コーエーの最高傑作!戦国無双真田丸プレイレビュー

戦国無双 真田丸。ストーリーの厚みも加わり最高傑作!
戦国無双 真田丸。ストーリーの厚みも加わり最高傑作!

コーエーテクモから発売中の真田丸をクリアしたので、レビューなどを書き記していこうと思う。結論から言うと、真田丸はここ数年プレイしてきたコーエーのゲームの中でも最高傑作の出来だった。

大河ドラマ真田丸との連動

真田丸と言えば、今年のNHK大河ドラマが堺雅人主演の「真田丸」で好評を博した。僕も見ていたけれど、30年ほど前の大河ドラマ「真田太平記」で真田幸村役を演じていた草刈正雄が、今回父親の真田昌幸役で出演していたので、親子二代をどう演じ別けるのだろうと興味津々で視聴していた。

真田太平記では丹波哲郎が昌幸役だった。昌幸と言えばこちらのアクの強いイメージの方が脳裏を占めていたのだが、今回の草刈正雄の真田昌幸は凄く型に嵌まっているだけでなく、ゲーム「信長の野望」の昌幸の顔ビジュアルにもソックリだった事もあり、ゲームから抜け出てきたようで毎回の視聴が楽しかった。

信長の野望と言えば、コーエーのシブサワ・コウがこれまた30年ほど前に世に送り出したゲームで、今では戦国シュミレーションゲームの金字塔となっている。このシブサワ・コウが今回の大河ドラマで3D地図監修として参加しており、信長の野望「創造」の全国マップが勢力解説の際にそのままドラマの中でも使用されている。NHK大河ドラマの中で、ゲームのシナリオ解説のように流れるのだ。子供の頃から楽しくプレイしてきた信長の野望ファンにとってはまさに嬉しいの一言だ。

さて時を同じくしてコーエーテクモから11月下旬に「真田丸」がリリースされた。コーエーの大ヒット作戦国無双シリーズに連なるこの1作は、戦国時代後期の真田家の歴史をそのままゲームをしながら辿れるという、真田ファンにとっては待ちに待った作品だ。12月にドラマ本編は終了してしまったが、「真田丸ロス」をこのゲームで埋めるのも良いかもしれない。初回限定版はNHK大河ドラマ「真田丸」でもお目見えした真田幸村の甲冑衣装が無料でダウンロードできる。

真田三代の史実

真田家に焦点を当てたゲームで話が膨らむのか?とも思ったが、そもそも真田家は戦国後期のメインストリームに深く関わっている。まず真田幸村の祖父幸隆は元々は信濃の一豪族だったが、信玄の代に家臣として仕え、信玄が二度の大敗を喫した村上義清の砥石城を巧みな調略で難なく落としたりしている。謀略に長けた智将として有名だ。幸隆の三男昌幸は、武藤喜兵衛の名で子供の頃に信玄の側近くに仕えていたそうだ。

勝頼の代になり、長篠の戦いが起こって、真田家の長男次男が相次いで戦死した。そこで昌幸が真田家の家督を継ぐ事になる。武田家が滅びる直前に甲斐の躑躅が崎館から新府城に本拠地を移す事になったが、この新府城の縄張りをしたのが昌幸とされる。

一地方豪族としての独立

その後の甲州征伐(1582年)で裏切りや逃散が相次ぐ中、武田軍は総崩れとなり、武田勝頼は小山田信茂の守る岩殿山城か、真田昌幸の岩櫃城に逃れるかで意見が別れる。結果的に岩殿山城を選び、信茂の裏切りによって、天目山に追い詰められ自害。甲斐の名門武田家はここに滅亡する。

数ヶ月後に事態は急展開を迎える。織田信長が明智光秀の謀反により本能寺に斃れ、甲斐信濃は権力の空白地帯となった。そこへ徳川・北条・上杉が領地獲得争いに乗り出したのだ(天正壬午の乱)。信濃の一豪族である真田家は、主家を北条・徳川・上杉と巧みに乗り換え、信濃の一角に自らの領地を確保した。このときの変わり身の早さから、後に石田三成が上杉景勝にしたためた書状の中で「表裏比興の者」と褒め讃えられている。

