久しぶりの夜桜コスプレ撮影。ところが開始後しばらくしてから、電波通信ワイヤレスで光らせていたキヤノンの600EX-RTが光らなくなった。お急ぎの方もいるだろうから、記事冒頭に対応策を箇条書きで記しておく。
- トランスミッターのスキャンで電波状態を確認し、チャンネルを変える。
- チャンネルをAUTOにすると、自動的に良好な電波状況のチャンネルに設定してくれる。
- トランスミッターとストロボのチャンネルを各々の設定で合わせる。
症状
2灯のスピードライトCanon 600EX-RTを使い、電波通信ワイヤレスモードで撮影。1灯はモデルの斜め横から透過アンブレラのライトスタンドに取り付けて設置。もう一灯はモデルの背後の桜の木の下に設置。撮影位置とストロボの距離は遠くない。使用カメラはフルサイズ機Canon 1DX、レンズの焦点距離は55mmで、構図は膝から上。ライブビューモードによる撮影。
撮影後しばらくしてからストロボが光らなくなる。トランスミッターを見ると桜の木の下に置いてあるCのストロボのLINKが切れている模様。トランスミッターとスピードライトが通信状態にあることを示すギザギザの下矢印マークが点灯していない。
しばらく待ってみたが、一向にストロボCのリンクが繫がらない。ライブビューモードで撮影していたが、シャッターボタンを押した後にシャッターが戻らない音がして遂にシャッター幕が壊れたのかと焦る。電源を切って入れ直しただろうか、ガシャンという音がして正常の状態に戻る。その時押したシャッターの写真が撮れていたかどうかは不明。親指AFで撮影しているので、ピント合わせの時に押すAF-ONボタンの隣にあるライブビューモードボタンを間違えて押したのかも知れない。
桜の木の下のストロボの様子を見に行くために近づくと、ストロボCのLINKがグリーンに点灯して、通信状態が回復した。ところが所定の位置に戻りシャッターボタンを押してみるとストロボが再び光らない。
しまいには撮影者の隣に置いているストロボAも、トランスミッターのギザギザの矢印マークが点灯しなくなった。
トランスミッター、スピードライト共に電池を交換してみたが症状は変わらず。
双方の電源を一端オフにしてOnにし、撮影を続行。何枚かはストロボが光る事があったが、大半は光らなかった。
カメラとレンズを変えて撮影をしてみたが、症状は変わらず。
再び調子が戻ってきたかと思ったが、双方光るときもあれば、片方だけしか光らないことがある。
症状が出る前のスピードライトの状態
前回ストロボを電波通信ワイヤレスで使った撮影は25日前。その時は1灯が光らないことが何回かあり、ストロボの不調を疑ったが撮影に支障が出るほど頻繁に症状が出なかったので放っておいた。
またストロボCは以前野外イベントで、ソフトボックスを付けていたため地面に直接ではないが1度強く落下させたことがあり、スピード内に収められているキャッチライト用の白い反射板と照射角を超広角にするときに用いる半透明のプラスティックが外れて中に収められている状態。他にも同じく地面に落下させたことがある。
またトランスミッターも1度イベントでカメラバッグを開けっぱなしにした状態で担いだ勢いで床に勢いよく落下させたことがあるが、その時は不調の症状は出なかった。
症状の再現を試みる
2つのストロボを距離を離した状態で、トランスミッターで電波通信ワイヤレス機能が動作するか否かのテスト。
2つの部屋にAとCのストロボを置き、トランスミッターをオンにする。すると撮影者の部屋に置いているストロボAはすぐにLINK状態であることを表すギザギザの下矢印マークが付いたが、壁を隔てて廊下の先のダイニングに置いてあるストロボCは矢印マークが点灯しなかった。
次にストロボAとストロボCの位置を交換してトランスミッターの機能実験。やはり同じように別の部屋のストロボがLINK状態にならない。
ところがトランスミッターをストロボのある方角に向けたり、部屋に近づけると矢印が点灯して通信状態になった。
このことから、ストロボの不調による電波通信ワイヤレス機能の不調とは考えにくい。電波の強弱の問題か。
取扱説明書を見るとチャンネルのスキャン機能で1から15の各チャンネルの電波状態が表示されるとある。そこで何度かスキャンしてみると、Ch2とCh3がにたまに電波状態が0になることが分かった。他のチャンネルは電波状態を表すグラフが高いが、この2つのチャンネルだけ低いことが多い。
そこでトランスミッターとストロボのチャンネルをAUTOにして、自動的に電波状態の良いチャンネルを探す設定にした。トランスミッターをオンにすると、ワンテンポ遅いが、LINKが繫がる。しかし同じように別の部屋に置いてあるストロボはLINKしない事が度々あった。
ストロボのテスト
ストロボ自体が故障して発光しなかったのかも知れないと思い、2つのストロボをマニュアルで動作させてみたが、明るさに関してはきちんと発光していた。明るく設定すれば明るく、暗く設定すれば暗めに発光する。よってストロボの発光部分が故障している可能性はゼロ。
ストロボの劣化の可能性
430EX III-RTと併用して光量を大きめに設定すると、430の方が光らなくなり休息が必要になることがあるが、その際にシャッターボタンを押すと総てのストロボが光らなくなる。
