白ホリゾントで背景を暈かして撮ると、いつもと違った質感の写真になる

白ホリゾントで背景を暈かして憂鬱感を出す。
白ホリゾントで背景を暈かして憂鬱感を出す。

この日は人気スマホゲームFGO25人大型合わせのコスプレ撮影だった。冒頭に上げた写真はそのピンショット。アーサー王伝説・円卓の騎士に出てくる登場人物の1人。話を聞いていると何やら関係性を壊してしまうキャラクターらしく、憂愁を帯びた感じで撮って欲しいと言われた。

さてどう撮るか。場所は白ホリで、F値を10まで絞って撮っていたが、憂鬱に取り憑かれているような感じで撮るにはどう撮れば良いかという事になる。

53mm | F10 | 1/200s |  ISO200
53mm | F10 | 1/200s | ISO200

背景の色は何が良いかと聞くと、キャラクター色でもある紫か青が良いと言うので、紫のカラーフィルターをつけたストロボを壁に向かって光らせることにした。レンズはズームレンズCanon EF24-70mm F2.8L Ⅱ USMから、単焦点レンズOtus1.4/55に変え、F値を1.4にした。目以外を暈かす事で、キャラクターの心情を最も表すであろう瞳に視線を誘導させ、その目を以て憂鬱感を表現しようと試みた。言葉でつらつらと書き連ねたが、実際の撮影現場ではいちいち言葉に直さず、すべて直感で撮っている。バストアップで横向きの絵が欲しいと言う。となると憂鬱感を出そうと思えば、伏し目がちの目になる。コスプレイヤーの演技力に委ねつつ、投げかけられたその表現を最大限に引き出すために、最適なレンズとカメラの設定で撮っていく。

この日は85mmの単焦点レンズは持参しなかった。大型撮影用のライティング機材で荷物が重かったのでなるべくレンズを選別することにした。白ホリゾントのみでの撮影だから後ろは大きく暈かす必要はないと踏んでいたから、単焦点レンズはスタジオでも撮りやすい且つ万が一背景を暈かす表現がいる際には良くボケる1本に絞った。白ホリならF7.1からF11辺りまで絞ってカリカリに撮った方が綺麗に撮れる。ただしこれは背景を白にした場合を想定していた。今回のように紫に色をつけることは想定していなかった。なぜなら白ホリでカラーフィルターで色をつけるのは難しいと思い込んでいたからだ。

しかし何事もやってみるものである。この日の白ホリゾントは広々としていて撮りやすかった。背景を暗く撮る事も出来るほど。広い白ホリゾントは表現の幅も広げてくれる。大阪メトロ谷町線・喜連瓜破(きれうりわり)駅の近くにあるフォトスペースRSは超大型併せにはお薦めのスタジオだ。

マニュアルフォーカスレンズなので、ピント合わせが難しいのだが、自身が編み出した方法でピントを合わせていく。通常目にピントを合わせる場合は手前の方の目に合わせるのが常道だが、やや現場が暗くてピントが合いづらく、前の目に合うかと思えば、後ろの方の目にも合ってしまう。

そういえば何かの本で、ピントが後ろの目に合った場合は、憂鬱感を出せると書いてあった記憶がある。全く記憶違いかも知れないが。だからこれでいいかと撮り直しはしなかった。

今回白ホリゾントにカラーフィルターで色をつけて思い切り背景を暈かして撮ったのだが、思わぬ効果を得ることも出来た。背景にフィルムのような質感が出ている。フィルムカメラで撮った質感ではなく、フィルムその物の質感。何と表現したら良いだろうかと悩みあぐねていたのだが、たまたまおやつ時にテレビをつけたら、グラフィックデザイナーを引退して自主制作映画に勤しんでいる『芦屋の黒澤明』の異名を取る男性が、MBSの『ちちんぷいぷい』で紹介されていた。テレビは余り見ないのだが、半年くらい前にもたまたまおやつ時にテレビをつけたら同じ人が取材されていて、自主映画の制作模様がVTRで流れていた。「あぁこの人また出てる、このシーン芦屋川やん(笑)」と観ていたら、蛍光灯が光るアクリル製のホワイトボードの前でインタビューを受けているシーンがあり、これだ!と閃いた。

白ホリゾントで背後の壁をストロボで光らせて背景を思い切り暈かして撮ると、冒頭に上げた写真のように、蛍光灯が光るアクリル製のホワイトボードのようないつもとは趣を異にした質感の背景で撮る事が出来る。コツとしては、被写体と後ろの壁との距離を取ること。壁への光が全体に行き渡るように照射角を広め、設置位置に壁との距離を取り、ストロボ光を思い切り強めること。