綺麗な花火の写真を撮るためのカメラの設定と撮影方法

花火を綺麗にかつ芸術的に撮るためのカメラの設定。
花火を綺麗にかつ芸術的に撮るためのカメラの設定。

前回までの記事で、花火撮影に必要な機材と、撮影場所の探し方、場所取りの方法について解説してきた、今回は花火の撮り方を解説していく。とりあえず手っ取り早く撮り方を参照できるように、基本的な事を箇条書きにして、以下で詳しく解説していく。

  • 三脚にカメラを載せ、水平をきちんと取る
  • 明るい内に花火発射位置にピントを合わせる
  • RAW撮影が理想。分からない場合はRAW+JPEGで
  • バルブモードに切替
  • リモートスイッチをカメラに装着
  • F値は基本F11〜F14
  • ISO感度は最低ISO感度100
  • 花火大会のプログラムを確認
  • 事前にYouTubeなどの花火大会の動画でシミュレーションしておく
  • 打ち上がってから、花火がしぼむまでシャッターを開ける

構図を決め、水平を取る

夜景を入れる花火では、夜景のビル群が傾かないようにしっかりと水平を撮る。
夜景を入れる花火では、夜景のビル群が傾かないようにしっかりと水平を撮る。

まずは三脚にカメラを取り付けて、構図を決める。前回に来たことがある花火大会の場合は、自分の撮影した花火を見ながら、花火がはみ出ないように構図を決める必要がある。初めての場所の場合は、インターネットで当該花火大会の花火を検索して大体どのくらいの高さまで花火が上がるかを検証する。

次に花火以外に何を入れるかを決める。例えば花火を観覧している人たちの後ろ姿を入れるのか、それとも花火だけを入れるのか。山やビルなどの高い場所から撮影している場合は、夜景をどれくらい入れるのか、どれくらいの大きさで花火を入れるのか。花火を大きく・夜景は少しか、花火を小さく・夜景をいっぱい入れるか、ということを決めていく。

経験から言うと、夜景をたくさん入れて花火を小さく写すと迫力に欠けてしまうことが多い。葛飾北斎の有名な、小さく写っている富士山の浮世絵「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」があるが、アレを真似て花火を小さく撮ると、どうも迫力がない。また花火を小さく撮ると、等倍で見た時に花火の光線がギザギザの描写になってしまう。やはり花火は大きく撮った方が良いのではないだろうか。高画素機ならトリミングという手法もあるが、あまりにも小さく写っている花火はやはりギザギザが目立ってしまうことになりかねないし、大きく撮った時よりも描写力がいまいちになるので、大きめに写すことをオススメしたい。

水平をしっかりと取る。最近はカメラにデジタル水平気がついているので、利用すると簡単に水平を撮れる。自由雲台の三脚の場合はコツが必要だが、3WAY三脚は簡単に水平が取れるし、構図の微調整もやりやすい。

特に夜景を入れて花火を撮る場合は、水平をしっかりと撮っていないと傾いた写真になる。後からPhotoshopなどで傾きは修正できるが、その分画素数が減るので、水平は現場できっちりと取っておきたい。傾いた写真の後処理は緊急処置という心構えで撮影に臨もう。

JPEGかRAWモードか

白飛びの回復も考えると、花火はRAWモードで撮った方が無難。
白飛びの回復も考えると、花火はRAWモードで撮った方が無難。

撮影モードはJPEGかRAWどちらが良いかという議論は長年続いている感がある。花火ごときでRAWなんて、と言っていたご老体もいた。筆者としては、色彩豊かな花火撮影こそRAWで撮るべきだと考えている。撮り直しがきかない一期一会の花火大会、露出に若干失敗した場合には、RAWで撮っておけば、JPEGよりも明るさを綺麗に修正できるし、ホワイトバランスに迷った場合でも、RAWで撮っておけば画質を劣化させることなく現場と同じ要領でホワイトバランスを変更でき、いろんな色の花火に仕上げることが出来る。

花火撮影は、現場で色味を決めるよりも、家に帰ってから現像でじっくりと詰めていく方があっているのではないだろうか。

というのも花火撮影は、他の撮影と比べて慌ただしい。花火は次から次へと上がり待ってくれない。仮に花火がフレームからはみ出すようなら構図を決め直して水平を撮り直さなければならない。何時何分からどのような花火が上がるのか、プログラムにも目を通しておく必要がある。つまりやることが多い。多いのに一瞬で花火は終わってしまう。ならホワイトバランスやピクチャースタイルなど、RAWで撮っておけば後から画質を劣化させずに変更できる事は、後でやるということにして負担を減らすことで、他の重要な現場での撮影事項に意識を集中できる。現場徹底主義を貫いてカメラの設定を変えている間にフォトジェニックな花火が打ち上がってしまっては、本末転倒となる。写真はシャッターチャンスが最も大事だ。

もしRAW現像できる環境にないのなら、RAW+JPEGで撮影する方法もある。容量は増えるが、花火大会は大体1時間で、撮影枚数は200枚前後。32GBのメモリーカードで十分事足りる。

ピントの合わせ方

花火の発射位置にピントを合わせる。
花火の発射位置にピントを合わせる。

昔は初めの花火が上がった時にライブビューで見ながらピントを合わせていたのだが、最近は明るい内にライブビューで花火が上がる地点にピントを合わせるようになった。

花火の打ち上げ台にピントを合わせる。
花火の打ち上げ台にピントを合わせる。

ただこのやり方だと、花火の発射地点が見えない場合にはどこにピントを合わせたら良いのか迷うことになる。そういう場合はやはり初めの花火が打ち上がった時にライブビューモードにして、マニュアルフォーカスに切り替えて手動でピントを合わせるのが現実的ではないだろうか。