二度の上田合戦で歴史の表舞台に

真田昌幸の名が一躍戦国の表舞台に躍り出たのは、なんと言っても二度の上田合戦だろう。天正壬午の乱で沼田の領土問題にしこりを残した事が導火線となり、徳川家康が真田昌幸の上田城を攻める事となったのだが、7000の軍勢に対して2000の軍勢で徳川軍に大打撃を与え、見事に勝利を収めたのだった。

その後、両家は和議を結ぶ。昌幸の長男である信幸に本多忠勝の娘稲が輿入れする事になり、両家の間には縁戚関係が結ばれる事になる。

1591年に起こった豊臣秀吉の天下統一の大仕上げとなる小田原征伐のきっかけは、真田家の所有する名胡桃城だった。大名同士の私戦を禁じる惣無事令を破り、北条家臣の猪俣邦憲が沼田領にある名胡桃城を奪取。この事件が秀吉に北条征伐の口実を与えた。またしても沼田の領地が戦の火種となったわけだ。小田原合戦には真田昌幸と信幸・幸村親子も北方軍として参戦することになる。

二度目の上田合戦が起こったのは、秀吉死後に石田三成が筆頭の文治派と加藤清正・福島正則率いる武断派による権力争いから生じた1600年の関ヶ原の戦いの時だった。父昌幸と息子信幸・信繁(幸村)とも関ヶ原本戦には参加していないが、中山道を進軍していた徳川秀忠率いる3万の大軍を上田城に誘い出して打ち負かし、関ヶ原への到着を遅延させる事に成功したのだ。

しかし関ヶ原での戦いは僅か1日で決着がついてしまった。昌幸・幸村親子は信幸と舅本多忠勝の助命嘆願で死罪は免れたものの、紀州の九度山へ幽閉される事になる。彼の地にて昌幸は病死。しかし真田の名は、戦国期の最後の最後で今一度脚光を浴びる事になる。

大坂冬の陣・夏の陣で縦横無尽の活躍

1614年に方広寺鐘銘事件をきっかけに、徳川家と豊臣家が手切れとなった。豊臣秀頼と淀殿(茶々)は方々に使いを出し、太閤秀吉が残した金銀財宝を元手に大阪城に浪人を呼び集める。九度山に幽閉中の幸村にも白羽の矢が立てられた。

真田幸村、九度山を抜け出して大阪城に入城。城の南の守りが手薄であると見て取った幸村は出丸を築き、ここを拠点に徳川方に攻撃を仕掛ける事にした。この出丸は誰彼となく「真田丸」と呼ばれた。大坂冬の陣において、この真田丸を拠点に、二度の上田合戦の経験が活かされた巧みな兵の駆け引きで、またも徳川軍に大打撃を与える事となる。

翌1615年の大坂夏の陣では、堀がすべて埋められ丸裸になった大坂城では籠城戦は戦えないという事で、戦場に打って出る策を取らざるを得なかった。茶臼山に陣を敷いた幸村は、家康に三度激しい突撃を仕掛け、武田信玄に大敗した三方ヶ原の戦いでしか倒れたことのなかった家康の馬印を倒すという快挙を成し遂げる。

しかし衆寡敵せず、徳川の援軍の前に真田軍は退却を余儀なくされ、疲れ果てた幸村は討たれることになる。大坂城も炎上しあえなく落城。山里の曲輪に避難していた豊臣秀頼と淀殿は自害して果てたのだった。

真田家の忠実に進むゲーム内容はボリューム満点!

