NTTがNTTドコモの株式公開買付(TOB)を発表 – TOBに応じる手順を解説

NTTドコモから届いた公開買い付けの手続きを記した冊子。

NTTがNTTドコモの株式公開買い付け(TOB)を募集のニュース。久々の大型買い付けか。以前(株)創通がバンダイナムコHDによるTOBで上場廃止となる運びになった折り、TOB発表時の株価が約1,500円で、そこから買い付け価格附近の3,080円まで2倍に株価が跳ね騰がった。バンダイナムコHDが提示した買付価格は3,100円。横目で指をくわえながら見ていたのを覚えている。

それから約1年後にまさか自分の保有している銘柄がTOBの対象になるとは夢にも思わず。NTTドコモは菅義偉新首相就任に伴う携帯料金値下げの圧力で年初来高値から一転下落していたが、その下落分を吸収する形での3,900円の公開買付価格となった。ここ1年の年初来高値、またここ10年の年初来高値が3,500円附近、更に遡ると2001年のITバブルが崩壊し高騰していた銘柄が一転暴落を演じている最中の株価水準でもあるから、底値で購入出来た長期保有者にとってはこれまでに入ってきた配当金も考慮に入れれば、直近の大幅下落を補って余りある買付価格となる。

この買付価格が高いか安いか。元々ドコモは高配当銘柄で、PERも10倍中頃と他の業種の銘柄と比べるとそれほど高くはないものの、既に飽和状態の携帯電話市場で、次の一手が暗中模索の状態では成長性は見込まれず、更には追い打ちをかけるように携帯電話料金値下げを政府が政策として掲げるニュースが流れ、かつてのITバブルの時のような高騰する要因が見いだせない中での、TOB買付価格3,900円。2020年10月23日現在3,889円を付けている段階で、PER20.75倍はこの業種としては若干の割高感が否めないことからも、株主にとっても落とし所の買付価格ではないか。

さて実際にTOBに応じると言ってもどのようにすれば良いのか全くの初体験だったので、今回のTOB代理人である三菱UFJモルガンスタンレー証券や取引している証券会社、NTTドコモのサイトで調べてみることにした。

はじめは手続きが煩雑そうで市場で売ってしまおうかとも思っていたのだが、市場価格が買付価格3,900円に対して3,876円〜3,877円で推移してなかなか価格が騰がらず、差額で儲けようとしている連中に売るのも癪だったのと、調べてみると絡まった糸のように分かりにくいと思われた手続きも解れるように理解出来てきたこともあり、公開買い付けに応じることにした。

という事で、今回の記事では2020年9月〜11月のNTTドコモの公開買い付け(TOB)を巡る体験を元に、保有している株を公開買い付け(TOB)に応じて売却する方法を順を追って解説していきたい。

今回のTOBは敵対的TOBではないこと、子会社化して上場廃止を目的としていることなどを踏まえて、NISA口座と特定口座に該当株を保有している場合を想定しての手続き解説となる。

  • 今回株式の公開買付を実施する企業=NTT
  • TOBの対象株式銘柄=NTTドコモ
  • 株式公開買付代理人=三菱UFJモルガンスタンレー証券

公開買い付けの説明書類がNTTドコモから届く

NTTドコモのTOBのニュースがあってしばらくしてから、公開買い付けに関するやや厚めの説明書類が届いた。こちらの内容はドコモのサイトにあった公開買い付けに関するPDF書類と同じ内容となっており、サイトからも確認出来る。

この頃はまだ迷っていて、市場で売った方がボタン1つポチッと押すだけで済むから楽だし、次の銘柄に投資する軍資金を確保出来る。TOBに応じれば実際に証券会社に振り込まれる11月24日まで資金が拘束されることになる一方、どうあっても買付価格までは上がらないから(市場で買付価格で買って、同じ値段で証券会社に買って貰う人はいない)どうしたものかと考えあぐねていた。

NTTドコモや三菱UFJモルガンスタンレー証券のサイトで細かく解説されていたので、ドコモを保有している自分の証券会社の口座がどの手順に当てはまりどのような手続きをすれば良いのか見えてきたので、TOBに応じることにした。

公開買付代理人の証券会社に口座を開設する必要がある

まず今回、日本電信電話(NTT)から公開買い付けを委託されている三菱UFJモルガンスタンレー証券の口座を開設する必要があった。ネット証券界隈ではそれほど知名度は高くないのではないか、筆者もそのような証券会社があることを今回の件で初めて知ったくらいだ。当然口座は持っていないので開設する必要がある。ホームページを訪れてみると、電話で相談を受け付けていると出ていたが、混み具合なども表示されており、これが結構どの時間帯も色が赤くて混み混みであることが窺える。

スマホアプリで口座開設手続きを済ませる

スマホアプリをインストールすれば簡単に口座開設出来るとのことだったので、実際にやってみた。

電話からの口座開設申し込みなら、TOBが終了した後に口座を自動的に閉じることも出来る選択肢が用意されていた。アプリからの口座開設はその選択が選べない。違いはそれだけだ。

今後もひょっとしたら保有銘柄がTOBの対象になるかも知れないので、これを機会に三菱UFJモルガンスタンレー証券の口座も保有しておくことにした。

アプリからの口座開設の手順は簡単で、住所や氏名、紐付ける銀行口座などの必要事項を記入して、マイナンバーカードの写真をスマホで撮って送れば、口座開設の手続きは完了。

