桜紀行2018 第4回 〜松本城・河口湖から臨む富士山・新倉山浅間公園・富士山本宮浅間大社・梅小路公園〜

新倉山浅間公園から臨む富士山。
新倉山浅間公園から臨む富士山。

11日目 松本城 河口湖から富士山を臨む

信州の地に偉容を誇る松本城。
信州の地に偉容を誇る松本城。

この日は青春18切符は使わず、iPhoneのSuicaでいくことに。しかしJR伊那市駅にはICリーダーの改札がなく、現金で切符を買う。すべてiPhoneでなんとかなると思っていたから現金をあまり持ってきておらず、お土産なども買い財布に5000円しか入っていない。郵便局のカードはあるから、その辺の郵便局のATMで引き出せば良いのだが、なんだか面倒くさい。まぁなんとかなるだろうということで、南松本までの切符を買い電車に乗り込んだ。

映画「orange オレンジ」の聖地でもある弘法山古墳の丘に咲く桜を雪を被ったアルプスを遠景に撮りたかったのだが、天気はあいにくの曇り。しかも空が霞がかっていて肝心のアルプスが見えない。歩いて30分もかかるし徹夜明けで体力がどうも残っていないし、重い荷物を担いで3時間半も歩いたせいか右肩に激痛が走り、歩く気力が起きない。アルプス遠景に撮れないし天気も悪いなら今回は諦めるかと言い訳して、そのまま次の駅の松本へ向かう。早朝で高校生達の集団が乗り込んできてなんとも窮屈。座れているから良いが大きいリュックを膝の上に置く。多分途中で20分ほど寝ていたのか不思議と体に疲れはない。

「松本〜、松本〜」という昭和風の女の声での駅のアナウンスに風情がある。電車が到着する度にこのアナウンスがかかり、昭和の時代にタイムスリップしたかのような情緒溢れる声。

目的は松本城。空はあいにくの曇り。歩いて18分ほどで着いた。城郭写真の撮り方の本を電車の中で読んでいたので、曇り空でも異様な城を撮れるという意識はあったが、どうも難しい。桜も散ってしまっていた。家に帰ってから松本城と桜の写真を見たのだが、こんなに豪勢に咲いていたのかと思うと、来るタイミングを逃したと言わざるを得ない。

まだ残っていた桜と松本城を写真に収める。
まだ残っていた桜と松本城を写真に収める。

しかし、戦国時代好きとしては、松本城、元は武田信玄が信濃経営の拠点とし、あの不死身の鬼美濃で名高い馬場信春の居城深志城であったことを思えば、そして徳川家を出奔し豊臣家に靡いた家老級の石川数正の居城であったことを思うと、徳川の抑えとして秀吉が重要視したという深い歴史が刻まれたこの城を前にして、遂にこの黒色の偉容な城と出逢えたことに桜の満開の時期を逃した徒労感も吹き飛び、曇り空ではあってもむしろ感慨深かった。天守閣にも登り、気さくな警備員の風景の解説も聞けて、満足できた。全体的に歓迎ムードの高い城だった。

庭園内より松本城を臨む。偉容でありながらも上品な佇まい。
庭園内より松本城を臨む。偉容でありながらも上品な佇まい。
城というのは一つの場所にありながら、見る場所によって変幻自在に姿を変える。
城というのは一つの場所にありながら、見る場所によって変幻自在に姿を変える。

さてきびすを返し、松本市街の珍しいビルなども撮影して、一気に河口湖へと向かう。ここからは楽な方で、乗り換えは2度。大月駅で富士急行に乗り換え終着の河口湖へと一気に向かう。この日のJRの交通費は総額4000円くらいだっただろうか。18切符を使うヶ所を間違えた。和歌山行きでは使うべきではなかったが、突発で立てた予定なので仕方がない。

河口湖まで歩いて行くことにした。着くのは徒歩で15分と駅前の案内員の女性が教えてくれたが、桜の名所へは1時間ほどかかる。バスで行けば良かったかと思ったが混雑していてどれに乗れば良いのかよく分からない。大橋は風が強く油断していたら落っこちてしまうんじゃないかというほど。しかし富士山、遂に間近で見ることが出来た。思っていたよりも大きい。

遂に桜の名所に辿り着き、念願の富士山を桜とのコラボレーションで撮っていく。弘法山古墳を諦めた見返りとして河口湖での撮影時間を確保できた。まさにトレードオフだ。

富士山と桜。夢の共演。
富士山と桜。夢の共演。
アップ目に富士山を撮る。
アップ目に富士山を撮る。
夜桜と富士山。河口湖畔の夜景も。
夜桜と富士山。河口湖畔の夜景も。
念願の星空と富士山の共演も写真に収めることが出来た。
念願の星空と富士山の共演も写真に収めることが出来た。

満開の時期に来られて良かった。念願の富士山と星空も撮れた。富士急ハイランド駅近くのホテルのチェックインの時間もあったので、あまり枚数は撮れなかったが。当初の計画では1度チェックインしてからまた再び戻って朝方まで撮ろうかとも考えていたのだが、歩いてみて分かったのは1時間の距離が長くて荷物が重いので疲れる。それにいつ寝るんだ?ということだった。確か当初の予定では夕方6時にチェックインして5時間ほど仮眠を取って、夜中に河口湖に向かうという計画だったが、富士急ハイランドの駅から歩くのはなおさら大変だろうということで断念した。それにシャワーを浴びてゆっくりと寝たい。

