コスプレ撮影というジャンルが俄に脚光を浴びつつある。ニコンが公式ホームページで、ファミマドットコムが発刊しているコスプレ専門雑誌コスプレイモードのメインページを撮影している女性プロカメラマンを迎えて、コスプレ撮影講座の特設ページを開設したり、ストロボでお馴染みのニッシンも、コスプレライティングの講座を開設していた記憶がある。
筆者は主にマニュアルフォーカスでしか撮れないレンズを使ってコスプレ写真を撮っている。カールツァイスのOtus1.4/55と1.4/85だ。このレンズにはAF(オートフォーカス)機能はついていない。すべて手動でマニュアルを合わせなければならない。
自ら編み出した手法で、マニュアルフォーカスレンズで開放F1.4で撮ってもガチピンになる方法で普段は撮っている。この方法は言葉こそマニュアルフォーカスだが、古き良きフィルム時代の撮影手法と言うには、余りにもデジタル寄りだろう。被写体とじっくり向かい合いトルクをゆっくり回してピントを合わせるというノスタルジックで味わい深いカメラの扱いとは程遠いのだ。しかしデジタルとアナログの機能を融合させることで、開放からシャープで収差も出ないオータスのレンズ性能を、比較的容易に十二分に引き出すことが出来る。
コスプレ撮影、もしくはポートレート撮影でも良いのだけれど、生身の人間を被写体として向き合うとき、マニュアルフォーカスレンズ使いは悩む。モデルは矢継ぎ早にポーズを取る。特に慣れているモデルだと、ポージングも上手く、シャッターを押す度にこれでもかというくらい魅力的なポーズでカメラマンを魅了してやまない。
MFレンズだと、どうしてもモデルのそのスピードについて行けなくなると感じるときがある。そしてモデルのポージングのテンポを乱してしまう。モデルの魅力にレンズさばきがなかなか追いつかないときがあるのだ。
こういう場面に遭遇したとき、AFだったら楽なのになぁ、モデルとダンスでも踊るようにテンポを合わせて繰り出してくる魅力的なポーズを捉えることが出来るのになぁと撮影の快適さに思いを馳せないわけにはいかない。
1DXにOtus1.4/55を着けていたが、そういうとき不意に純正レンズの50mmF1.2Lや85mmF1.2Lを着けたくなる時がある。MFレンズはピントを合わせるのに手間がかかる。静止した時の中でじっくりと撮るには良いが、ライブのような写真を撮る時には、AFの方が利便性が断然良い。
モデルによってはダイナミックにポーズを変える子もいれば、静かにポーズを変える子もいて、AFレンズを使うなら前者、MFレンズを使うなら後者が適している。モデルのポージングのクセを掴むのもカメラマンの技量の内の一つとなるだろう。
持って行けるレンズには限りがある。しかし時にはキヤノンのEF85mmF1.2Lを持ち出して、モデルとのテンポを楽しみたい時もある。ライブ風撮影をする時は、レイヤーと呼吸を合わせて、それこそ本物のライブの時のようにAFレンズで撮れば、レイヤー・カメラマン双方に臨場感が溢れ、ノリも違ってくるかも知れない。
どのレンズを持って行くべきか、開放での描写性能を優先するべきか、それともピント合わせの利便性を選ぶべきか、贅沢な迷いは尽きない。