口座開設通知書の入ったの封筒と、仮パスワードの入った本人限定受取郵便の2通が届く

1週間ほど経ってから、まず細長い封筒で口座番号が記された口座開設のお知らせの書類が届いた。

それから2,3日後に、本人限定受取郵便が郵便局に保管されているとの通知書が郵便受けに入っていた。本人限定受取郵便なのでまずは通知書を送って、受取人の連絡を元に、在宅時間に配達員が届けてくれるという流れだ。

通知書とマイナンバーカードを持って、直接郵便局に取りに行った。電話で家に配達して貰えるのだが、期限も迫っていたのでなるべく早く手続きをしたくて郵便局へと向かった。なお、家で受け取る場合でも、マイナンバーカードなどの本人確認書類の提示は必要となる。

窓口で通知書とマイナンバーカードを差し出すと、マイナンバーカードのコピーを取るとのことだった。番号のコピーは取らないと説明された。

3分ほど経ってから本人限定受け取り郵便物を受領。A4サイズのレターパックの形状に似た封筒で、中には口座開設の手引きや、口座の使用方法と併せて、NTTドコモの公開買い付けに応じる方法と応募用紙も入っていた。この時期に口座開設を申し込んだ顧客全員に添付しているという。

仮パスワードの入ったレターパック大の封筒。

口座番号と仮パスワードで、三菱UFJモルガンスタンレー証券のサイトからログインし、仮パスワードを本パスワードに変えて口座開設完了。

ドコモ株を預けている証券口座のホームページから手続き方法を調べる

口座開設と平行して、NTTドコモを保有している各証券会社のホームページから移管方法を調べる。どちらの証券会社もトップページにNTTドコモの株式公開買付について、目立つように解説ページへのリンクが張ってあったので、迷うことはなかった。

NISA口座に保管されている銘柄は特定口座に移管する必要あり

保管している証券会社から、公開買付代理人の証券会社へ株を移管する際に、NISA口座に保管されている銘柄は、特定口座に移管する必要がある。今回2つの証券会社の内1つはNISA口座で保有していたので、NISA口座から特定口座に移管する手続きがまず必要。

各種移管手続きの申込用紙を送って貰う

証券会社Aのホームページのメッセージ欄から、NTTドコモ株のNISAから特定口座への移管依頼とその理由としてNTTドコモのTOBに応じる旨送信すると、そのメッセージを以てNISA口座から特定口座への移管手続きのための申し込み用紙と、公開買付代理人の証券会社(三菱UFJモルガンスタンレー証券)への移管手続きの為の申込用紙の2種類の書類を急遽送って貰えた。

証券会社Bの場合は、移管依頼の書類をホームページからダウンロードして印刷することでも対応していたが、封筒を作ったりと面倒くさそうな作業をしなければならないかも知れず、同じく郵送で送って貰った。こちらは他証券への移管手続きのメニューを探してボタン1つで済んだように記憶している。

捺印はまちまち。本人確認書類のコピーが必要。

用紙が届いたら必要事項を記入する。証券会社Aは届出印は不要だったが、証券会社Bは届出印を押す欄があり、記入例を記した用紙にも捺印するよう書いてあった。

記入用紙に、移管の時期について、日付指定の他に「できるだけ早く」のチェック項目があったので、こちらの方にチェックを入れた。

双方の証券会社の口座番号の他に、支店名や支店番号、所在地、桁数の多い番号等も記載する必要があるが、これらの情報は各証券会社のホームページの登録情報のメニューなどに掲載されているので、そちらを参考にする。

また双方ともに本人確認書類のコピーの添付が必要だった。健康保険証をコピーして添付し、所定の封筒に入れて郵送した。

速ければ5営業日程度に移管手続きが完了するとのことだった。

移管完了後、公開買付応募の申込書類を公開買付代理人証券会社に送付

株の移管がA及びBの証券会社から三菱UFJモルガンスタンレー証券へ済んだら、今度は三菱UFJモルガンスタンレー証券に対し、株式公開買い付け(TOB)の応募用紙を郵送する。この用紙は口座開設の際に添付されていた書類で、専用の封筒もついていた。応募用紙を送付して手続きが無事済めば11月24日に三菱UFJモルガンスタンレー証券の口座に売却金が入金される。

今回は移管手続きや売却に関わる手数料は無料

移管や公開買い付けによる売却にかかる手数料は無料とのことだ。

入金された売却金はすぐに銀行口座の方に振り込み出来るのか、それから数営業日かかるのか、振込手数料などについてはまた分かり次第この記事に追記する。

TOB(株式公開買い付け)の手続きまとめ

  • NISA口座に該当株がある場合は、まず特定口座に株を移管する手続きが必要。
  • 公開買付代理人の証券会社に口座を開設しておく必要がある。
  • 株を保管している証券会社に、公開買付代理人の証券会社への移管手続きを書類で申請。
  • 株の移管が完了したら、公開買付代理人の証券会社にTOBに応募する為の申込用紙を送付する。
  • 所定の日に売却金が証券口座に振り込まれる。
  • 期限があるのでできるだけ早めに手続きを済ませる事が重要。
  • TOB発表後に市場価格と買付価格にほとんど差が無くなった場合は、手続きの煩雑さを避けたり素早い資金化のために市場で売ってしまうのもアリ。
  • TOBの対象となった株は、市場で売らなかったり、公開買付に応募せずに保有し続けていると、上場廃止になった場合に換金しづらくなる恐れがある。