一眼レフデジカメとiPhoneやAndroidスマートフォンで撮る写真の違いは何か。結論から言えば画質である。iPhoneやAndroidのスマートフォンで撮った写真は、スマホの小さなディスプレイで見る分には綺麗に写っているように見える。
しかしそれらのデータをパソコンに取り込んで、例えば24inchや27inchの大画面で見れば、画質が荒いことに気づくだろう。小さなディスプレイでは表示されず誤魔化されていた画質の粗が、大画面で見ると一目瞭然となる。原因はカメラに搭載されている撮像素子の大きさにある。
スマホに搭載されているカメラの撮像素子は、フルサイズ機やAPS-C機などの一眼レフデジカメに搭載されている撮像素子よりも小さい。撮像素子が大きければ大きいほど、暗い場所でもノイズの少ない写真を撮ることが出来る。また画素数が多いからと言って画質の良い写真が撮れるというわけではない。むしろスマホのような小さな撮像素子では画素数が多くなればなるほど、画素ピッチが小さくなるので、画質が悪くなる。
旅先などで記念写真を撮る分には、荷物も減るし、日中なら充分綺麗な画質で撮れる(飽くまでスマホで閲覧すればの話だが)。だからスマホに搭載されているカメラの性能が悪いというわけではない。むしろ下手なデジタルカメラよりも綺麗だ。利便性の面から言っても、とてつもなく手軽で便利。スナップ写真や旅の記録の他に、電車やバスの時刻表を写したりするメモ帳代わりの用途にも最適だろう。
夜撮影では差が出る
スマホと一眼レフデジカメで撮る写真の違いは他にもある。夜に撮影する場合だ。
さすがにスマートフォンに搭載されているカメラでは、ネオン街は綺麗に撮れるかも知れないが、夜景を背景に添えた人物写真は綺麗に撮れない。先日奈良県吉野に赴いて山の上で夜景を撮影していたら、中年の夫婦がセルフィを使って吉野の夜景を背景に自撮りしていた。しばらくしてから女性の方が近づいてきて、「スマホでフラッシュを炊いて撮影するにはどうしたら良いですかね」と聞いてきた。
フラッシュを炊けば人物は綺麗に写るだろうが、眼下に広がっている夜景にまでフラッシュ光は届かない。例えばキヤノンのフラッグシップストロボでも10数メートル先までしか光が届かない。フラッシュを月に向かって光らせても、月までその光が届かないことを想像して頂ければ、フラッシュ光は我々が想像している程に万能でないことがイメージしやすいだろう。
果たしてスマホのフラッシュで人物を明るくして、遠くにある夜景も捉えることが出来るだろうか。何度か夜景の綺麗な場所で撮影を頼まれたことがあったが、いわゆるストロボを使った夜景ポートレートのようには上手くいかないことが多かった。
理屈で言えば、スマートフォンでも三脚で立てて、ISO感度100に設定して、30秒の長時間露光で撮れば、綺麗な夜景写真が撮れるという事になる。しかしスマホのカメラを使ってそこまで手の込んだ撮影をしている人は滅多に見かけない。スマホのカメラは誰でも簡単に綺麗に写真を撮れる手軽さが売りであり、故にユーザーはそこまで手の込んだ写真撮影の方法に詳しくなろうとは思わないのではないか。
大きい一眼レフを使って撮っている人に頼めば、自分たちのスマホでも目の前に咲いている夜桜を綺麗に撮ってくれると思い込んでいる人がいる話も、以前Twitterで話題になった。一眼レフデジカメで夜桜を撮っていたら、自分たちのスマホで撮って欲しいと頼まれたが、一眼レフデジカメのようには綺麗に撮れなくてガッカリされたという話だ。デジタル一眼カメラの操作に慣れてしまうと、いざスマホを渡されたときにどこで設定するんだろう、何モードで撮れば良いんだろう、デジタル一眼と同じ機能はスマホにもあるのかなと迷ってしまう。それ以前に撮像素子がデジタル一眼に比べて小さく、ISO感度を上げたときのノイズも多いから、デジタル一眼で撮った写真と画質の面で同じというわけにはいかない。
それに幾ら広角で撮れたり、暈けの表現が出来るようになったからと言って、レンズが豊富に用意されている一眼レフデジカメには、表現の幅の域では敵わない。もし写真で本格的に表現活動をしようとするなら、レンズ交換式一眼デジタルカメラの選択が最適だ。
画質の面では一眼レフに劣る点、夜撮影にはあまり向かない点、表現の幅が限られる点が、今現在のスマホに搭載されたカメラの欠点だ。
しかし一方で、スマホで花火を撮れないこともない。むしろ一眼レフデジカメで長秒露光でバルブ撮影していては撮れない写真が撮れることもある。先日奈良の若草山焼きを訪れたのだが、可愛い顔をした鹿の花火が上がった。しかしこれは長秒露光では撮れなかった。ところが家に帰ってツイッターを確認してみると、鹿の花火を上手く撮っている写真を見かけた。おそらくスマホで撮ったのだろう。
一眼デジタルカメラで花火を撮るときはバルブ撮影で長秒露光して撮るスタイルが基本なので、1/125秒とかの速いシャッタースピードで撮ることがない。だからこういった可愛い形の花火を写真に収めることがタイミング的にも難しい。
またスマホの動画機能を使えば、一連の花火の打ち上げを撮ることが出来る。
機会があればスマホで撮れる写真の可能性について探っていきたい。