2016年初頭に仲の良い女の子と一緒に、コスプレイベントで撮り合いを楽しんできた。しかもイリュミネーションイベントの夜間撮影つきだ。
夜撮影となると、ストロボは必須。街灯を生かして撮れないこともないが、顔に色被りしたり影が落ちたりするし、ISO感度を上げなければならないから、ノイジーな写真となる。ブログやツイッターに上げる分にはそんなに目立たないかも知れないが、4K・8Kモニターなど将来登場する写真閲覧デバイスのことを考えると、ノイズの少ない写真を撮るのに越したことはない。
また、基本的に三脚は使わない。夜撮影といえば三脚必須のイメージがあるが、構図を変えるのに時間がかかるし、開放F値1.2-2.8くらいの明るいレンズを使えば、手持ち撮影でも充分撮影可能だ。
三脚を使って撮影するデメリットとして、手間と時間がかかる、故に構図を変える意欲を削がれる点が上げられる。ダイナミックで柔軟性に富んだ構図が要求されるコスプレ写真では、これらのデメリットは致命的となる。
モデルは次から次へとポーズを変える。こちらもそれに併せて、様々な構図で写真を撮っていかなければならない。モデルとの呼吸を合わせることも、撮影の上では大切な要素だ。構図を変えるためにいちいち三脚をセッティングし直していては、モデルとの間に意識の誤差が生じ、せっかく上手く流れていた撮影のテンポが崩れ、モデルも調子が狂い、即興でポーズを取りづらくなる。かといって三脚でずっと同じ位置に固定して撮っていたら、入学式や卒業アルバムなどの記念写真の様に、単調な写真になってしまう。
カメラの設定はマニュアルmode。手ブレしない自信のあるシャッタースピードをギリギリで固定して、ISO感度で背景の明るさを調整する。最後に被写体の明るさをストロボで調整といった手順を踏む。
海沿いにある大型商業施設での撮影となったが、昼間はイベントもあり、親子連れが多かった。こういう場所でメイクしたコスプレ姿で歩くのは、たとえイベントとして認められていたとしても、一般客を不快な気持ちにしかねないし、心理的負担が大きいものだが、小さい子どもがキャッキャ言いながら物珍しいものを見る目で寄ってきたりもする。それに対して連れの彼女は職業柄とても丁寧に接していて感心した。
夕方になると、嘘の様に人通りが途絶えた。どっぷりと夜も更けると、親子連れも数えるほどで、後はコスプレイベントの参加者だけだ。せっかくのイリュミネーションなのに、冬で気候が寒いのか、余り関心がないのか、昼間に遊び疲れたのか。
野外のイベント会場でストロボを使う時は気をつけなければならないことがある。一般客の邪魔にならない様にする、1カ所に長時間占有しない、物を壊さない。たとえ正規のイベントだとしても、譲り合いましょうということだ。
しかし撮影に熱中していると、ついつい時間が経つのを忘れる。一般客もいるコスプレイベントは、何かと気を遣う事が多い。それが理由かどうかは分からないが、この手の野外型コスプレイベントの利用者は年々減ってきていて、最近はコスプレをして楽しみたい人はマチナカ系イベントへ、ガッツリ撮影にも集中したい人はスタジオやロケへと、棲み分けが進んでいる様だ。
イリュミネーションはなかなか綺麗だった。去年の年末に近隣の商業施設で夜景撮影をしたのだが、通常の街中での夜景とはまた違った絵を撮ることが出来た。
まず初めに使ったレンズは、カールツァイスのOtus1.4/85。まずは大きくボカしてみようということで、このレンズを選んだ。マニュアルフォーカスでピントを合わせていたが、夜の暗さでさすがにピントが見えないので、ライブビューに切り替えて、ピントを合わせた。
F値は開放か、1段絞るか迷う所だが、迷っているなら両方の設定で撮れば良い。F1.4とF2.2で撮っていった。
F2.2まで絞る理由は、人物をよりクッキリ写しつつ、背景を大きくボカしたいという意図の他に、イリュミネーションのボケ方を正円の丸ボケにしたいという意図もある。