12日目 新倉富士浅間神社 JR甲府駅

ゆっくりと睡眠も取れ、朝6時半にチェックアウトして、有名な富士山の撮影スポット、新倉富士浅間神社へ。富士急ハイランド駅から3駅の下吉田で降りる。観光客の多さとは対照的に静かな景色だ。駅近だが長い長い石段を登るのが大変。ようやく辿り着くと富士山と新倉山浅間公園の忠霊塔と桜のコラボ写真が撮れる。着いたのは朝7時15分だがすでに撮影スポットの丘はデジタル一眼カメラを携えたカメラマンでたくさん。ぼうっと待っていたら振り返ったおじいさんがベストスポットの最前を少しの間譲ってくれた。10枚程撮らせて貰って、再度後方へ。

忠霊塔と富士山と桜の三つ巴。日本の風景といった感じ。
忠霊塔と富士山と桜の三つ巴。日本の風景といった感じ。
新倉山浅間公園も満開。富士山と桜のコラボがひときわ美しい。
新倉山浅間公園も満開。富士山と桜のコラボがひときわ美しい。

こんなに混むなら、それにせっかく遠路はるばるここまできたのなら朝5時にここに来て夜明けの富士山を撮っていたら良かったかもしれないが、その時間帯でもすでにカメラマンで埋まっていそうだ。看板によると、夜中から朝5時までは三脚が使えて、それ以降は三脚・一脚共に禁止とのこと。使っていたおじさんは現場の警備員に優しく注意されていた。

地元のカメラマンの方も居て、何度も通ってらっしゃるそうだ。そんな話を小耳に挟んだ。近くに住んでいれば好きなときに行けるから羨ましい。

富士山と明け方の月。
富士山と明け方の月。

他の場所でも写真を撮っていった。やはり富士山は良い。しかし毎日見ていると食傷気味になりそうだ。遠路はるばる苦労してやってきてたまに見られるから良いのか。

桜の窓枠から臨む富士山。
桜の窓枠から臨む富士山。

帰路につく。途中JR甲府駅で降りて、電車の待ち時間の間、駅南口にある武田信玄像を拝む。こちらも本に掲載された写真などで何度も見た像。TVゲーム信長の野望ではいつも武田信玄を選んでいたから、念願が叶った。近くに躑躅が崎館跡があるのだろうか。武田神社もあるが、時間がなかったので断念。

JR甲府駅南にある武田信玄像。
JR甲府駅南にある武田信玄像。

富士山を時計と反対回りにぐるっと回るようにして、また田舎深い景色が続く身延線のワンマン電車に乗り換える。身延線全通90周年の垂れ幕が眩しいがどのような観光名所があるのかは分からない。途中温泉などもある。下車したいが時間がない。武田氏の国人達が住んでいたあたりだろうかと思いを馳せると風景もまた違って見えてくる。途中住宅街と共に富士山が大きく見え出すと、目的地の駅は近い。車窓の右側に大きく富士山が出現したかと思うと、あっという間に左側の車窓に移っていった。4時間ほどかかって西富士見駅で降り、富士山本宮浅間大社を目指す。田舎らしい店舗に現代的な補修を施した古いのか新しいのかよく分からない商店街を抜け、目的地に到着。ここまで来るとあたりは先ほどの山深い田舎から中核都市へと景色がガラッと変わる。今地図で見ると信玄桜があると書いてあるが、すでに桜は散ってしまい緑の葉が眩しかった。

巨大な鳥居と富士山と、還暦キャンペーンのパネル。
巨大な鳥居と富士山と、還暦キャンペーンのパネル。

富士山と巨大な鳥居の写真を収める。神話の時代から続く由緒ある神社らしいが、あまり詳しくない。後でじっくりパンフレットを読んでおこう。平日と言うこともあり、桜の時期も過ぎていて観光客はまばらだったが、フランス人などのヨーロッパ・アメリカ系が目立った。

富士山と鳩の群れ。人慣れした鳩がたくさん飛び交っていた。
富士山と鳩の群れ。人慣れした鳩がたくさん飛び交っていた。

東海道本線を抜けて神戸に帰る。ここから先はもう中核都市の連続で、普通の帰宅途中のサラリーマンや中高生・大学生などで社内が賑わう。車窓の外の景色を愉しむという余裕もない。夜の帳がおり、夜景しか見えず、浜名湖も城も見えやしない。新幹線を使って一気に帰りたいが青春18切符は新幹線と併用できない。帰りの電車は8時間くらい乗ってたんじゃないだろうか。幸いにしてスマホを2台持ってきていたので、電子書籍を読んで時間を潰すことにした。

さて、今回の行路は織田信長が1582年に武田氏を滅ぼした後に辿ったのと同じだろうか。木曽路を抜け、高遠城から甲斐に入り、富士山を見物して、徳川の領土を希に見る歓待で通って安土に帰っていったと記憶しているが、だとすれば1582年の信長の行路を追体験したことになる。

13日目 京都 梅小路公園

京都の梅小路公園に咲いていた八重桜。
京都の梅小路公園に咲いていた八重桜。

京都の梅小路公園内でコスプレ撮影。夕方に撮影が終わり、レイヤーさん達の着替えを待っている間に、満開の八重桜を撮影していく。ソメイヨシノより一週間遅れて咲くと言われている八重桜の様々な品種が咲いていた。フランス料理のコースに例えるなら、最後に出てくるデザートといったところだろうか。日本食に例えるなら、お茶漬けか。厚みのある桜。今年の春は桜づくしの一年だった。