劇場版 艦これ -角川映画40周年記念作品だが・・・

劇場版 艦これ

なぜ劇場版艦これの前売りチケットを買ったかといったら、その日はちょうど楽しみにしていた「帰ってきたヒトラー」を観に来ていて、映画館のロビーで上映開始時間までのんびりとくつろいでいた。

そうしたら入り口から10代後半か20代前半くらいの若い女の子がやってきて、艦これの前売り券売ってますか?とスタッフに聞いている姿が目に入ってきたのだ。小耳をそばだてていると、前売りで買うと特典がついてくるけど、当館の会員なら当日券の方が安いとスタッフが説明していた。

そんな光景の一部始終を見ていたら、何となく前売り券が欲しくなってきた。よく分からない。あくびをすると他の人にあくびがうつるのと同じ生理現象だろうか。

そしていよいよ11月中旬に劇場公開となった。特に急いで観に行きたいとも思わず、それから一ヶ月後くらいに映画館に観に行った。

幕が開くと、何でも角川映画40周年記念作品との仰々しい文字が。え?記念作品艦これで良いの?確かに最近は深夜アニメの興隆著しく、ライトノベルも絶好調なイメージがある。だから艦これなのかなと思いながら映画を鑑賞した。もし角川春樹が現役なら、「天と地と」のようなエキストラをたくさん使った壮大でお金たくさん注ぎ込んだ映画が40周年を飾っていたかも知れない。

結論から言うと、乗れない。この手のアニメは大抵脚本がダメなのだ。艦娘にどう感情移入しろと。色々頭の中でひねくり返しましたよ。あっち側の敵さんに侵されて孤独を滲ませる睦月の心情。こっち側とあっち側は、現実でもどの世界にも存在する。しかしどうも乗れない。最後はハッピーエンドで終わった記憶があるのだけれど(映画が退屈だったので記憶が曖昧で良く覚えていない)、何というかとってつけたようなストーリーで、脚本家を養成する専門学校を出た人が書いたかのような、人を感動させるセオリーに則って書かれた感じのする、ありがちな感動物語だった。全く感動できなかったけれど。

深夜アニメが放送され始めたミレミアム辺り(2000年前後)のアニメはホント絵が酷くて、脚本も酷くて、アニメ専門学校の学生の卒業作品なんじゃないのかこれ?と思われるくらい酷い出来で、パースがむちゃくちゃだったり、アニメ絵が少し上手い中学生が描いたみたいなのだったりと絵も本も非常にお粗末なアニメが確かサンテレビ辺りで放送されていたのを一度見たことがあって、うわぁこりゃ酷いなぁと思いつつあれから15年くらい経つのだけれど、今はそんな中途半端な出来のアニメは皆無で、絵は綺麗で上手いし、ストーリーに関しては人それぞれ好みがあるだろうから置いておくとして、ハイレベルであることは確かだ。

劇場版艦これにしても、絵は素晴らしいし、白いミニスカートに眼鏡の可愛い動く鳥海が観れただけでも良かった。しかしやはりストーリーはつまらない。退屈してしまった。映画館で退屈するのは苦痛である。2時間近く同じ椅子にじっと座り続けなければならないのだから。この苦痛を和らげるのが、のめり込めるストーリーなのだが、残念ながら劇場版艦これには、その要素が微塵もなかった。

テレビ版艦これもレコーダーに撮るには撮っていたけれど観ずじまいで、操作を間違えて消してしまった。テレビ版を観ていれば劇場版艦これももう少し楽しめたのではないかと思ったが、そんなにストーリーが変わらないなら時間割いてまで観るまでもないかと思った次第。

Blu-rayのジャケットは本当に訴求力があって全巻揃えたいとすら思えるのだけれど、やはりアニメはストーリーも大切です。可愛いだけじゃダメです。

旧大日本帝国海軍の艦船を萌え擬人化したゲームが艦これな訳だけれど、僕自身10代の頃にコーエーの提督の決断シリーズを飽きるほどプレイしていて、提督の決断艦船ファイルという書籍も購入して今も手元にあるのだけれど、初めて艦これを知ったときは、遂にこのようなキャラクターが鋼鉄の殻を破り産まれ出てきたのかと、感慨もひとしおだった。本当今の若いオタクはイラストも綺麗で超絶可愛い萌えキャラクターの完成形に触れられるのだから恵まれている。僕も10代の頃に艦これのような完成された萌えキャラクターがひしめき合う萌え擬人化のゲームに出会いたかった。

劇場には10代の若い中学生か高校生風の男子もちらほらと見かけた。その男の子を観て、もし僕があの年代だったら、この退屈な映画からも刺激を受けたり感動したかもしれない。感想を聞いてみたい衝動に駆られた。

10代というのは感受性の強い年頃だし、この年代に触れて感動を覚えた作品が、その人の精神的支柱となり、この先歩むべき指標となり、後々の人生観にまで影響を与えるのだ。そういう意味では10代が羨ましいと、同じ年頃に一人で映画館に映画を観に行ったときにその映画から受けた感動を思い出していた。あの頃は触れるもの皆キラキラ輝いていた。映画館のエレベーターに、劇場カウンターに、奥に控えている綺麗なお姉さん達に、飾ってあるこれから観るポスターに・・・。今にして思えば、アイドル歌手が主演しているホラー映画で評価も芳しくないのだけれど、その時受けた感動は何となくではあるが覚えているし、新しい世界に足を踏み入れるような、楽しいひとときだったように思える。

この年になると、感動することがだんだん難しくなってくると痛感する。たくさんのアニメやマンガや本に触れすぎて感受性がすり減っていくのだろうか。それとも老化現象の性だろうか。脳科学者に解説して頂きたいものだ。

酷評になったけれど、パンフレットは上質で声優へのインタビューなど内容も充実している。とりあえず買い逃してしまったマックスファクトリーの大和のフィギュア再販されないかなぁ。