大相場を演じた急騰銘柄と比較分析することで株価を予想する

戦時中の広島県呉市を舞台にした映画「この世界の片隅に」がヒットの兆しで、東京テアトルの株価が慌ただしく動いている。一時230円台を付けた物の、その後は揺り戻しでもみ合いが続き、週末12月2日の終値は182円。

日経新聞のQUICKで、東京テアトルのIRの話として「映画の制作委員会から配給を受託しているだけなので、業績に対する影響は限定的」と報じたことで、株価は冷や水を浴びせられる形となった。有名な日経新聞の飛ばし記事だろうか。実際に期末決算の数字が出てみないことには分からない。「業績に対する影響は限定的」といえば、ポケモンGOがブレイクしたときの任天堂のIRを思い出させる。

貸借倍率や売り禁、増担保規制などの専門用語が飛び交い、すっかり投機化してしまったが、冷静になって今後の株価を占ってみようと思う。

半ば仕手株化した感のある東京テアトルの株価だが、仕手株研究という事で、過去に保有して仕手株のような動きを見せた銘柄と比較してみることにした。

比較銘柄は日本エンタープライズ。業種は全く異なるが、試しに比較してみる。

日本エンタープライズの株価が急騰したのは、スマートフォンを社内で内線化できるビジネス用アプリの発表だった。このニュースを受けて、長らく眠っていた株価は200円台から急騰し、最終的には瞬間風速で800円台を付けて、その後株価は沈静化した。発表されたのがスマホアプリなのか、パッケージソフトウェアなのかよく分からないが、今のご時世ヒットしそうなスマホアプリの発表があるだけで株価が急騰するので、その現象に吊られたのかも知れない。僕もそのニュースを聞いてスマホアプリかと勘違いしていたが、実際の所はどのような形態のソフトウェアなのか、門外漢なのでサッパリ分からない。

さて、青天井になりやすい銘柄に、時価総額が低いという共通したセオリーがある。仕手筋が限られた資金源で株価を急騰させ大相場を演じさせることが出来るからだ。つまり時価総額の大きい大型株は仕手化しない。バンダイナムコHDも任天堂も超短期で株価が4~5倍になったりしない。
時価総額を比較してみると、今現在の日本エンタープライズの時価総額は111億円(株価275円)、対して東京テアトルは145億円(株価182円)。時価総額に関しては余り大差はないようだ。

PER(株価収益率)はどうだろうか。2016年12月2日時点で日本エンタープライズは約82倍。東京テアトルは約95倍。こちらも余り大差がない割高水準だ。ただし東京テアトルは第1四半期が好調にもかかわらず期末の業績を上方修正していない。第2四半期はやや鈍った。そこに今回ヒットの兆しがある「この世界の片隅に」の業績が上乗せされるとすれば、当然予想PERは低くなるし、期待値は膨らむ。年末までには客入りの趨勢が見えてくるだろうか。

PBR(純資産倍率)を見てみよう。日本エンタープライズは2.2倍。東京テアトルはほぼ1倍。配当利回りは日本エンタが1%で、東京テアトルは0.5%だが、映画無料鑑賞券8枚綴り(約1万円程度)が株主優待として配布されるので、実質配当利回りは5%以上はあることになる。

仕手化すると、株価の割安感の指標となるPERも時価総額も関係なく一時的に急騰する。日本エンタープライズは250円台当たりから800円まで約3倍に突き抜けた。しかしここで注視しなければならない点がもう一つある。日本エンタープライズが急騰する前の実質PERは2014年5月の時点で19.8倍と割安感があった。急騰後は単純に3倍にしてPER60倍。東京テアトルが映画ヒット予兆のニュースを受けて急騰する前のPERとほぼ同じ水準まで急騰したことになる。つまり今の東京テアトルのPERは、これ以上騰がるには割高すぎて心理的に上値が重いのも頷ける。ポジティブサプライズがもう一押し欲しい所だ。

今現在保有している東京テアトルの株価も、映画「この世界の片隅に」の今後のヒット規模如何ではひょっとしたら再び急騰するかも知れないという甘い夢を見ながら、今宵は稿を閉じたい。まぁ上がりもせずに淡い夢で終わるかもだけれど。(投資は自己責任でどうぞ)