明るい内は他の風景なども撮影したいという人もいるだろうから、花火開始1時間前位に場所取りした場所に戻ってピントを合わせるのも良いだろう。

暗くなってからではピントは合わせづらい。露出シミュレーション機能が付いているカメラなら、カメラの設定を明るくすれば、暗闇が明るくなり見えないこともないが、性能はカメラにもよるので、明るい内にピントを定めておきたい。

ピントを合わせる時は、ライブビューに切り替え、レンズ側もマニュアルフォーカスに切り替えて、拡大表示させて、カッチリと合わせる。明るい内はAFで合わせて、レンズ側でマニュアルフォーカスにスイッチを切り替得るのもアリだ。

ピント合わせが終わったら、ピントがずれないようにマスキングテープで固定しておく。

カメラをバルブモードにする

花火撮影は基本バルブモードで撮る事になる。

バルブモードにすることで、シャッターを押し続けている間、シャッター幕が開きっぱなしになる撮影をすることが出来る。

時間差で打ち上げられる複数の花火を一枚の写真に収めたい時、また花火が打ち上がってから夜空に花開いて、光線がゆるゆるとと落ちてくるまでを捉えたい場合にバルブモードは有効だ。

シャッタースピード優先モードは、花火が打ち上がってから花開いてしぼむまでにどれだけの時間がかかるか予測不可能だから現実的ではない。シャッタースピードを自在に決める即興性に優れたバルブモードで撮影するのが、花火撮影の王道となる。

F値は基本をF11〜F14に据える

200mm | F10 | 13.7s | ISO100
200mm | F10 | 13.7s | ISO100

F値は基本をF11〜F14に据え、暗いようならF値を下げ、明るいようならF値を上げていく。

F値を小さくすると夜景なども明るくなるが、同時に花火も明るくなる。バルブモードで長秒露光で撮影するので、単焦点レンズで開放F値で撮ろうものなら花火が白飛びしてしまう。

F値を決めるのは難しいところではある。F20など余り絞りすぎると、夜景が暗くなってしまう。後処理で夜景部分だけ明るくも出来るが、ノイズが出やすくなる。かといって逆にF値を小さくすると、今度は花火が白飛びしやすくなる。こればかりは経験と勘によるしかないのだろう。どのようなジャンルもそうだが、経験の積み重ねが上達の近道だ。

 200mm | F13 | 11.7s | ISO100
200mm | F13 | 11.7s | ISO100

花火の打ち上げ場所と撮影距離によっても明るさは異なるようなので、白飛びしないF値を選ぶと良いだろう。

ISO感度は100

バルブモードで長秒露光で撮る事になるので、ISO感度は最低の100に設定しておきたい。これ以上上げると花火が白飛びしやすくなってしまう。カメラによっては最低ISO感度が200の製品もあるだろうから、その場合はISO感度200で。明るくなった分はF値で調整する。

シャッタースピードはあまり意識する必要はない

バルブ撮影を行うので、シャッタースピードは余り意識しなくて良い。打ち上がる花火に合わせて決まってくるが、バルブ撮影なのでシャッタースピードを明確に設定する必要はない。

シャッタースピードは8秒の写真もあったり、10秒12秒もあったり、22秒もあったり、50秒もあったりと、まちまちだ。結局花火のプログラムによる。次々と打ち上がる花火を一枚の写真に収めたかったり、白飛びしそうだからこの辺でシャッターを閉じておいたりといった撮影者の意図によりシャッタースピードは自在に変幻する。他人の撮った写真のシャッタースピードを参考にする場合には、目安程度に捉えておくと良い。

花火大会のプログラムを確認しておく

花火大会によっては公式サイトに花火のプログラムを掲載しているところもある。何時何分にこんな花火が打ち上がるといった事が記載されている。時間を知っておけば、次の花火が打ち上がるまで多少時間があるということが分かり、その間にカメラの設定やフレームなどを変更出来る。

YouTubeなどで花火撮影の動画を確認してシミュレーションしておく

毎年花火の演目は変わるかも知れないが、そうガラッと大きく変わることは恐らくないだろう。YouTubeで撮りに行く花火大会の動画を確認して、バルブ撮影のシミュレーションをして体に叩き込んでおくといい。花火は次に何が上がるか予測不可能だが、動画を見ることでどのような花火が上がるかを知ることが出来る。一発撮りでたくさんの花火を入れて理想的な絵に近づけたい場合には、このシミュレーショは特に有効だ。

バルブ撮影のタイミング

200mm | Bulb | F13 | 16.5s | ISO:100
200mm | Bulb | F13 | 16.5s | ISO:100

花火が打ち上がったらリモートスイッチのボタンを押し続ける。もしくは押してロックを掛ける。リモートスイッチの使い方は取扱説明書で確認しておく。

花火が夜空に花開いて、最後まで落ちて消えてなくなったら、リモートスイッチのボタンを放す。基本はこの撮り方で問題ない。

しかしタイミングが合わないこともある。余り完璧主義になりすぎると逆にうまくいかないこともあるだろうから、ドンドン撮っていくと良いだろう。

余り花火を入れすぎると白飛びしてしまう

リモートスイッチのボタンを長く押し続けると、花火が同じ場所に上がって重なり、場合によっては白飛びしてしまうこともある。花火の明るさに寄るのかも知れないが、あまりにも同じ場所に同じ花火がたくさん打ち上がり続けると、白飛びしてしまうんじゃないだろうかという意識が芽生え、シャッター幕を閉じたくなる。この当たりは個々の研究が必要なようだ。また時間があれば過去の撮影した花火を作例に検証していきたい。