今回の600EX-RTでも同じ事が起こったのかと思ったが、フル発光はしていないので、熱冷ましのような休息が必要な表示は点灯していなかった。1時間ほど前にストロボを使って1/2に近い光量で撮影していたが、充分に休ませていた。
普段の撮影でもハードに使っているので、今回だけストロボが機能的にバテたというのは考えづらい。考えられるのはストロボの使用頻度による劣化だが、修理に出してみないことには分からない。フル発光症状はなかった。
カメラやレンズとの通信不良・シャッター幕不調の可能性
ライブビューモードの撮影でのカメラとの通信不良を疑った。前述したようにシャッターを押したら戻らなくなったような音がしたのが3回ほどあった。使用している1DXは40万ショットを超えているので、シャッター幕の不調による症状だろうか。しかし5DsRに変えて撮影したときもトランスミッターは同じ症状のままだったので、カメラの不調やレンズの通信不良も考えづらい。その後1DXでも通常に撮影できている。
気温
この日は最低気温7度で氷点下ではなかったから問題ない。
新旧2つのトランスミッターで比較
Chスキャンを実行して電波状態を確認したが、双方とも同じようなグラフを描く。グラフがどれも高いときもあれば、どこかのチャンネルが0の時もある。
新しく購入したトランスミッターでも、別の部屋に置いたストロボがLINKするのが遅いときがある。またはLINKしない。かと思うとすぐにLINKしたりする。
トランスミッターの通信部をストロボのある方向と逆に向けて電源をOnにした。同じ部屋にあるストロボはLINK状態になったが、別の部屋のストロボはLINKしないことがある。何度か試したがすぐに双方共にLINKすることもある。
新旧トランスミッター共に同じように作動する。
結論
電波状態が悪かった事による症状、もしくは過去に機材を落下させた際の衝撃による不調かと思われる。しかし後日同じ機材で同じ設定で電波通信モードで撮影したら全く問題なく光ったので、明確な原因は不明。他のカメラマンが使っていたストロボ機材と何らかの干渉があったのか、トランスミッター・ストロボ自体の不調か。色々考えられるが確証を得ない。
電波通信ワイヤレス機能でも、トランスミッターの通信部に向いていない方のストロボはLINKしない事があることが分かった。しかし撮影時はどちらのストロボもカメラの横と前方にあった。モデルが電波通信の障害物になっていたことは考えにくい。赤外線通信の場合はワイヤレスストロボとトランスミッターの間に遮蔽物があると光らない事があるが、電波通信の場合は遮蔽物の影響は受けない。今まで数年間同じような配置でワイヤレス発光をしていたが今回のような問題が生じることはなかった。
対策
まずは現在使っているチャンネルの電波の状態を疑ってみる。トランスミッターのメニューからSCANを表示させて実行。
トランスミッターとスピードライトのチャンネルを、自動で電波通信が良いチャンネルを選ぶAUTOに設定する。
スピードライトがLINKしないときはトランスミッターを近づけてみる。
どうしても機能しない場合は、スピードライト600EX-RTが2台ある場合、内1台をトランスミッター代わりに使う。カメラのシューに取り付けるスピードライトをマスターに設定し、ワイヤレスで発光させたいスピードライトをスレーブに設定する。カメラに取り付けているストロボは発光しない設定にする。
実際に取った対策
桜の木がイベントスタッフが持ち込んだライトでライティングされていたので、ISO感度1600、F1.4やF2など、カメラを明るい設定にして、ライトアップされた桜の姿を捉えることにした。幸いにして、モデルを照らしている方のストロボAは光ることが多かったから、モデルの明るさは確保できた。
しかし終盤ではやはり2つとも光らないことの方が多くて撮影が難渋を極めた。
桜に向けたストロボが光り、人物の方が光らなかった場合もあったが、良い感じに人物がシルエットになった。また顔の縁にうっすらと陰影が付いているのも良い感じだった。
撮影現場ではあれだけ光らなかったのに、家でワイヤレスで実験してみると問題なく発光している。電波の状態が悪かったのだろうか。
新しいトランスミッターとストロボを購入した。あれだけ不安定な動作をされると、今後スタジオなどでの撮影に支障が生じた場合のことを考えると不安極まりない。トランスミッターの方は5年ハードに使っているし、そろそろ買い換え時だったのかも知れないが、新旧テストでは同じように動作している。修理に出してから予備に一個持っておくのも良いだろう。雨撮影などの過酷な撮影用に持ち出すのもアリだ。
ストロボに関しては600EX-RTをもう1台買おうか悩んでいたところだったので、今回の不調が良い契機になった。
その後の症状報告
愛知県半田市のコスプレイベントから数日後に同じストロボとトランスミッター、同じチャンネルと同じ設定で撮影してみたのだが、全く問題なく電波通信でワイヤレス発光することが出来た。結局原因が良く分からない。あの場所で一時的に電波の状態が悪かったのか、電池に何らかの問題があったのか、これまでストロボ/トランスミッターを酷使してきたことによる不具合が症状として一時的に出たのか。
その後過去に強く落としたストロボを再び風に煽られて落としてしまい割れてしまったので、これ以上の検証は出来なくなってしまった。一個新しいストロボを買うと古いのを一個壊してしまう。何という巡り合わせ。