ニンフォマニアック Vol.1/Vol.2 – 古典や聖書からの引用で喩えられる性の遍歴と衝撃のラスト

ニンフォマニアック

なぜこの映画を観に行ったのか、本当に観に行ったのか確証が持てないほどに記憶が薄れかけているのだけれど、確かどこかにパンフレットも仕舞っているはずだし観たのだろう。なぜと問われれば率直にセンセーショナルな内容だったからだろう。以下ネタバレ。

映画は暴行された40代くらいの女性を老人が助けて自宅で介抱するところから始まる。女性はニンフォマニア(淫乱症)で、10代の思春期の頃から男と奔放な性交を繰り返してきていることを温かい飲み物を飲みながら老人に告白し始める。

この老人は読書家で博識に富んでおり、女の性の遍歴を聞いては、それらの出来事を釣りの技術や中国の古典に喩えたりしていく。他にも読書から得た知識をハンカチーフのように引っ張り出してきては巧く喩えていたが、下卑た性行為が老人の喩えの話術にかかると何か崇高な哲学のように聞こえてくる手際は見事と言わざるを得ない。

ニンフォマニアック(予告編)

この映画、二部作になっており、それぞれvol.1、vol.2と銘打たれている。計4時間。vol.1でもセックスと暴力シーンが多くて結構お腹いっぱいになる内容だったが、vol.1を観たからにはvol.2を観ないと完璧主義者の自分の中で収まりが付かない。日を隔てて公開されていたのかどうか忘れてしまったが、vol.1と2が同時に上映されるなんて事は観客の負担になるしなさそうだから、わざわざ日を改めて濃い内容の映画を観に行ったのだろう。

記憶からほぼ薄れかけているのだが、なぜvol.2もきっちり観に行ったのを覚えているかといったら、ラストがなかなかに衝撃だったからだ。このラストをしっかりと覚えていたから、完結編であるVol.2をきちんと観に行ったことを覚えていたという具合だ。つまり覚えているのは最初トラストだけで、他の4時間ほどのシーンは一体どういう内容だったのか、かろうじて予告編を見てそういえばこんなシーンあったなと覚えているくらいで、記憶がスッポリと抜け落ちてしまっている。

ラストシーン、介抱された傷だらけの女性がベッドで眠っている。そこへ教養溢れる読書家の老人が部屋に入ってくるが、どこか様子がおかしく、表情が弛み、ズボンと下着をずらして下半身丸出しで女に近づこうとする。それに気づいた女は隠し持っていた拳銃で老人を撃つ。

「今まで散々ヤってきたくせに」との捨てゼリフを残して老人は息絶える。あれだけ親切に女性を介抱し、女性の性の遍歴の告白を親身になって聴き、今まで読んできた本の引用からそれらの下卑た体験を宗教的とも思われるほどに知的で崇高な体験に変貌させていたあの人の良さそうな老人が、最後には理性が性欲に負けて女を襲おうとするラストに、男という生き物のすべてが集約されているように感じられた。どんなに善人ぶってても男は皆同じ。今まで幾度も繰り返されてきたであろう男と女の事象、動物としての人間の本性を、ほんの数十秒のシーンで言い表していた。

内容は過激ではあるが、意外と女性客が多かった。あのラストシーンに何を思っただろうか。