標準レンズと広角レンズの表現の違い – 遠近感を探る

広角レンズで遠近感の効いたダイナミックな写真を撮る。
広角レンズで遠近感の効いたダイナミックな写真を撮る。

標準レンズと広角レンズでは印象の異なる写真を撮る事が出来る。レンズを付け替える、もしくはズームレンズを使うことで、同じシーンでも幾通りもの写真が撮れる。

まずは焦点距離55mmで撮影した写真。いわるゆ標準域のレンズでの撮影。3人とも真っ直ぐに写っているし、背景も真っ直ぐな形で入っている。

焦点距離55mmで撮影。
焦点距離55mmで撮影。

焦点距離24mmで撮影した写真。いわゆる広角域。両側の壁が写るようになったので、パースの効いた写真となった。被写体に近づいて撮ったために、前の忍者は大きく写っているが、後ろの2人は小さめに写っている。つまり遠近感が生じている。3人の大きさのバランスが崩れたことでダイナミックな写真になった。

焦点距離24mmで撮影。
焦点距離24mmで撮影。

厳密に検証するなら、55mmのレンズでも同じ横構図で撮れば良かったのだろうが、ブログの記事を書くために写真を撮りに行っているわけではないので、手元にある写真で考察していく。

このような細い場所で標準レンズを使って3人のフォーメーションで横構図で撮ると、どうしても両脇に手持ち無沙汰な空間が空く。そこで自然と縦構図で撮る事になる。広角レンズを用いた場合は、横構図で撮ることで両脇の壁を入れることが出来、広々とダイナミックな写真を撮る事が出来る。縦構図だと両脇の壁を切ってしまう。悪くはないが、せっかくなら遠近感の効いた写真が撮りたいからこのような場所では自然と横構図になる。

2,3人の集合写真を撮る場合、標準レンズは縦構図で撮りがち、広角レンズは横構図になりがちな理由はこの辺りにありそうだ。

標準レンズで横構図で撮ると両脇の空間が手持ち無沙汰になるのなら、広角レンズで横構図で撮っても手持ち無沙汰になるんじゃないの?という疑問が湧く。広角の場合は被写体に近づくことで奥へと続く壁にも遠近感を出すことが出来るから、両脇が良い仕事をしてくれる。標準レンズで撮ると壁が真っ直ぐになってしまう。

では広角レンズと同じ範囲で下がって撮ってみたらどうだろう。作例がないから想像の翼を広げて検証してみることにしよう。50mmのレンズで24mmのレンズと同じ範囲で撮ろうとすれば、撮影者は被写体から距離を取ることになる。被写体との距離が生じるから、被写体が小さく写ることになる。尚且つ、圧縮効果によって遠近感が弱まるから壁が真っ直ぐ律儀に写る。広角レンズなら被写体に思いっきり近づけるから、被写体をアップに撮りつつ、被写体と背景の大小が異なってくるので、遠近感が効く。一点に消失する両脇の壁にも手前から奥にかけて大小のアクセントが付く。

惜しむらくは55mmで厳密に撮り比べしなかったので、この説を証明できない。実際に横構図で撮れば、両脇の壁を生かしたそこそこ遠近感のある写真が撮れたのではないか。標準レンズだと壁を広く取り込みづらいし、かといって引きで撮れば被写体が小さく写ってバランスも悪くなるし、道のようにそんなに長くはない壁なので、横で撮るなら敢えて壁を切り取って縦構図で、この場所なら広角レンズを使って壁をたくさん取り込んだ方が遠近感が出るのではないかという思考が働いたという事だろう。

被写体と背景の大きさの比率の違いは被写体とカメラの距離で決まる

最近三脚を使って風景写真を撮っていると、或ることに気づいた。同じ場所からズームレンズで風景を撮影した場合、24mmから11mmに変えると、更に広く写る。当たり前のことだが、今までの認識と異なっていたのは24mmのフレームで写っていた部分はそのままの姿で残しつつ、更に周辺を広く写してくれるという点だった。

逆に考えると、11mmから24mmに変えた場合、写る範囲は狭くなるが、写真に残っているメインの被写体の部分は11mmで撮った写真と姿形が変わらないという事だ。厳密な比較は労力を要するのでまた別の機会に譲るとして、これを今回の作例に当てはめると、被写体とカメラマンの距離が同じで三脚を使って固定し、ズームレンズで人物を収めて撮れば、50mmで撮ろうが24mmで撮ろうが、人物自体の描写や人物と背景の大きさの比率は変わらないという事になる。では何が変わるのかといったら、人物の周辺の写る範囲が広くなったり狭くなったりする。広くなると横の壁が写るので遠近感が出る。だが実際には被写体と背景との描写は瓜二つだから、この二つの遠近感はそこだけ切り取ってみれば変わらないことになる。

広角で撮っても望遠で撮っても被写体とカメラマンの距離が同じなら、例えば被写体の奥へと続く道も同じ描写になるという事だ。広角で撮れば遠近感が出せるとテンプレのように思い浮かぶが、実際には撮影者が同じ立ち位置なら、24mm広角レンズで撮っても200mm望遠レンズで撮っても、主題の被写体に対して一点に消失する道の描写は変わらないことになる。

望遠レンズでも一点に消失する道を撮る事が出来る

別の言い方をすれば、別に広角レンズで無くとも、望遠レンズで離れて撮れば一点に道が消失する遠近感のある写真が撮れるという事になる。

焦点距離70mm
焦点距離70mm
焦点距離70mm
焦点距離200mm
焦点距離200mm
焦点距離24mm
焦点距離24mm

被写体と背景の遠近感を大きくするには被写体に近づいて撮る。すると背景が小さく写り、遠近感が強まる。

主題の被写体と背景の大きさの違いは、レンズの焦点距離ではなく被写体とカメラとの距離で決まる。この点は圧縮効果と同じだ。また同じ立ち位置で望遠から広角に変えると、今まで切り取られていた手前の風景が入り込むので、遠近感が強くなる。