このように戦国後期から末期にかけての歴史の表舞台に真田家は深く関わっている。ゆえにコーエーテクモのゲーム「真田丸」も全16章からなるボリュームの厚い内容となっている。

上杉謙信との川中島の戦いから始まり、北条氏康との三増峠の戦い、三方ヶ原の戦い、長篠の戦い、天正壬午の乱、第一次上田合戦、小田原征伐、第二次上田合戦、大坂冬の陣夏の陣と、真田昌幸と信幸・幸村親子が戦場で大活躍する。

また、副戦場として真田家がかかわっていないシナリオも用意されている。野田福島の戦い、山崎の戦い、小牧長久手の戦い、四国征伐、関ヶ原の戦い、長谷堂城の戦いなどのサイドストーリーが用意されている。

ゲームの内容としては、今までの戦国無双のボリュームはそのままに、ストーリー性に厚みを持たせているので、武将達がより魅力的に映る。前作の戦国無双と比べ、ムービーがこれでもかというほど多く、話も良く出来ている。3DCGが素晴らしいくらいに美しく、武将達に感情移入してしまう。

探索マップや城下町マップが追加。資源を集めて武器鍛錬や武将との交流に。

敵をなぎ倒すゲームを楽しむことの出来る長期合戦シナリオの他に探索マップもあり、武器強化や他の武将や町の人たちとの交流に使える資源などを獲得したり、町人達の依頼に応じて敵をなぎ倒していったりも出来る。

本質的には資源集めとレベルアップのための鍛錬の場となっている。探索マップは浅間山麓や伊賀道など名前が付けられているが、数パターンのマップが用意されていて使い回しているようだ。

真田本城や上田城、大坂城など城下町を歩くことも出来る。この辺りの仕様はドラゴンクエストモンスターズの村と同じように考えても貰っても差し支えないだろう。鍛冶屋に集めた資材を提供して武器を鍛錬したり、鍛錬場で武将をレベルアップさせたり出来る。よろず屋では集めた資材を調合して戦闘中に使える薬を作ることが出来る。

茶屋では武将を呼び出すことも出来る。花や果物など、武将の好みの物をプレゼントする親密度が上がり、ゲージがマックスになれば、探索に連れて行ったり、お返しに資材を貰えたりする。

釣り場では釣りゲームに勤しむことが出来る。集めた虫などを餌に魚を釣る。餌によってゲージの速さが異なるので、釣り逃したりすることもある。単純な釣りゲームだが嵌まってしまう。

畑では集めた種を植えて農作物を収穫できる。連打でレベル付けされて、収穫量が決まる。鍬で思いっきり耕す姿はどこか滑稽だ。

六文銭をためて、戦闘を有利に進められる「次の一手」を発動

街中の人たちに話しかけることで、画面隅の六文銭のゲージが上がることがある。これは戦闘中に「次の一手」として使える。「次の一手」とは、戦闘を有利に進めることが出来る小イベントだ。例えば誰々が味方についたり、味方の移動速度が上昇したり、家康が馬から落ちたりといった、戦闘の流れに関連したイベントが起こり、ゲームを有利に進めることが出来る。

「次の一手」が表示され、時間内にL3ボタンを押したら小イベントが発生するのだが、このL3ボタンがどれなのか最初分からなかった。コントローラー中央に2つあるキノコみたいな黒い形のボタンの左側がL3ボタンだ。

真田家の武将だけでなく、これまでの無双シリーズに登場したオールスターズもすべて本作で登場する。「真田丸」の新登場キャラクターは忍びの佐助、茶々、武田勝頼の三人。特に茶々が3CGなのだけれど恋してしまいそうな程に気高く美しい。衣装も可愛い。誰かコスプレして撮らせてくれないかなぁ。

佐助も見目麗しいイケメンで、つっけんどんというか口の利き方を知らない少年だが憎めないキャラクターとなっている。

ここから先はネタバレになるので、まだプレイしていない方は回れ右して頂きたい。

以下ネタバレ感想

真田幸村の主決戦場と言えば、大坂冬の陣・夏の陣だが、もう一人の主役、肝心の豊臣秀頼のひの字も出てこない。秀吉と茶々のロマンスシーンは一切なく、飽くまで幸村と茶々が主役という位置づけになっている。秀吉と茶々が結ばれて、その子秀頼がゲームに出てくると、その存在感から、幸村と茶々のラブロマンスに濁りが生じてしまうためだろうか。二人のロマンスシーンはハッキリとは描かれてはいないが、茶々の仕草からそれとなく仄めかされているので、やはりここに秀頼の存在を少しでも匂わせてしまうと、幸村と茶々のロマンスが濁ってしまう。

