秋といえばスポーツだったり読書だったりと様々な言葉が掛けられるが、その一つにお月見がある。一五夜のお月様を愛でながら月見団子を食べるのが日本人の習慣だ。
和歌山県にある生石高原は、秋のこの時期、ススキがとても綺麗だ。標高八七〇メートルに位置する生石高原に立てば、丘の上に一面に広がるススキだけでなく、その向こうに連なる山々が見渡せる。
この壮大な景色を楽しむには、山道を徒歩で登る方法もあるが、本格的な登山の装備でなければかなりキツいとのことだ。車で行けば簡単に頂上に辿り着ける。電車で行くなら、JR海南駅で降り、駅前からのオレンジバスで30分程かけて終着の登山口まで行く。そこからタクシーで更に30分程で、ススキの原野が広がる生石高原に辿り着く。片道のタクシー代は約3000円。三人で行けば往復2000円。うねる山道を徒歩で歩く労苦を考えれば、そんなに高くはない。
見渡す限りのススキの原。逆光に輝くススキが美しい。少し開けたところで昼食を撮っている観光客もちらほらいる。
カメラをぶら下げた年配の集団が話しているのを小耳に挟んだ。何でも夜になると、ここに三脚を立てたアマチュアカメラマンがずらりと居並ぶそうだ。おそらく山を背景にした月の撮影だろう。寿命が尽きる前に撮ってみたいけれど、なんてことも言っていた。
一期一会のベストショットを狙う写真という趣味は、年を取ると寿命との闘いにもなる。そこは年齢との戦いとも良く言われているコスプレイヤーと似通ったところがあるのかも知れない。
余談だが、タクシー運転手は地元の名産や地理について詳しい。乗車している間、楽しいお話を聞かせて頂いた。また機会があれば訪れてみたい。