ポートレートプロカメラマンの思考法を学ぼう!おしゃれなポートレイトの撮り方1~5 魚住誠一著

ポートレート撮影に物足りなさを感じてきたら読んでおくべき本。

今回紹介するのは、ポートレート撮影のプロカメラマン、魚住誠一さんの本「おしゃれなポートレイトの撮り方」シリーズ。第1巻の発刊は2004年なので、今から10年以上前の本となる。

当時この本が書店に並んでいるのを見かけて、とても斬新な写真の表紙にショックを受けた記憶がある。当時ファッションフォトでは主流となっていた、いわゆる日中シンクロで撮影されたモデルさんが表紙を飾っていた。

キヤノンのフルサイズ一眼レフデジタルカメラが発売されたのが2005年なので、それよりも一年前。魚住カメラマンが使用しているカメラは、プロ用のフラッグシップ機の他に、EOS10Dという名の聞き慣れないカメラ。デジタル一眼レフデジカメのスペックが600万画素から800万画素になったと騒いでいた時代だ。

この冊子は、通常のカメラ指南本とは違って、プロカメラマンが現場でモデルさんと向き合った時にどのようなことを考えながら撮影に挑んでいるのかという、カメラマンの頭の中のフローチャートを垣間見ることが出来る内容となっている。基本はインタビュー構成で、会話もとても軽快、カメラ中級者なら頭の中にするすると入ってくることだろう。プロカメラマンの頭の中を丹念にのぞき見ることが出来るという意味では、とても貴重な一冊と言える。

魚住カメラマンが使用しているレンズも興味深い。45mmのTS-Eレンズ、28mm、20mmなどをAPS-C機で用いている事が作例写真などからも窺える。

通常のカメラ指南本なら、ここはこの絞りとこのISOで構図はこれこれこうで、露出補正はこうで、というガチガチの解説のみになるのだけれど、この冊子では、ここではレフ板をこう当てて、ストロボをバウンスさせて、この時の光は固くて、ここでは柔らかくて、モデルさんの服の色がこうだから、背景これにしてこういう風に撮って、こんな素敵なロケーションがあって、ここのホテルの自然光がどうこうで、といった具合にカメラの設定以外のその場の事細かな環境も含めて解説が進められていく。

カメラの設定の解説については自動車の運転手がハンドルで遊んでいる様に緩い感じで、主にモデルの服や色やポーズ、自然光の扱いや特徴について、詳しく語られている感じだ。読み進めることで、現場で即興で的確に撮っていくプロの技を疑似体験出来る。

そんなに厚くない本なので1日あればサラッと読むことが出来る。カメラ初心者よりも、絞り優先モードやマニュアルモードで撮って、そろそろもうワンステップ、スキルアップしたいな、何か刺激を受けたいなと感じ始めている中級者のアマチュアカメラマンには、うってつけの冊子となるだろう。

経験豊富なポートレート写真家のプロが現場でどのように撮影に挑んでいるのかを知るのに有益な1冊。魚住カメラマンといえば、先に挙げた日中シンクロや、サードパーティ製のコストパフォーマンスに優れたタムロンの銘玉ズームレンズを積極的に紹介していることでも知られている。有名な女優さんや芸能人をたくさん撮っている、第一線で活躍しているプロカメラマンのインタビュー形式の本なので、良い刺激を受けること間違い無しの1冊だ。