背景を暗く落とし、被写体には陰影をつけた集合写真の撮り方を探る

全体的に暗めで陰影をつけて集合写真を撮る方法を探る。
全体的に暗めで陰影をつけて集合写真を撮る方法を探る。

ハウススタジオや白ホリゾントで25人前後の超大型合わせを撮影したことは何度かあったので、今回も巧くいくのではないかと踏んでいたが、今回の大型撮影は15人前後で暗めにして陰影をつけて撮って欲しいという要望だった。これがなかなかに難しい。

まず暗く撮るのが難しかった。ストロボを使わなければ、カメラの設定だけを見ると暗く撮れる事が分かる。そこにストロボ光を1灯足せば人物に陰影をつけて撮る事が出来る。実際大型を撮る前に同じ場所でツーショットを撮ったのだが、このときは背景を暗くし、且つ陰影をつけて撮る事が出来た。

ところが人数が15人となり、フォーメーションが円形となると、途端にライティングが難しくなった。撮っていて感じたのは、今までは白ホリゾントで綺麗に撮るのは難しい、暗いスペースだとストロボを使った時に撮りやすいと感じていたのが、全く逆転したことだった。

全員を均一の光で明るく撮ることは簡単だ。両側、正面などからストロボを当てれば良い。ところが陰影をつけて、且つ背景を暗く落として撮るとなると、全く難渋した。

まず背景が暗くならない。ストロボを炊くとこちらが予想している以上に明るくなってしまう。絞りをF10まで絞り、シャッタースピードも1/250秒に設定し、ISO感度も500と低めにしているのにもかかわらず、ストロボのせいで背景が明るくなる。

ISO感度を500にしたのは、ストロボの光量が1/2と大きめに設定しても、被写体に当たる明るさが足りなかったから、ISO感度で明るさを増感させた。ISO感度800でストロボ無しだとほとんど暗くなるので、ISO感度の設定は問題ない。

となるとやはり主原因はストロボになる。大中ソフトボックス2個を両側から当てる。アンブレラでも1灯足していただろうか。ひょっとしたらコンクリートがレフ板代わりになって光が回りすぎているのが原因だろうか。

背後から光らせるストロボ1灯ライティング

被写体は陰影をつけて明るく、背景は暗く落としてというこのアンビバレントな要望は3,4人の少人数の撮影なら巧くいくが、横に広がった円陣の撮影だと難しい。ありがちなのが、背景になるべく光が回らないよう両側に横に向けてソフトボックスを置くために、両側の人物だけが極端に明るく写り、中央の人物達がやや暗めになるという事だ。

以前似たような廃墟系スタジオで8人くらいの合わせを撮った時は、巧く暗く落とせたのだが、あの時は背景その物が汚れたシャッターで暗かったからだろうか。今回は背景が灰色のコンクリートの剥き出しだ。

集合写真は焦点距離35mmではなく50mm以上で撮る理由!

横3列くらいなら両側からソフトボックスのストロボを当てて背景を暗く落としつつ陰影をつけて撮ることも可能だったかも知れない。そのスタジオではその方法で上手くいった。今回は広がり具合も含めると、前回上手くいった陣形と比べ、実質横に6,7列ほどある。

改善策を上げておくので、機会があればお試し頂きたい。

  • ソフトボックスにグリッドをつける。
  • 大光量フラッシュを使う
  • ストロボを直に当てて撮影する。
  • ストロボにグリッドをつけて撮影する。

グリッドをつける

ソフトボックスにグリッドをつけることで光の幅が狭まる。これで背景に向かう光は抑えられるのではないか。問題は筆者が使用しているprofotoのグリッドは高価である点だ。ソフトボックス90×60のグリッドは実売価格14,000円。120×90のグリッドは23,000円する。この点に関してはゴドックスなどの安価なソフトボックスとグリッドを使う事で対処できる。

大光量フラッシュを使って撮る

もう一点問題となるのは、グリッドをつけるとストロボ光が弱くなることだ。その点は光量の大きいストロボを用意するか、ISO感度で対処するしかない。明るさ確保のためにF値を下げると、集合写真の場合は縦長のフォーメーションによってはボケて写るメンバーが出てくるのでお薦めできない。

ストロボ直当て

ストロボを直に当てて撮影すると、まず光量不足を補える。ソフトボックスをつけて撮影するとやはり明るさが弱くなる。何もつけずにストロボを光らせれば光量不足の問題は解決する。

問題はストロボ直当ては、被写体のコントラストが強くなり、如何にもストロボを当てた感じのする写真が撮れてしまい、最近のコスプレ撮影では忌避される傾向にある点だ。しかし今回の撮影の場合は、むしろソフトボックスで光を和らげるやり方よりも、敢えてストロボ直当てでコントラスト強めに撮った方が、サーチライトか何かが当たっている感じがして良かったのではないか。

一枚だけミスショットで横一列5人のストロボ直当ての写真が撮れていたのだが、よく見ると後ろにコントラストの強い影が伸び、サーチライトが当たっている感じで良い雰囲気が出ている。たとえ背景のコンクリートが明るくなっても暗めのイメージで陰影をつけるという主催の思惑通りの写真が撮れたのではないか。

そしてストロボにグリッドをつければスポットライトのような写真が撮れる。持ってきていたグリッドは1つだけだったので、この日その方法で集合写真が巧くいったかどうかは疑問だが、もう一つか二つグリッドを持ってきて撮れば成功していた可能性もある。

どうもソフトボックスを使って綺麗な肌に撮ることに慣れてしまうと、それが絶対に正義という意識が働き、ストロボ直当てを忌避する傾向にある。権威じみた無駄な思考が働いてしまっていたのだろう。また大型を撮影する機会があればストロボ直当てかグリッドを買い足して挑戦したい。