過去の撮影データの選別方法とその哲学

過去に撮影した写真を選別してローカルのハードディスクにまとめ、いつでも簡単に閲覧できるように整理整頓しておこうという計画を立ててから毎日少しずつ選別作業を進めているのだけれど、これがなかなか終わらない。なにせ2006年から2019年までの膨大な量の撮影データを選別しているのだから、ゴールの見えない選別作業となっている。

とりあえず初めの内は、iMacのハードディスクに残していたコスプレ写真や風景写真などを選別していった。RAWで撮影しているので、或る程度選別が終わるとハードディスクの空き容量が1TB節約できた。

Canon DPPを使った実際の選別作業とデメリット

コスプレ写真と風景写真の選別に飽きてきたので、次に昔散歩中に撮った風景写真やスナップ写真、地下アイドルのライブ撮影の写真を選別していくことにした。ひとつ3TBの容量がある外付けハードディスクからローカルのハードディスクにコピーするのは時間がかかりすぎるので、外付けHDDを繋ぎながら選別して、★を着けた写真をローカルのハードディスクに移動させるという方法を採った。

手順としてはCanon DPPでフォルダ内の写真を表示させて、これはと思った写真に★でレーティングを着けていく。星の数は幾つ付けてもiMacに移したときにクリアされるので★何個でも良いのだが、気分的に3とか5とかを着けていく。全く意味が無い、ただの気分の問題だ。

別のフォルダを選ぶと「今までの変更を保存しますか」と聞いてくるので、「いいえ」を選ぶ。ここで「はい」を選んでしまうと、外付けハードディスクに変更を反映させるので書き込みが生じ枚数によっては恐ろしく時間がかかることになる。はいを選べば、その後にiMacに写真を移動させると星の数が反映されるのだが、外付けハードディスクに負担をかけないためには「いいえ」を選んでおく。

外付けハードディスクの寿命は? 筆者の体験

外付けハードディスクの寿命はどれくらいだろう。僕が15,6年前に買ったアイオーデータの外付けハードディスク250GBはおそらく今でも生きている。おそらくというのは2年ほど前にUSBコードが凹んでしまって差し込めなくなったからだ。かといって特殊な形状なのでそのUSBコードが今でも売っているのかどうか分からない。アイオーデータのサイトで製品の品番から確認すればオプション品が表示されるかも知れないが、繋げなくなった前はガタガタ異音を立てていたものの充分動作していた。1度机から落としたことがあるが問題なく読み込めていた。

さて一方で、1,2年で調子が悪くなった外付けハードディスクもある。アイオーデータ製だが、他のアイオーデータ製の外付けHDDは問題なく稼働しているので、メーカーよりも中に入っているハードディスクの当たり外れにも寄るのだろう。繋いでしばらくすると動作が停止してしまいファイルが読み込めなくなるという症状だ。長く繋げるときもあればすぐに繫がらなくなるときもありとても不安定なので、実質使い物にならない。中のデータは作動させては止まれば休ませて再び繋ぐということを繰り返しながら、別の外付けハードディスクに退避させた。

そしてもう1台、バッファロー製のハードディスクが調子も悪くなった。電源コードを差し込んで、USB端子をパソコンと繋いでも、電源は立ち上がる音はするが、アイコンが表示されない。もう一度試してみるとようやくアイコンが表示されて、データにアクセスすることが出来た。

NASか外付けハードディスクかという問題

家には実質的に使えている外付けハードディスクが7個あり、そのうちの6個が3TBとなる。最近はNASによるデータ保存が脚光を浴びているが、今から今までのデータをNASでバックアップを取るとなるとお金がかかりすぎるので、このまま外付けハードディスクで行こうかと思っている。

そもそもNASでいつでも取り出せるようにしたところで、保管してあるデータを見ることがこの先の人生で何度あることだろうか。一昔前の自炊ブームを思い出してもみて欲しい。雑誌をデータ化して永久保存版にしようと家にある総ての雑誌を裁断してスキャナで取り込んでパソコンに保存する。とてつもない労力がかかるし、そうして取り込んだデータを実際に何度見たことだろうか。僕も雑誌の一部分のページだけ(筋トレの記事など)をスキャナに取り込んだ事があるが、実際に使用したのは初めの4,5回程度で、10年ほど前のことになるが、その先は一切見ることがなかった。(それに今では電子書籍が普及しているのでわざわざ自炊する必要もない。)

それならばデータを選別して、ベストショットが簡単に閲覧できるようにした方が、データを探すという意味では効率が高い。またNASはインターネットと接続させる必要があるから、電話回線の近くに置いておく必要があるのだろうが、あんなデカい物を置くスペースは家の電話周りにはない。通り道だしWi-Fi機器ですらよくぶつけられるし、父が半身不随なので倒れられでもしたら高い機器が壊れてしまうリスクもなきにしもあらず。

