ISO感度 – 一番簡単に写真の明るさを調整できる機能

ISO感度12800で撮影した夜桜の写真
Canon 1DX + Otus1.4/85。ISO感度12800、シャッタースピードはギリギリの1/100秒、開放F1.4で撮影。大画面のパソコンで見ると十分綺麗に鑑賞できるレベル。

ISO感度は他の2つの設定、F値やシャッタースピードと比べると単純明快な機能だ。ISO感度を上げると写真が明るくなる。下げると暗くなる。それだけのことである。

F値やシャッタースピードがその取り扱いや導き出される表現に至るまでの思考過程が複雑であるのに対し、ISO感度は至ってシンプル。写真の明るさを調整できる機能だ。他の2つのカメラの設定と異なり、それ以外には出来ないとも言える。F値は明るさと暈けの量、画質を調整できる。シャッタースピードは明るさと描写を調整でき、手ぶれを防止させる。ISO感度の役割は明るさの調整だけ。

ISO感度を上げるとノイズが生じる。喩えるならラジオの音量を上げるようなものだ。ラジオの音量を調節するツマミを回せば音は大きくなるが同時にノイズも聞こえてくるようになる。ISO感度も上げると写真にノイズが出てくるようになる。

センサーサイズやカメラの機種によるノイズの量の違い

ノイズの出具合は、カメラによる。APS-C機よりもフルサイズの方が、ISO感度を上げてもノイズの量が少ない。同じフルサイズでも古いカメラと新しいカメラでは、高感度撮影でのノイズの量は異なってくる。やはり最新のカメラの方がノイズの量が少ない。また同じ年代のカメラでもメーカーによって異なってくる。裏面照射型CMOSを採用しているソニーの一眼カメラは他社のカメラよりも高感度撮影でのノイズ耐性に秀でている。サンプルを見たが粘り強い、なかなかノイズが乗らない。

だから一概にISO感度1600だから、ノイズが多いから写真が使い物にならないとか、逆にノイズが出にくいなどとは言えない。カメラによって高感度撮影時のノイズの量は異なる。

ISO感度8000で撮影。等倍で見てもディテールはそれ程損なわれていなかった。

カメラやRAW現像のノイズリダクション

またJPEGモードで撮影している場合は、カメラ内でノイズ処理をして写真に乗るノイズを低減してくれる。対してRAWモードで撮れば、ノイズの低減具合は後からRAW現像ソフトの処理で自分で決めることが出来る。キヤノンのカメラには高感度撮影時のノイズ低減という機能も付いているし、カメラ側でもノイズ低減の度合いを調整することが出来るが、RAWデータで撮影しておいた方が、細かくノイズ処理の度合いを調節することが出来る。

つまりカメラだけでなく、RAW現像によってもノイズの量、見え方は異なってくる。

ノイズには輝度ノイズと色ノイズがある。輝度ノイズは星屑のように粒々、色ノイズは青や赤のムラのあるノイズのことを言う。高感度撮影で目立ってくるこの2つのノイズを、RAW現像ソフトで或る程度消し去ることが出来る。

RAW現像ソフトのノイズリダクションの性能による違い

更にはRAW現像ソフトによっても、ノイズ処理の性能は異なる。DxO PhotoLabのPrimeというノイズ処理機能は、Canonの純正のRAW現像ソフトと比べ、超高感度撮影のノイズを綺麗に低減してくれる。しかし高性能な分だけ、処理能力の高いパソコンが要求される。低スペックパソコンでこの機能を活用しようとすれば、処理にかなりの時間を要することだろう。

DxOの独自のノイズ処理機能、PRIMEを適応。他のノイズ処理よりも格段に美しい描写になった。
DxOの独自のノイズ処理機能、PRIMEを適応。他のノイズ処理よりも格段に美しい描写になった。

超高感度撮影のノイズでも超綺麗な写真に変身!DxO OpticsProのPRIME機能徹底比較!

