密閉空間の教室で撮る時は、いかに本物の教室のように撮るかが問題となる。前回撮影した時は夕日の差し込む教室と見立てて、それぞれの窓に一灯ずつ、後ろから一灯ずつの計3灯に、オレンジのカラーフィルターを着けて撮影した。
しかしそうなると3灯目の後ろからの光は一体何の光なんだという事になる。窓から差し込む夕日と、教室の内側からやってくる謎の光。『俺が太陽だから問題ない』という気持ちだ。つまりは撮影者は神で、神である撮影者が「光りあれ」と唱えれば、自由なところに光がそこに出来るのが写真撮影の醍醐味でもあるわけだから別に構わないのだが、やはり本物の教室の臨場感を目指したいという事で、この日は後ろにストロボを置くことはせず、窓に1灯ずつ計2灯、オレンジのカラーフィルターを着けて撮影することにした。モデルにもソフトボックスで光を当てている。やはりストロボなしの影のある写真よりも、ストロボで影を飛ばした写真の方が好まれる。雰囲気のあるポートレート写真なら敢えてモデルにストロボを当てない方法もありかも知れないが、コスプレ撮影では女装であろうが男装であろうが、顔の影を飛ばした写真が好まれる。これは漫画やアニメがツルッとした顔の造形であること、またそのように描かれたキャラクターと瓜二つになりたいというコスプレイヤーの願望の強さが関係しているのかもしれない。
大体は試行錯誤である。初めは誰でもどのように撮れば良いのか分からない。この日は教室に他の二組のレイヤーがいて、まずは一番奥で撮ることにした。
何か違うな〜何か違うな〜といいながら撮っていった。何か物足りない。実は前回の撮影が終わった後に、夕陽の差し込む教室を密閉空間のスタジオでリアルに再現したくて、グーグルで本物の教室の写真を画像検索してみたのだが、その時に見た写真と何か違う。何かが足りない。
色温度を上げて濃くしてみたりしたが、それが答えではないようだ。撮る角度が違うのかも知れないと、他のレイヤーがいなくなってから少し距離を置いて二つの窓が広く入るように撮影してみたりもした。
すると気づいたことがあった。どうもカーテンの奥で光っているストロボ光の拡がる範囲が小さい。そこで元いた位置に戻り、窓が余り写らないよう正面から撮っていったのだが、思い切ってストロボの光量を上げたら、窓全体に光が溢れるように行き渡った。ググって見つけた本物の教室と瓜二つだ。(2018/08/09 File.9375)
机の上にも窓から溢れ出るストロボ光が反射して、臨場感を掻き立てている。こういう絵が欲しかったのだ。(File.9392)
予想通りの写真が撮れるようになるためには、座学だったり、頭で考えていただけでは無理だ。実際に撮影現場で色々試行錯誤することで欲しかった絵が出てくる。