コスプレ撮影のカメラマン募集でよく見かける条件の1つ「一眼レフを扱える方」という基準が曖昧なので、自分なりの基準を記したツイートが話題になり、反響を呼んだ。
扱える基準は、募集する側のレイヤー基準になるので一概には決めがたいが、コスプレ撮影においてカメラマンに求められるスキルの基準を幾つか考えてみたので、一眼レフデジカメの性能を交えながら紐解いていくことにしよう。キヤノンのカメラを前提に話を進めていく。
1.オートモードで撮れる
Aモード(オートモード・シーンインテリジェントモード)で撮ると、カメラの設定はすべてお任せ。明るさを自動的に決めてくれる。超初心者レベルと言えるだろう。難しい設定に煩わされることなく、構図を構築できて、ピントが合わせられる。最低限の基準と言える。シャッターだけ押していても、それなりの写真が撮れる。むしろカメラの扱いに慣れていない人は、オートモードで撮れば一番上手く行く。
オートモードの問題は、設定がすべてカメラにお任せになることだ。絞り値・シャッタースピード・ISO感度だけでなく、ピントの位置や測光モード、ピクチャースタイルも自動となる。露出補正も出来ない。ピントの位置が自動的に決まるということは、自分の狙った位置にピントを合わせにくいということでもあり、ピンボケの原因ともなる。明るさだけは正しく撮れるがそれ以外は保障できない。まさに街中でカメラを触ったことのない見ず知らずの人を掴まえて「写真お願いします」と頼む時のためのモードと言えるだろう。
ピンボケ写真は使い物にならないので、「一眼レフを扱える方」といった場合、最低限被写体にピントが合わせられるスキルがカメラマンに期待される。そこで次のステップアップが必要となる。
2.プログラムAEモードでピントが合わせられて、かつ露出補正が出来る
プログラム・オート・エクスポージャーでの撮影も、初心者レベルと言えるだろう。露出(写真の明るさ)を決定づける3つの要素、絞り値(F値)、シャッタースピード、ISO感度は理解できなくても、プログラムオートで撮れば、自動的に最適な明るさで撮影できる。
オートモードと異なる点は、ピントのフォーカスを自分の好きな位置に設定することが出来、ピクチャースタイルやISO感度も変更できる点だ。キヤノンにはプログラムシフトという機能も用意されており、希望するF値やシャッタースピードに設定する事も出来る。例えば希望するF値を変えれば、シャッタースピードも適正露出に合わせて変わる。
露出補正が出来るカメラマンは、初心者からワンステップレベルが上がった状態と言える。キヤノンのプログラムオートは通常、絞り値(F値)とシャッタースピードの値が、適正露出(写真の最適な明るさ)になるよう自動的に決まる。ISO感度は固定となる。
プログラムAEでシャッターを押して最適な明るさになれば良いのだが、撮影環境や逆光での撮影時には人物が暗くなるでの、露出補正をする必要がある。この場合は露出補正を+1とか+2、+3などに設定して、人物を明るく撮る。その逆もまた然りで、何らかの原因で被写体が明るすぎる場合はマイナスの露出補正をする。
ここまでのスキルでも、コスプレ撮影なら十分通用するレベルだろう。ワチャワチャした写真などを撮りたい場合は、背景を暈かす表現は余り必要とされない事が多い。ピントが全員に合っていて、構図をきちんと構築でき、被写体が最適な明るさであれば十分だ。ゆえにF値の小さいレンズは必要とされず、画質はともかくも、初心者向けエントリー機についてくるキットレンズでも充分要求を満たす写真を撮ることが出来る。
3.絞り優先AEモードで撮れる
プログラムオートの問題点は、露出補正をすると絞り値(F値)が自動的に変わってしまう点だ。背景を暈かしたり、ツーショットの際に前後の被写体を暈かしたりする際の暈けの量を自分で決めることが出来ない。
そこで次のステップとして、絞り優先AEモード(キヤノンはAv)で撮る必要に迫られる。「一眼レフを扱える方」という文言は、ピントさえ合っていれば充分というコスプレイヤーもいれば、雰囲気写真を重視して、F値を自分で設定して暈かしの表現が出来ることも含めて「一眼レフを扱える」と募集している場合も充分考えられる。
F値を設定できて暈け表現を操れるのと同時に、プログラムAEでの撮影と同様、露出補正も出来る必要がある。プログラムAEと異なるのは、露出補正をしても、設定したF値の値は固定されることだ。シャッタースピードのみが露出補正で自動的に変化する。
暈かしの表現となると、単焦点レンズなど開放F値の明るいレンズも必要になってくる事がある。
4.手ブレしない設定で撮れる
プログラムAEで撮る場合、手ブレしないシャッタースピードに設定されていることに留意しなければならない。手ブレしないシャッタースピードのセオリーは1/焦点距離×2だ。例えば50mmの焦点距離で撮る場合は、1/100秒以上のシャッタースピードで撮らなければ手ブレしやすくなる。プログラムAEで撮る場合、特に露出補正などをすると、シャッタースピードが手ブレしないセオリーのスピードよりも遅くなってしまう事がよくある。すると気づかないうちに手ブレ写真を撮ってしまうといったことになる。
絞り優先AEモードで撮る場合も同じで、シャッタースピードの変化に気をつけなければならない。解決方法としては、ISO感度を上げてシャッタースピードが手ブレしないシャッタースピード以上になるようにすることだ。
5.連写で撮れる
コスプレ撮影ではジャンプ写真を撮ることが多い。ジャンプ写真で青春の1ページそのものを表現することが出来るからだ。連写そのものは至って簡単だが、連写モードの切り替え方法、すなわち一眼レフデジカメを扱えないと、連写できない。
最低限カメラのどのボタンを押したら連写モードに切り替わるかの知識が必要だ。間違いなく「一眼レフを扱える」項目に入るだろう。取扱説明書の索引から連写を引けば解決する。
6.ストロボが扱える、スタジオで撮れる、どんな場所でも顔を綺麗に撮れる、キャッチライトなどなど
ここから先は難易度が一気に高くなる。ストロボ撮影が出来るとか、多灯ストロボが可能とか、目にキャッチライトを入れることが出来るとか、レフ板で顔を綺麗に写せるとか、スタジオでも撮れるとか、どんな場所でも顔に影が落ちないように写せるとか、肌の色をきちんと調整出来る、ホワイトバランスをきちんと設定できるとか、スローシャッターや長時間露光などの特殊撮影など、細かいことを言い出したら切りがないが、通常のコスプレ撮影でのカメラマン募集の場合、「一眼レフを扱える方」と言う場合は、ここまで高度なスキルは求められていないように思う。これだけのスキルが要る場合は、募集要項にその旨明記してあるはずだ。
むしろ作品の雰囲気を重視した撮影が出来るカメラマンが、コスプレ撮影の際には重宝される。となると上記した1から5までのレベルのいずれかが、Twitterやアーカイブなどでのコスプレ写真撮影者募集において「一眼レフを扱える」カメラマンの基準となるだろう。