ノイズが多い写真だからといって悪い写真とは限らない。あまりにもノイズで潰れている写真は使い物にならないかもしれないが、そこそこのノイズなら問題ないだろう。要は程度の問題だ。高感度撮影の写真のノイズに低減処理を施せば、当然描写は潰れる。ノイズの量や描写の潰れ具合をどこまで許容できるかがISO感度を上げる際の論点となる。

ISO感度を上げて明るさを調整するのは最後の手段に取っておく

しかし意図的な表現を除けば、写真には不要なノイズが乗らないに越したことはない。そこでISO感度を上げて明るさを調整するのは最後の手段として取っておく。

まずはシャッタースピードでなんとかならないか試してみる。手ブレしないシャッタースピードのセオリー1/焦点距離×2(秒)より遅くならないように心がけつつ、フィルムカメラ時代のセオリーと言われている1/焦点距離でも手ブレしないか試してみる。しかし手ブレは写真の描写に致命的な瑕疵を与えるから、手ブレを避けるためには、なるべくシャッタースピードに余裕は持たせておいた方が良い。

限界を感じたら、次にF値を調整する。具体的に言うと、F値を小さくして明るく写るようにする。しかしもちろん開放F値で撮るよりも、F8やF11に設定して背景を暈かさなかったり被写体を解像感溢れるシャープな絵作りにしたい時だってあるだろうから、そこへのこだわりは軽々しく譲ってはいけない。

この2つの設定でどうにも明るさが足りなければ、最後にISO感度を上げて明るくする。

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カメラ以外の機材で明るさ調整を補助する

写真の明るさに関しては他にも対処方法がある。F値の小さい単焦点レンズを使う、ストロボを使う、三脚を使うといった方法が上げられる。しかしそれらの方法はカメラで出来る設定以外の対処法となるから、手元になければ対処しようがない。単焦点レンズを持っていない、ストロボを買うお金がない、三脚禁止の場所など理由は様々だ。純粋にカメラだけで明るさを調整するなら、最後はISO感度を上げることを惜しんではならない。

ISO感度でストロボ光の明るさも上げることが出来る

ISO感度は写真全体の明るさを上げる事が出来る。F値も写真全体の明るさを上げる事が出来る。しかしシャッタースピードは遅くしてもストロボが当たっている被写体を明るくすることが出来ない。

ストロボを使った撮影をしていて明るさがどうにも足りなくて困ってしまった場合は、シャッタースピードを調整するのではなく、ISO感度を上げたりF値を小さくすると手っ取り早く明るく出来る。実際にストロボの出力が上がるわけではない。自然光の当たっている部分がISO感度を上げることで明るくなるように、ストロボ光が当たっている部分やストロボの光を明るく写すことが出来る。

ISO感度は写真全体の明るさを調整することが出来る。覚えることはこれだけ。至ってシンプルな機能だ。

開放F値の大きい超望遠レンズではISO感度が明るさを決める上で重要

シンプルな解説だけだと物足りないかもしれないので、少しだけ違う角度から付随的にISO感度について考察してみる。

高速シャッターで撮りたいシーン、例えばF1やスポーツ、競馬撮影などのシーンでは、超望遠レンズを使うことが多い。超望遠レンズは他のレンズと比べると、同じ開放F値でも高くなりがちだ。同時に望遠になればなるほど60万円、100万円、150万円と値段も高くなる。

そこで10万円から15万円程度の安い超望遠レンズを使ってコスパを求めるのだが、同時にそれは画質とのトレードオフになる。400mmのレンズとなると開放F値がF5.6と大きく、更にシャッタースピードも1/800秒以上と、手ブレしないように設定しなければならないから、写真が暗くなり、ISO感度を上げる必要に迫られるのがその原因だ。あとは使用している素材の影響もあるだろう。

どちらにしても1/800秒以上という高速シャッター、激しく動くスポーツ撮影では必然的にそのシャッタースピード以上に早く設定することになる。すると明るさを求めるためには、F値に頼るかISO感度に頼るか、或いは気まぐれな天の恵みである太陽に頼るしかない。

最終的に手っ取り早い明るさ確保の方法がISO感度になる。

ISO感度まとめ

  • ISO感度を上げると写真全体を明るくできるが、ノイズ( ≅ 画質)とトレードオフの関係にある。
  • ISO感度を上げることでストロボ光も明るくすることが出来る。
  • カメラ内のノイズリダクションで或る程度ノイズは目立たなくすることが出来る
  • RAW現像ソフトにより高感度撮影でも画質の破綻を避けながらノイズ処理をすることが出来る。