しかし終章では、「花のようなる秀頼様を~」の俗謡が出てくるので、秀頼は存在していたのだろう。その辺りはあやふやとなっている。

茶々はガラシャと仲が良い。茶々に負けず劣らずガラシャも絶世の美女として描かれている。衣装はゴシックロリータで、無双奥義を発動すると、天使の羽が生えるのが良い。おそらく無双武将の中では一番美しい発動描写なのではないだろうか。

小少将といい、井伊直虎といい、早川殿といい、美女揃いとなっている。キャバクラ嬢のような頭髪の甲斐姫もいる。戦国無双に出てくる女性武将はどれを撮っても一つ一つが魅力的で性格がハッキリと色づけされているので、どの武将でもプレイしたくなる。

男性武将では、松永久秀が一癖も二癖もあっていい。チョイ悪親父どころか完全悪な存在だが、無双奥義を決めたときの「運命だぁ!!!!」のセリフがとても心地良く響く。

佐助とその師匠服部半蔵のストーリーも泣ける。冷徹に見える半蔵が可愛い弟子のために流す涙にこちらもホロリとしてしまう。

終章の出し方

本編をクリアすると、終章のメニューが表示される。或る一定の条件をクリアすると終章メニューを実行できる。条件はすべての戦場で勝利すること。主戦場だけでなく、副戦場もプレイしてすべて勝利を収めれば、終章を実行できる。

終章では後日談が語られる。

花のようなる秀頼様を~♪
鬼のようなる真田が連れて~♪

大阪の陣の後に童の間で流行った俗謡が採用されている。戦闘は一切なく、街中を歩き回って明石掃部や甲斐姫、ガラシャと会話を交わしたりする他、ムービーが用意されている。通常のエンディングだけでは何か物足りないと思ったら、終章でガッツリと用意されていた。

大河ドラマの真田丸でも、最終話が終わってから、真田丸ロスとなった視聴者達が、架空の五〇話感想をTwitterでツイートするなどの現象が見られたが、この終章もおそらくゲームをクリアしてどこか物足りないエンディングを迎えてしまった余韻から来る戦国無双真田丸ロスを汲み取ってくれるかのようなボーナスイベントとなっている。ボーナスと言うにはシッカリとした正統な終章(エンディング)だけれど。

しかしストーリーは歴史通りに進む。確か初期の戦国無双では、コーエーの神髄でもある「歴史IF」の思想が活かされていて、ゲームの進行次第では真田が徳川を倒してハッピーエンドになる筋書きも採用されていたが、戦国無双3や4では史実通りの筋書きで、悲壮感漂うエンディングだったように記憶している。

今回の真田丸も史実通りにストーリーが動き、史実通りの結末を迎える。どことなく悲しいのだが、佐助は師匠服部半蔵との一騎打ちで、半蔵の胸の中で息絶え、くのいちは生き残り、信之に形見の六文銭の内の三紋を渡す。

徳川の陣に突撃するムービーでゲームは終わりを迎えるが、少し物足りないというか余韻を残しているような感じもする。

終章では、松代へ転封となり慌ただしい城内にいる信之の耳に、冒頭にも上げた童の歌う俗謡が聞こえてくる。その聞き覚えのある声にハッとした信之が城下を彷徨すると、少年時代の幸村の後ろ姿の幻影がその歌を口ずさみながら辻を曲がり、門のある先に壮年の幸村の幻影を見て、つむじ風と共に掻き消え、ストーリーは終わる。何とも余韻の残る終わり方で胸が震える。

おそらくコーエーのゲームの中でも最高傑作の作品だろう。コーエーの得意とする歴史IFの神髄で、勝利条件の達成次第でもう一つのハッピーエンドのストーリーが用意されていれば、なお良かった。