一度飛行機撮影に趣くと病みつきになる。次はこの構図で撮ってみようとか、この位置から撮ったら良いんじゃないかとか、このタイミングで撮った方が良いんじゃないかとか、このレンズを使えば良いんじゃないかとか、ロケーションを変えてパークの方からとか、次回の撮影への意欲と計画が際限なく湧いてくる。
もし今やってる撮影のジャンルに疲れたりマンネリを感じるようになってきたら、被写体をガラッと変更してみるのも良いかもしれない。良い気分転換になるし、新しいスキルを身につけることが出来る。
筆者にとって人物から航空機への転換は、劇的な変化をもたらした。まずいつも撮っている人物写真とは勝手が違う。
まずは場所のことだが、一度も行ったことのない場所に大仰な機材を持ち込むのは疲労するので、なるべくレンズを厳選して軽い装備で行くことにした。と言ってもフルサイズの5DsRと重量級のOtus1.4/55、キヤノンの魚眼レンズと、通しF2.8の超広角ズームレンズなので、重いと言えば重いのだが、いつもの20キロ以上の装備と比べたら背中に羽が生えたかのように遙かに軽い。
いざ現場に立ってみると、ネットで調べたり想像していたりしたのとは違うことに気づく。文字で読んだりするのと実際にこの目で見るのとは大きな差異があることを実感した。大切なのは、本やネットで得た知識だけでなく、実際に地に足を着けて立ち、撮影することなのだ。いくら知識を身につけていても、現場では予想もつかないようなことが不意に出てくる。
まずカメラの設定がいつもと違う。ワンショットAFで撮影していたが、動体にはAIサーボが有効であることを実感した。今まで動かない人物しか撮ってこなかったので、設定の切り替えに手間取った。
AIサーボにも、被写体の動きに対応した様々なモードがある。これも初めて試すことが出来たが、何せ滑走路に向けて飛んでくる飛行機の数は限られているから、多くは試すことが出来ない。設定を間違えればベストショットを逃してしまうかもしれない。
現場で飛行機の速さと、構えたカメラのフレーム内での動き方について分析して、最適なAIサーボのモードを選んでみたら、AFが飛行機を上手く捉えるようになった。
超広角ズームレンズとマニュアルフォーカスのみのOtusを付け替えたり、撮影する飛行機の航路や距離によって、ワンショットAFやAIフォーカスに切り替えたり、連写モードに切り替えたりする。ポートレートやコスプレ撮影の時には、この辺りはいじらないので、最初は戸惑ったが、何度か扱っていく内に指が覚えていった。
最大の効能は、自分の使っているカメラやレンズの選択に間違いがなかったと自負できたことだろう。そしていかに自分の使っているカメラが高性能で、潜在能力に優れているかということを実感できた。ワンジャンルの被写体ばかり撮っていると気づかなかったカメラの持つ性能を、別のジャンルを撮り始めることで、うまく発揮させることが出来た。
この日持ち出したのはCanonの5DsRだが、5060万画素の高解像度が飛行機撮影において非常に有効であることが確認できた。連写性能も1秒間に5コマとはいえ、充分に満足のいく写真が撮れる。
もし1DXを持って行けば、1秒間に12コマの連写性能を発揮することが出来ただろう。ベストショットも狙いやすかっただろうし、夕方以降のISO感度を上げての撮影でも、ノイズのより少ない写真が撮れていたことだろう。
以前カメラ量販店に趣いた時に、女性客がスポーツを撮りたいとかで販売員と相談していたが、ミラーレスでは話にならないと不満を零していた事を思い出した。
良いカメラとレンズを持っていれば、それだけ様々なシチュエーションでの撮影に対応できる。表現の幅も広がる。今はこのジャンルを撮っているが、いつ気が変わって別のジャンルを撮り出すか分からないし、そちらの方に熱中していく可能性だってある。
しかしカメラというのは、他の趣味に比べて、製品の価格が高い。故に妥協して中途半端な機種を買うと、後々後悔することにもなりかねない。我慢できずに中古屋に売り払って、欲しいカメラやレンズを買い直した分、余計にお金がかかることになる。
あれこれと目移りする前に、じっくりと吟味して資金を貯め、購入すべきカメラやレンズを厳選するのが、カメラの趣味を長く楽しめる秘訣でもあると実感した。