三重のバックアップ体制

RAWデータは撮影後にRAW現像した後に外付けハードディスクにまとめて放り込んで、選別したデータはiMacに残しておく。確かiMacをまるごと外付けハードディスクにバックアップ出来る機能があったはずだから折を見て実行に移したいが、その前に選別したデータを新しい外付けハードディスクにバックアップを取って、三重のバックアップ体制を整えたいところだ。

ハードディスクは壊れやすいと思っておいた方が良い

というのも以前NECのテレビ一体型ハイスペックWindows機を使っていたら一年半でハードディスクが故障してしまった。ハードディスクの運が悪かったのか、よくテレビ番組を録画していたから、酷使していたのが悪かったのか、理由は分からないが、三円保証に入っていたから無償でハードディスクを交換して貰えたとは言え、中に入っていたデータは総て消えてしまった。これを回復させるとなると3TBあるから10万20万円はかかるという計算になる。最近はNECでもハードディスクが故障した際のデータ復旧保証を要しているので、それに入れば一応は安心だが、復旧できるとも限らない。

そこで撮影データやその他貴重な大容量データは早急に外付けハードディスクにバックアップを取っておいた方が無難だ。iMacの場合はiCloudでデータを保存できるので、容量が小さいファイルはクラウドを利用すると良いだろう。その他会計ソフトなどのソフトウェアも最近はクラウドに移行してきており、データをバックアップする必要性が少なくなってきた感はある。

外付けハードディスクを長持ちさせる方法

RAW等の大容量データのバックアップを取った外付けハードディスクは、常にPCに繋がないようにする。つまりUSBコードをパソコンから外して、電源を切る。ハードディスクは消耗品なので、使えば使うほど故障の確率が高くなる恐れがある。データの選別が終わり滅多に繋がないような外付けハードディスクなら製品の化粧箱に入れて高温多湿にならない場所に保管しておくのも、製品の寿命を延ばす一つの手だろう。

全部残しておきたいというデータ選別の苦悩

データの選別作業をしていて思ったのは、ライブ撮影にしてもお散歩中に撮影した写真にしても、1枚でも欠けてしまえば時間の連続性が失われて仕舞うというノスタルジーに囚われてしまうことだ。この感情に囚われてしまうと、なかなか選別作業が進まずコレは残しておきたいアレも残しておきたいいっそ全部残しておきたいという誘惑に駆られてしまう。

写真には時間の流れが凝縮している。それは断片的であっても、その写真の流れを見ただけで当時の歌い手の歌声や声色が脳裏に甦ってくる。そしてすっかり記憶から忘れ去られていたと思われていた淡い思い出が、甘美な感覚を伴いながら甦ってきて我々を時間のおもちゃの中に包み込んでくれる。一昔前を懐かしみつつ、あの頃に戻りたいという想いに掻き立てられる。1度過ぎ去った目の前の光景を写真は留めてくれる。それを見返したときに、我々は忘れかけていた楽しかった記憶を甦らせることが出来る。だから小さな子供の頃から写真はたくさん撮っておいた方が良い。もちろん大人になってからも。年老いてから昔を懐かしむためにも、今の人生を豊かな感情で耕し新しい喜びを育てるためにも。今はスマートフォンがあるから簡単に写真を撮る事が出来る。

データの選別は,いわば連綿とした記憶を裁断してしまう精神的に過酷な作業だ。記憶の裁断、物語の裁断、甘美な思い出を手放してしまうことだ。しかしハードディスクの容量は限られている。それに人は過去を振り返ってばかりでは生きてはいけない。これは良いと思った写真を選んで選別していく。大体全体の枚数の1/5から1/10の枚数に落ち着くだろう。

JPEGモードで撮っていて良かったと思った瞬間とそうでない瞬間

ライブ写真の選別をしていて思ったのは、JPEGで撮っておいて良かったということだ。というのも、ライブハウスは色とりどりの照明が出演者を彩るので、ホワイトバランスで肌の色を調整する必要がほとんどない。たとえばレストランの照明の下で運ばれてきた料理を撮るときに、キヤノンのホワイトバランスには「雰囲気優先モード」と「ホワイト優先モード」がある。雰囲気優先モードで撮ると、レストランの暖かい照明の雰囲気に彩られた料理の色に撮れる。一方でホワイト優先もモードで撮れば、レストランの照明の色は関係無しに、白を優先した標準的な色味で撮れる。ライブハウスの場合は、照明の色の雰囲気も重要なので、わざわざ標準的な肌の色に調整する必要がない。そのような色の方が好まれる場合もあるが、結局JPEGで撮ってレタッチは不要な写真がほとんどだった。レタッチが必要だと思ったのは照明の色がきつすぎて顔が黄色くなっていたり赤色が飽和しているような写真だが、そういった写真はほとんど無かった。

あったところでキヤノンのDPPではホワイトバランスをいじって、普通の肌の色にするのは難しい。AdobeのLightroomの方が色温度が大きく変えられるので、極端に色が寄っているライブハウスの写真も普通の肌の色の写真に変える事が出来る。結局は好みの問題となるだろう。