Otusシリーズのレンズなら、開放で撮っても充分シャープに写るのだが、イリュミネーションや木漏れ日のボケに関しては、ラグビーボールの様に潰れてしまう。これを口径食という。
ボケの形は好みの問題だが、やはり綺麗な正円形で写したい。ということで、ギリギリ正円形になるであろうF2.2まで絞って撮っていった。
ストロボを使った夜撮といえども、ISO感度を上げないわけにはいかない。ISO:100では、背景のイリュミネーションが暗くて生きてこない。F値に併せて、明るすぎず暗すぎずの、ISO:320-800辺りで調整してみた。
さて、肝心のストロボ。クリップオンストロボを使った。夜撮影ならクリップオンストロボ一灯で綺麗に肌が写る。ストロボは純正とサードパーティ製の製品がある。財布と相談してどちらかを購入すると良いだろう。
アンブレラはフォトフレックスの小ぶりの製品を用いた。スタジオで撮るのと同じやり方だ。海沿いの野外で、しかもイリュミネーションが設置されている場所で、この手の手法で撮る際には、ライトスタンドが強風で倒れない様に注意しなければならない。アンブレラも他の人の邪魔にならないよう、また風を受けすぎないよう、小型の物を選んだ。
ライトスタンドはガッシリとした物を選ぶ。足下がトリポッド型になっているので、手持ちの荷物をすべてライトスタンドの足下に工夫して固める。トリポッドの足に挟んで乗せるのもいい。そして撮影者は、風で倒れそうになっても直ぐに手で支えられるよう、可能な限りアンブレラの側で撮影する。どうしても離れて撮影しなければならない時は、被写体にアンブレラを可能な限り近づけて、風で倒れそうになったら、モデルに咄嗟に支えて貰う。
特に野外でアンブレラを広げていると、風をまともに受けて倒れやすいので注意が必要だ。野外で夜で寒くて通行人や設置物にも気を遣わなければならないので、結構心理的負担がかかる撮影となったが、撮れた写真を観たら、そんな疲れも吹き飛ぶくらい綺麗に撮れていた。
次にCanonEF200mmF2.8L Ⅱにレンズを変えて撮影。圧縮効果を狙って、背景も思い切りボカして撮る。若干絞ることも考えたが、望遠の手持ち撮影は手ブレが激しいので、シャッタースピードも1/250秒以下には出来ないし、ISO感度も余り上げたくないので、開放を選んだ。手ブレ防止機能(IS)のないレンズの辛いところだ。
丸ボケは若干崩れているが、モデルの背後に背景がグッと引き寄せられる圧縮効果の絵が溜まらない。EF200mmF2.8L Ⅱは癖のある描写をするレンズで、松の木などの高周波の背景ではボケが五月蠅くなる性質があるが、今回は綺麗にボケてくれた。
超広角ズームのCanonEF16-35mm2.8L Ⅱでも撮影してみたが、どうもしっくりこなかった。ワイド端では歪みが激しいし、背景のイリュミネーションが散漫としてしまう。テレ端でも望遠レンズと比べると、いまいちインパクトがない。こちらの方は直ぐに仕舞ってしまった。イリュミネーションを撮る時は、中望遠レンズや望遠レンズを使って切り取った方が、印象深い写真を撮ることが出来る。
入り組んだ場所などでは、自分が必要とする所にアンブレラを上手く置けない事もある。ストロボが当たっている感になる写真になってしまったので、アンブレラの位置を試行錯誤してみたが、上手くいかない。ストロボ撮影を諦めて、イリュミネーションの明かりのみを頼りに、ISO感度を思い切り上げて撮影に挑んだが、思わぬ効果で上手くいった。それは別の機会にまた書こうと思う。撮影が上手くいかなければ、一度諦めて他の方法を試してみるのも手だ。
こうして無事、今年初の撮影も上手くいった。カメラを本格的に始めた3年前は、ストロボの設定も分からず失敗したこともあったが、その頃に比べると良く上達したと自分でも思う。そして何より友達に喜んで貰えた。寒さに耐えながらの撮影で終始手がかじかんだが、苦労した分、喜びもひとしおだ。撮影が終わって着替えたらもう20時前だった。帰りの足取りも軽やかに、ふたりして急いで電車に乗り込んだ。