ここ8年間で5回程、花火撮影に赴いたことがある。今年はどういうわけか花火撮影に対して意欲が旺盛な筆者だ。TwitterのTL(タイムライン)に流れてくる他のカメラマン達が撮影した芸術の域に達した素晴らしい花火の写真を見ると、自分も撮りたくなってくるのだろう。花火を綺麗に撮る方法をおさらいしたのも、意欲を刺激した。花火を撮る為の機材は一通り揃っているのだから、最後のハードルは素晴らしい花火写真が撮れる場所を厳選するだけだ。
以前から気になっていたのが、他のカメラマンの花火撮影時のカメラの設定だ。花火は通常スローシャッターで撮影する。スローシャッターとは、文字通りシャッタースピードをスロー、ゆっくりにして撮る方法のことだ。
一般的な撮影ではシャッタースピードは1/125秒より速く設定するのがセオリーとなっている。スナップ写真など標準レンズを用いた一眼レフデジカメの撮影で手ブレしないシャッタースピードの最低数値として広く知られている。
花火撮影の場合は、カメラの設定をバルブモードに切り替えて行う。バルブモードにすることで、シャッターを押し続けている間、シャッター幕が開いたままの状態になる。露出は自分で決めるということだが、花火撮影の場合は、花火が打ち上がってから、空で大きく開いて、垂れていくまで、シャッターを押し続けることになる。
シャッターを押したり離したりする瞬間や押している間にカメラに伝わる衝撃、すなわち写真のブレを防ぐために、花火撮影の際には通常リモートスイッチを使用する。このリモートスイッチのボタンを押している間は、シャッターボタンを押し続けているのと同じ機能となる。
花火におけるバルブ撮影では、通常の撮影とは異なるシャッタースピードで撮ることが多い。6秒とか15秒とか25秒のシャッタースピードになる。
スローシャッターでの撮影は明るさを予想するのが難しい。実際に撮ってみないと分からない。おおよその予測を立てるためには、現場で経験を積み重ねるしかないのだろう。
とはいうものの、花火撮影でのスローシャッターの時間は、先述したとおり、花火が上がってから、空高いところで開き、萎んでいくまでの間だ。リモートスイッチを押し続けるタイミングは花火が決めてくれる。明るさはF値の上下で調整することになる。
F22に設定するか、NDフィルターを使うか
他のカメラマンの設定を見ていると、おおむねF7.1からF22にF値を設定している。筆者はだいたいF11まで絞って撮っていた。
単発の花火だと良いのだが、花火大会のラストの目玉であるスターマインを撮影する場合、F11では明るすぎて露出オーバーになってしまう。
通常フルサイズの一眼レフデジカメの場合、F11以上に設定すると小絞りボケが生じ始め、解像力がぼやけていくと言われている。しかし花火撮影でのカメラの設定方法を見てみると、F22まで絞るという意見が多い。
風景撮影の場合は、F22まで絞ることが多いようだ。回折現象が原因の小絞りボケによる解像力の低下と引き換えに、パンフォーカスで撮るということだろう。
それならばラストのスターマインの際には、小絞りボケが見られないF11の設定のまま、減光効果のあるNDフィルターをレンズに装着するという手があるなと、ふと思いついた。川撮影をする予定が立ったので購入し、予定が流れてしまいそのまま防湿庫に眠っていたのだ。
NDフィルターを使えば、数段分写真を暗く出来る。つまり露出オーバーになってしまいがちな長時間露光の撮影の際に装着すれば、昼間の撮影でも露出オーバーにならずに撮れるという事だ。
露出オーバーになりがちな、花火大会のプログラムのラストで、NDフィルターをレンズに装着すれば、F11の設定でも露出オーバーにならないのではないか。
通常レンズフィルターを装着すると画質が劣化すると言われているが、最近は高価なレンズフィルターも発売されているので、そう気にする必要もないかも知れない。一度実際に撮ってみないことには断言は出来ないが。
スローシャッターの際には、小絞りボケによる解像感の劣化を気にせずF22まで絞るか、多少の画質の低下を気にせずNDフィルターを装着してF11で撮るか、2つの選択肢があるということだろう。