が変わる。このストロボに割り当てるアルファベットをA・B・Cの中から選ぶ。
4.液晶画面左端のZm/C Fnの下のボタンを押し、中央のダイヤルを回して照射角を設定する。
5.Menu1の下のボタンを押してMenu3を表示させて、CHの下のボタンを押し、中央のダイヤルを回して、Ch設定する。
トランスミッター側の設定
1.MODEボタンを押して、マニュアルモードにする。
2.RATIOと表示されている下のボタンを押すとA・Bと表示される。もう一度押すとCも追加で表示される。
3.Grの下のボタンを押して、中央ダイヤルを回し、光量を変えたいストロボを選ぶ。選んだら中央のSEL/SETボタンを押す。
4.ダイヤルを回して各ストロボの光量を調整する。終了したら右端の戻る矢印の表示されている下のボタンを押して、戻る。これですべての設定は完了。
設定をクリアにするには
ストロボやトランスミッターの設定をクリアにするには、Clearと表記されている左右のボタンを、Clearedが表示されるまで同時に押し続ける。
次の項目で、上述した各設定について詳しく解説していく。
各ストロボの光量を調整できるように、A・B・Cに割り当てる。
多灯ストロボで有効的に撮影するには、各ストロボの光量を自由自在に調節できるように設定しなければならない。その為にはまずストロボ側の設定をする。上述した手順で、A・B・Cの中から、ストロボに割り当てるアルファベットを選んで設定する。
例えば3灯用いる場合は、被写体の斜め前から当てるメインライトのストロボはA、反対側から当てるフィルインライトの役割を果たすストロボはB、被写体の真後ろから当てるリムライト用のストロボはC、といったように、光量が設定しやすくなるよう、分かりやすい関係をストロボ間で構築して、割り当てを設定する。
4灯用いる場合でも、後ろの壁を2色に色づけしたくて2灯用いる場合は、その二つのストロボを両方Cに割り当てると、光量が同じになる。
照射角の設定をしてみよう
照射角の設定は、クリップオンストロボでカメラの上にストロボを設置して撮影する場合に、レンズの焦点距離に応じて、ストロボ光の光の幅を調整する機能だ。常にストロボ光が写真全体に行き渡るように設定してくれる。
メインライトとなるソフトボックスやアンブレラに宛がうストロボの場合は、照射角については余り深く考える必要はない。デフォルトの24mmかそれ以下の設定で良いだろう。
後ろから光を照射する場合は、照射角を狭めると光量が強くなる。また、ストロボにカラーフィルターを付けて壁に色づけする場合は、照射角を変えることで、色がつく範囲が変化する。照射角を操ることで、表現の幅を広げることが出来る。
他人のストロボと同調しないようにチャンネル設定も忘れずに
チャンネルの設定は、他人のストロボとの同調を防ぐために設定する。
シェアスタジオで他のカメラマンが同じメーカーのストロボを使っていると、同じチャンネルの場合、シャッターボタンを押す度に同調してストロボが光ってしまう。それを避けるために、チャンネルを設定する。今回はch.2を選んだ。
光量の設定方法
トランスミッターを用いて多灯ストロボを行う場合は、トランスミッター側ですべてのストロボの光量の調整を行う。ストロボ側で光量を調整する必要は全くない。
光量は1/1から1/128まで設定できる。1/1はフル発光で最も明るく、1/128が最も暗い設定となる。
始めに行ったストロボ側の設定でアルファベットを割り当てたので、光量を変えたいアルファベットを選んで、1/1から1/128までの間で適当な光量を選ぶ。
各ストロボの光量の比率は、メインライトが1なら、フィルインライトは1/3といわれているが、撮影現場の状況に応じて最適な光量の比率で設定していく。
上の画像は、ストロボAが1/4、ストロボBが1/8、ストロボCが1/16の光量に設定されている状態を表している。ストロボAが一番光量が強く、次いでストロボB、ストロボCは一番光量が弱い。
ハイスピードシンクロモードの設定で、シャッタースピードを上限以上に速く出来る
キヤノンのカメラの場合は、ストロボを光らせる際のシャッタースピードの上限は1/250秒となっている。これ以上早くシャッタースピードを設定したい場合は、SYNCが表示されている下のボタンを押すと、ハイスピードシンクロモードが作動し、シャッタースピードの上限が解除される。
SYNC機能を用いたいシーンとして、野外でストロボを用いた日中シンクロで開放で背景を暈かして撮りたいときの他に、スタジオ内で被写体はストロボで明るく照らしながら、なるべく背景を暗く落としたい場合などが考えられる。
しかしハイスピードシンクロモードを発動させて、シャッタースピードを1/250秒よりも早く設定すると、ストロボ光が極端に暗くなるので、被写体を明るく照らすのが難しい撮影となる。モノブロックストロボよりも光量が弱いクリップオンストロボを用いた撮影の場合は、被写体に極力ソフトボックスを近づけるなどの試行錯誤が必要となるだろう。