カメラという趣味はお金がかかる。僕もフルサイズ一眼レフデジカメを購入した頃は、本体と4万円の単焦点レンズ一本買うのがやっとだった。とにかく貯金がゴッソリと持って行かれる趣味だ。これが読書とか美術館巡りなら、そんなにお金がかからないし、精神的にも充足した日々を送れる。コストパフォーマンスに優れた趣味と言えるだろう。
カメラはその真逆を行く。筆者自身の体験を語ろう。カメラとレンズを買ったはいいけど、さて被写体はどうしよう。女の子を撮りたくても、身近に都合のつくモデルがいない。お金がかかったのに上手く撮れなければストレスになる。そもそも撮り方が分からない。自然と風景写真を撮るという流れになる。
しかし消去法から導き出された被写体を撮るのは、不本意だ。テンションがあがらない。テンションが上がらなければ凄い写真を撮りたいという情熱も湧かない。自然と退屈な写真ばかり撮ってしまう。熱意が持続するどころかますます冷める。そして防湿庫の肥やしへ・・・・・・。
撮りたい写真が風景写真なら、カメラへの情熱が冷めることもなかっただろう。しかし僕は人間が撮りたかったらしい。その後趣味でライブを撮るようになったが、これもどうも違う。
そのようにしてカメラに対して余り情熱を持てなかった長い潜伏期間があった。コスプレ写真を撮るようになってから、カメラもレンズも機材も一気に増え出した。必要と感じたからだし、このカメラやレンズで撮ってみたい、ストロボを使ってみたいと自然と写真を撮ることに対する情熱が湧いてきたからだ。
僕はいつも一番いいレンズやカメラを買うようにしている。中途半端なレンズやカメラを買って後悔したくないからだ。知り合いに最初はAPS-C機を使っていたが、何度か買い換えて、最終的にフラッグシップ機を購入した人がいた。それならはじめから一番いいカメラを買った方が、お金を無駄にせずに済んだだろうし、浮いたお金で新しいカメラ機材が買えただろうと思ったのだ。
とかくカメラという趣味はお金がかかる。だが高い物を買えばむしろ節約になるというのは、何とも逆説的な性質を持つ趣味だと常々思う。
目先の利益だけにとらわれては損をする。自分の用途に合わせて、先の先まで見据えなければならない。
60万円もするCanon 1DXを清水の舞台から飛び降りる覚悟で買ったのは、性能云々よりも、コストパフォーマンスの面が大きい。フラッグシップ機の性能については購入した当時は余りよく分かっていなくて、ただ単純に40万ショット撮れるという点だけを重視していた。一年に5万ショット撮れば、8年は持つだろうという考えからだった。
これが5DMarkⅢなら、3年で買い換えなければならない計算だ。サイクルを考えると、30万円の5DMarkⅢよりも、60万円のCanon 1DXの方がお買い得だ。画素数で劣る点は不満であったが、大目に見るしかなかった。
実際には1年に10万ショット以上撮っていた。購入3年目ですでに23万ショットを超えている。連射機能などほとんど使っていないにもかかわらずだ。結果的に1DXを購入したのは成功だった。5DMarkⅢなら頻繁にシャッターユニットを交換するか買い換えていなければならなかっただろう。とてもではないがカメラも資金も持たない。
またフラッグシップ機ゆえの性能の高さも享受することが出来た。防塵防滴仕様は雨の中や砂漠でも安心して撮ることが出来る。AFのピントもよく合う。画素数は申し分ない。画質も最高級だ。ISO感度を上げてもノイズが少ない。
APS-C機やミラーレス一眼を買っていたら、おそらく凄く後悔していた事だろう。何度も言うが、カメラという趣味はお金がかかる。数万円から十数万円はする。高級レンズが1本買える値段だ。それだけのお金をつぎ込んで、満足できなかったら、金をドブに捨てたのと同じ思いをしたことだろう。特にエントリー機は壊れやすいと聞く。まだそんなに撮っていないのに壊れたという話もちらほら聞いたことがある。
幸いにして、今のところカメラやレンズを購入して、金をドブに捨てたという思いをしたことはない。あるとすれば機材の方だ。ネットショップのセールスレターにつられて安いモノブロックストロボとライトスタンド一式を買って、1,2回使っただけで、ライトスタンドがバラバラに壊れた。1万円程度の損で済んだが、その体験があって以来、カメラ機材はしっかりとしたメーカーの物を買うようにしている。
高価で抜群な性能を持つレンズを買うことで、将来のレンズ購入コストを抑える
Otusを購入したのも、コストパフォーマンスに優れていると感じたからだ。Otusシリーズは、開放撮影における収差を徹底的に排除している。55mmは40万円、85mmは50万円する。高いレンズだ。しかし車やハーレーダビッドソンを買うよりは安い。幸いにして僕は車もバイクも全く興味がなく、酒もタバコもギャンブルもやらない。その分カメラに効率的にお金をかけることが出来る。
Otusシリーズを持っていると、レンズを買い換える欲が薄れてくる。おそらくこのレンズは一生物となるだろう。収差がほぼなしの、中判カメラで撮った写真を彷彿とさせる映像を紡いでくれるレンズだ。気になるのは分解清掃にかかる手続きの手間などを含めたメンテナンス費用くらいだ。
各カメラメーカーは毎年新しいレンズを発表して、カメラ好事家の溜飲を下げさせる事に躍起だ。Otusシリーズを意識したのか、レンズモニターのアンケートに要望を送ったのが功を奏したのか、キヤノンからも性能がより一段と優れた新しいレンズがリリースされた。新開発の光学素子BRレンズ採用で、開放でも収差が抑えられているという。値段は今までのLレンズと比べて10万円ほど高い30万円だ。実売価格は26万前後となっている。
キヤノンは次から次へと新しいレンズを出してくる。次はBRレンズを採用した中望遠EF85mmを出してくるという噂だ。35mmが30万近くしたから、おそらく新型85mmもそれくらいの値段はするだろう。開放F1.2ではべらぼうに高くなるだろうから、F1.4に押さえるとの噂もある。
しかし買い換えようという気にはなれない。すでにOtus1.4/85を持っていて、その性能に満足している。これ以上の像を紡いでくれるレンズはないだろう。今後も純正レンズをどんどんリニューアルしていくだろうが、Otusさえ持っていれば買い換える必要がない。はじめに高くていいレンズを買っておけば、初期投資は大きいが、その後はレンズを買い換える費用を抑えることが出来ると判断して、Otusを購入した。レンズに関しては、値段の高いのを買っておけばまず間違いない。
安いレンズは、今後の高画素化に対応できないという面もある。現にキヤノンの古いレンズは、Lレンズでさえも、高画素カメラの性能を発揮できない物も出てきている。おそらくこれ以上の高画素化は、プロフェッショナルなカメラマンの用途からもパソコンへの負担からも余り意味がないものと思われるので、5Dsの5060万画素は一つの指標とはなるだろう。
もしお金に余裕があり、どうしても欲しいレンズがあるけれど高くて迷っているのなら、無理をしてでもその高いレンズを買うべきだろう。後から後悔して買い替えるということになると、不要なレンズを売却したところで、結局無駄なお金がかかることになる。