メジャーな観光名所を背景にポートレート写真を撮る難しさ

嵐電嵐山駅の名所。
嵐電嵐山駅の名所。

コスプレ撮影はここ5年ほどで数をこなしてきたのだけれど、ポートレート撮影というのはあまりやったことがない。とはいっても、コスプレも野外やシェアスタジオなどで行うので、ポートレート撮影と撮り方はそんなに違わないと思われる。コスプレ撮影でも、所謂キャラの私服を撮るという事がある。アニメ雑誌などに掲載されているイラストに、流行のファッションを身にまとって洒落た街並みを歩いているアニメや漫画のキャラ達の姿がある。それらをコスプレで再現するので、当然ポートレートと似たような撮影にある。

ポートレート撮影と言えば見栄えの良い可愛い女の子を、順光・逆光などの光の角度と性質を駆使して撮影する、または元気いっぱいの女の子の姿を撮るなど、型に填まらない多様な表現方法で撮ることになるので、まぁその点から言ってもコスプレ撮影とあまり変わらない。コスプレ撮影の場合はストロボを使った特殊な表現を用いることが多々あり、機材が結構な数になる。自身のポートレート撮影はあまりそういった機材を持ち込んで撮る事は少ない。一般的にもどちらかといえば女の子をあまり面倒くさいことはせずにその場にある自然光や綺麗な背景や眩しいハウススタジオの雰囲気を生かして撮るのが主流ではないだろうか。大体ポートレートで検索したり、カメラ雑誌のポートレートのコーナーを開くと、そういった写真の比率が高い。

ポートレート撮影において、女の子の魅力を引き出すにはどのように撮れば良いか。

  • 女の子を褒めて表情をほころばせる。
  • 会話をしてアイデアを引き出す。
  • 背景をボカす。
  • 構図を吟味する。

この当たりのことがパッと思い浮かぶ。後はいつも様に光の入ってくる方向を読んで、モデルにどちらに向いて貰えれば、どのような質感の表現になるかを考えながら撮れば、モデルの魅力を引き出せるのでは無いか。

しかし実際に撮っているときとなると、慌ただしくて、それらのことが疎かになりがちだ。

先日、観光名所でポートレートを撮ることになり、2週間ほど前に一度訪れた場所だったけれど再度赴くことになった。前回訪れたときは新緑の風景写真を撮っていた。彼方此方に足を伸ばし、この場所ならきっといいポートレートが撮れるだろうなという事も考えながら撮っていったのだが、さて実際ポートレート撮影の依頼が舞い込んで現地に赴いてみると、これが難しい。

嵐山は京都を代表する観光名所。
嵐山は京都を代表する観光名所。

観光名所なので、当然背景に定番の観光名所が入っていなければならない。ということは、光を駆使する点は二の次にされる。背景の山や鳥居、壮大な木々や参道を動かすわけにはいかない。

この日はあいにくの曇りだったが、観光名所で撮るという事になれば、モデルの顔の向きが固定されがちになるので、曇りはポートレート撮影には最適なのではないか。どの方角に向いて貰っても光が綺麗に回るので肌が綺麗に撮れる。これがピーカンの日であれば、逆光ならまだふんわりして顔にも影が落ちずに良いが、順光なら顔に強い影が落ちて、ポートレートとしては及第点に至らなかったのではないだろうか。

問題は逆光でモデルを綺麗に撮るにしても、露出を上げることになるから、背景にある肝心の観光名所の景色が飛んでしまう点だ。以前富士山の見える河口湖で中国人の女性ふたり連れに写真を頼まれたが、逆光状態だったので、二人の顔が暗くて写っていなかった。仕方なしにその時は半順光状態になるよう向いて貰って撮った覚えがある。

また背景を入れるにしても、暈かしたら良いのか、クッキリと撮ったら良いのかという問題がある。暈かして撮ればせっかくの観光名所がどこにでもある背景になってしまう恐れがある。極端に例えると、緑の小高い山を暈かせば、それは六甲山でも嵐山でもどこでも良いという話になる。まぁ周りの景色がそれとなく分かれば、大体この景色がどこであるかは掴めそうではあるが。嵐山を暈かしてもその手前を渡月橋らしきものがキラキラと丸ボケの連なりの形で写っている。故にボカすかクッキリ写すかに迷うのだが。

かといってクッキリと撮れば、今度は別の問題が生じる。他の観光客が写りすぎる。実際観光名所なので、人が恐ろしく多い。他人が写り込みすぎてせっかくのポートレートが雑になってしまう。同じように写真を撮って貰っていた中学生男子数人などが写っていた。結婚式の前撮りサービスでは、そういった映り込みはPhotoshopで消してしまうのだそうだ。

新緑萌える嵐山と渡月橋。
新緑萌える嵐山と渡月橋。

嵐山なら渡月橋がハッキリ写ると、分かりやすい串刺し構図になりやすい。気にしない人は気にしないが、気にする人は気にする。特に自身もカメラをやっているという人は、カメラマン目線で写真を見るので、これは串刺し構図だなと意識してしまう。

後は撮る場所も限られるし、その枠内の中でモデルを上手く配置して、観光名所が風景写真における最高に理想的な構図で背景にある中、モデルがいい配分で写るようにしなければならない。ということで、あまり訪れたことのない観光名所でポートレートを撮るというのはずいぶん難しいなと実感した。

となるとどのように撮れば良いか。最近京都では数人の中高生たちがタクシーの運転手を連れ添って歩いている光景をよく見かける。あれこれと観光名所について解説し、中高生たちに渡されたカメラで写真も撮ってあげている。ということは、タクシーの運転手達がやっているような感じで撮れば良いという事だろうか。

観光名所でのポートレートを上達するには、どのような方法が考えられるか。これはやはり上手い人の写真を参考にするしかない。観光名所の人物写真で上手い人といえば、やはり関西ウォーカーなどの旅の雑誌や、結婚式の前撮りサービスの写真だろう。同じ場所で経験を積んだカメラマンの撮った写真だから、上手くない訳がない。

絶対に背景に入れなければならない超メジャーな観光名所で無ければ、光を駆使することが出来る。やはりそういった撮影は楽しい。自分の思い通りの写真が撮れる一方で、意外な写真が撮れたりする。

普段から光を駆使することばかり考えて写真を撮っていると、こういう観光名所を背景に入れて撮らなければならない記念写真を上手く撮るときに戸惑ってしまう。それはそれで写真の多様性でもあるから楽しいのだけれど。

嵐山の有名な竹林の路。
嵐山の有名な竹林の路。

光を駆使するといえば、この日はほとんどが曇り空で太陽が出ていなかったのでおそらくは晴れの日よりは撮りやすかった。しかし、パソコンにデータを取り込んでみると、モデルの肌の血色が薄い様に感じられた。

モデルが写真をアップロードした暁には、キヤノン機で曇りの日にポートレートを撮るときに、薄くなりがちな肌の色を健康的な色に撮るカメラの設定とお手軽なRAW現像を探っていきたい。