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愛しき人生のつくりかたを観に行ってきた

愛しき愛のそだてかた

久しぶりに映画を観に行ってきた。前に観たのがアニメ映画Free!Eternal Summerだったので、2ヶ月ぶりくらいか。

「愛しき人生のつくりかた」、フランス映画、ロングランで100万人動員したそうだ。原題はLes souvenirs。フランス語で思い出という意味。つくりかたは、漢字ではなく柔らかいイメージのあるひらがな。タイトルを見たとき、ちょっとくどいなぁと思ったが、「思い出」というシンプルなタイトルよりも、人生の知恵の詰まった、ちょっとした本のタイトルようで日本人受けしそうではある。

至って平々凡々とした内容だった。くすりと笑えるシーンが随所にちりばめられている。本当にクスリ程度の笑いだ。日曜でもあり、内容も人生の最期を迎えようとしている祖母の生き方をテーマにした映画だったせいか、年配の観客が多かったように思う。笑えるシーンになると観客も笑うのだが、自分には笑いどころがイマイチよく分からない。今のところ、そんなに面白くないよ。

以下映画の内容。

映画は祖母が夫の葬儀に出ているところから始まる。孫が墓地を間違えて葬儀に遅れてしまうが、祖母は孫が可愛いのだろう、逆に孫を慰める。

その祖母が自宅で倒れたのをきっかけに、息子から老人ホームに入るよう説得される。息子と言っても60を過ぎてフランスの郵貯銀行を定年退職した頭の禿げた眼鏡で小太りの男だ。その息子(父親と全く似てない)は大学を出立てで、モーテルのフロントの夜勤バイトを始める。同居人のナンパが趣味のアラブ系フランス人や、絵を描くのが趣味だったが今は断筆している素人画家、老人ホームのやたら派手な経営者の女など、色々クスリと笑えるキャラクターが出てくる。

父親は3兄弟で皆同じように頭が禿げていて小太りだったり、サービスエリアの中年男に人生相談したり、老人ホームに掲げられていた下手くそな牛の絵がお気に入りだという祖母の為に、描いた男を孫が見つけて祖母と一緒に訪問しておだて上げるシーンなど、爆笑出来るほどではないが本当にささやか程度に笑える。数年前に見たダニエル・オートゥイユ主演のフランス映画「画家と庭師とカンパーニュ」の葬儀のシーンで、個人の名前がワキガか何かという意味で、司祭が名前を連呼する度に字幕に爆笑してしまいその後も笑いが止まらなくなったのだが、そのときの爆笑ほどではない。

祖母に絵を描いた主と会わせるという思いがけないプレゼントをするとき、「スプリーズ!」という表現が出てくる。スプリーズはサプライズの意味。フランス語読みだとスプリーズになる。サプライズという表現は全世界共通となっているようだ。

老人ホームに移った祖母に内緒で、住んでいたアパルトマンを売ってしまう。ショックを受けた祖母が老人ホームから失踪。警察に相談するが、母親は成人かどうかと聞かれ、そんなの60過ぎの息子を見れば一目瞭然だが、至って冷静に成人していると息子が答えると、未成年しか捜査対象にならないという。息子キレるキレる。

このドタバタの最中に、倦怠期ならぬ、定年退職危機を覚えていた妻から、他に好きな男が出来たから離婚して欲しいと告げられ(実はウソ)、夫はヨガ教室の男が不倫相手だと睨んでヨガ教室に殴り込み。サービスエリアで中年男に受けた人生訓を頼りに、妻にかつてプロポーズしたセリフを告げて、仲直り。

孫は祖母の居場所をノルマンディーのホテルに突き止め、「遅かったじゃない」とユーモアたっぷりに言われる。祖母が通っていたという小学校で、孫は小学校の女教師に一目惚れ。戦争で疎開しなければならなかった為に途中で小学校をやめた祖母は、孫と女教師の計らいで小学生達と一緒に授業を受ける。

しばらくして祖母がホテルで倒れる。病院に搬送され、孫がつきっきりで話しかけるが亡くなってしまう。

そして映画は最初のシーンに戻る。祖母の葬儀に、今度は小学校の女教師が墓地を間違えて遅れてしまう。パリらしい階段での二人のキスシーン。二人は結ばれてハッピーエンド。

所々に日本の色も見えた。ナンパが趣味のアラブ系フランス人はゲームボーイでポケモンをプレイしてるし、そのナンパ男が甘い言葉でナンパしているのは観光中と思われる日本人の女性。怪しいフランス人感満載だった。ノルマンディーの小学校では、小学生達が祖母に、「子供の頃はDSはあった?」と聞く。日本はヨーロッパにすっかり浸透しているのだ。かつては浮世絵がヨーロッパ美術に大きな影響を与えたが、今は日本発のゲームがヨーロッパに影響を与えている。

他にもおばあちゃんの子供の頃はモノクロだったの?といった質問が面白かった。純粋な質問だろう。僕も昔チャップリンの映画をテレビで見て、昔の人は白黒でこんなに動きが速かったのかと思ったものだった。

最後のシーンで映画はすべてのフラグを回収して、ハッピーエンドを迎える。夫の妻への再プロポーズや、ラストシーンなど、繰り返しが上手く多用された映画だった。
内容の全体としてはそんなに面白くないが、我々の日常と同じで、派手な事件が起こるわけでもなく、日常の中にほんのちょっぴりの非日常が起こる、スクリーンの向こうに日常の延長線上の世界が存在しているかのような、緩やかな映画だった。

久しぶりに映画を見ると、良い刺激になる。いい影響を受けて友達との会話も弾むような気がする。こぎみ良いウィットとユーモアの会話に溢れた映画だった。