一方でRAWで撮っておけば良かった写真というのも存在する。桜や花などの風景写真はRAWで撮っておけば自分好みの色に調整できたのでは無いかと思った。桜をよりピンク色にしたり、花の色の彩度を綺麗に調整したりといったことだ。後者は別にPhotoshopで1度変えるだけならそんなに問題にはならないのかも知れないが、やはりホワイトバランスに関してはJPEGから変更となると色の幅を破綻することなく自由に出すのに支障を来した記憶があるので、風景写真はRAWで撮っておけば良かったなと思った次第だ。

しかしライブ写真は枚数も多いし、当時はプログラムAEで撮っていたから手ブレした写真も多く失敗写真も散見されるので、容量が少ないJPEGで良かったと思った。後半からRAWで撮っているのでこれからの選別作業が大変だし、枚数もJPEGの写真よりは絞っていかなければならないから、いっそライブ写真は全部JPEG変換して選り分けたいくらいだ。というのも動きのある写真などは連続性を損なわないために、いわば組み写真の要領で1枚もかけることなく連番で残しておきたいという思いが強くなるからだ。演者が激しく首を振るシーンは1枚でもかけていると物語が断たれて美しくなくなる。

動画にはない写真の強み

ならいっそ動画で撮っておけば良いのだが、写真には写真の、行間による記憶の引き出し効果というのもある。地下アイドルの名前やライブのイベントタイトルを検索すればYouTubeやニコニコ動画で動画が引っかかるからそれを見れば良いのだが、それはそれ、これはこれだ。動画はどうも記憶と言うよりも記録の面が強く出ていて、素人がカメラを固定して撮影した、尺まるごとの未編集の動画を載せているから、写真と比べると平坦で感動に欠けるところがある。

逆に言えば、それこそが瞬間を捉える写真の強みでもある。見る者に記憶を喚起させ、共感を呼び起こさせ、物語を共有しようと働かせる。見る者に委ねられる要素が強いのもまた写真だ。それを見る者に歩んできた人生や体験により、写真を見てもまた千差万別の異なる感慨を呼び起こさせるのだろう。

外付けハードディスク内で写真選別作業をするときの作業方法

Canon DPPでフォルダ内の写真を総て表示させ、ベストショットの数々に★を着けて、その作業が終わったら、フィルタ機能のウィンドウからレーティングを★1つ以上に設定し、フィルタをオンにする。すると★を着けた写真だけが表示されるので、ローカルハードディスクに用意したフォルダに、表示させているフォルダと同じ名前を付けて、写真をショートカットキー「command + A」で総て選択し、「command + C」でコピー、ローカルのハードディスクのフォルダに移動して「command + V」で貼り付け。

ショートカットキー(Mac)

  • 「command + A」・・・すべて選択
  • 「command + C」・・・コピー
  • 「command + V」・・・貼り付け

ローカルのハードディスクで写真選別を行う場合の作業方法

ローカルのハードディスクに保存されている写真の場合は、逆にレーティングの★を着けなかった写真を最後に表示させる。既に総ての撮影データを外付けハードディスクにバックアップを取っていることを確認してから、写真を選別し、最後にフィルタのウィンドウで「レーティングなし」に設定して、フィルタをオンにすると、レーティング無しの写真だけが表示されるから、同じくショートカットキーですべて選択して、「command + Del」でゴミ箱に削除する。

ライブ写真などを選別していると、やはり全部残しておいた方が良いのではないかと思うことも度々ある。しかし連番が書けていたりすると、たぶん失敗写真を撮影中か家に帰ってから即座に削除したんだろうなとも思われるので、完璧にその時本能的に或いは機械的に或いは反射的にシャッターを押した瞬間瞬間を連続的に捉えているというわけでもない。

やはりNASを組んで残している総てのデータを保存すべきだろうか。誕生日ライブの写真などもすべて残しておきたいと思うときがある。1枚でも欠けてしまうと、何か大切なモノが脳裏から欠けてしまうような気がする。選ばなかった1枚を見ることで思い出すこともあるかもしれない。

後ろ髪を引かれる思いだったが、写真を選別していった。ポートレート風に撮った物販用の写真は結局ほとんど残してしまった。当時のCanon 5DとCanon EF24-70mm F2.8L USMの組み合わせで、屋外だとこれ程綺麗に撮れるのかと、iMacの27インチ 5KRetinaディスプレイで閲覧すると改めて思った。Windowsのノートパソコンやデスクトップで見ても綺麗ではあったが、これ程克明かつ滑らかな描写力を発揮するとは思いも寄らなかった。双方とも売ってしまったことが悔やまれてならないが、初代5Dに関しては9点AFはやや使いづらいところがあるので、コスプレ撮影で撮りたい女性を見つけてから新しく1DXに買い換えて良かったと思っている。