コスプレイヤーに「普段どのジャンルを撮ってるんですか?」と聞かれた時に答えたこと

コスプレイヤーさんからよく聞かれるのが、「普段どのようなジャンルのコスを撮っているんですか?」。その問いに対して、「よく撮影しているレイヤーさんがやるコスを撮っています」といつも同じように答えることになる。

「どんなジャンルが好みですか?」と続けて聞かれる。まいった、好きなジャンルなんて考えたことがない。今まで流れに流されるようにレイヤーさんから来た依頼を受けてレイヤーさんがするコスプレを撮ってきたので、これといったジャンルにこだわりがない。

「ストロボで光がパーーーーーン!と当たってカッコ良く撮れるのだったり、自然光で逆光で綺麗に撮れるのとかが良いですね。写真映えする良いロケ地で撮りたいですね」と応えたら、「それジャンルの話ちゃうし」と突っ込まれた。確かにそうだ。

男装と女装、どちらの割合が多いですかとも聞かれた記憶がある。大体半々でしょうか、と応えているのだが、よくよく振り返ってみると、メインでよく撮影している4,5年の長い付き合いのレイヤーさんが3人で、そのうち二人は9割方男装しかしない人で、もう一人は半々だが、男装撮影を中心にこちらに依頼してくる子なので、自然男装撮影の方が多くなる。しかし過去の撮影内容を全部正確にチェックしているわけではないから、本当のところは分からない。最近は新規での個撮の依頼もぼちぼちと入ってきていて、女装であることが多いので、今現在に限って言えば半々だろか。

先日スレイヤーズの新刊が16年ぶりに発売されてAmazonでも秒速で売り切れたと話題になっていた。秒速というのは誇張しすぎたかも知れないが、それだけ根強い人気を誇っている証左でもある。そのニュースに触れてふと、スレイヤーズのリナ・インバースが撮りたいと思った。

自分が撮りたいジャンルのコスプレなんてのは余り考えたことがなかった原因に、自分が子供だった頃の90年代の古いアニメのコスプレをしている人なんて皆無に近いから、そんなことを考えてもどうせ撮れないし無駄という先入観があげられる。たとえば『ふしぎの海のナディア』のコスプレをしている人なんて関西ではまずいない。『スレイヤーズ』ももはやレガシーとなりかけているので、見かけない。エヴァンゲリオンはどうかというと、やはり少ない。コスプレイベント会場でごく希に見かける程度だ。だいたいは今現在流行しているアニメや漫画、ゲームのコスプレだ。

そりゃ20年前にコスプレ文化が今のように発展していたら、ナディアやリナ・インバースやその他の90年代のアニメのコスプレをしている人は大勢いただろう。20年前なんてウィッグは高かったと言うし、コスプレメイク技術もなかった。コスプレ用のカラコンなんてもちろんなかっただろう。衣装だって売っていない。カメラだってフィルムしかないし、写真を残すとしたら写ルンですくらいだ。今みたいにストロボを駆使したプロ並みのカメラ機材でハイクオリティな写真を撮って残したいという欲求も当然なかっただろう。こだわったコスプレをするのは今よりもハードルが高かったに違いない。ウィッグもコスメイクもしない着ただけレイヤーさんが多かったのではないだろうか。

ということで、撮りたいコスプレのキャラクターが見えてきた。リナ・インバース、ナディア、エヴァのアスカと綾波レイ、この辺りだろうか。けいおん!はどうだろう。アニメは好きだが今上げたキャラクターと比べるとそこまで撮りたいという欲がない。『氷菓』の千反田えるは大好きな作品なので撮りたい。しかしこのアニメもニッチでコスをやっている人は今は皆無に近い。

ジャンルの話だっけ。そもそもジャンルとは何を以てジャンルというのか。ダイレクトに固有の作品のことを指すのかそれともスポーツ物とか恋愛物とかもう少し大きい枠組みでの定義だろうか。

結局流れに流されるように撮っていくのではないだろうか。コスプレイヤーはやりたいコスプレは好きな作品だが、撮影者の場合は撮りたいキャラももちろんあるが、筆者自身はそれよりもどう撮れば作品世界を再現できるかという方に重きを置いているので、事ジャンルの好みに関してはすぽっと抜け落ちてしまい、冒頭に上げたような撮り方・見せ方の話題にすり替わってしまう。結局は、ジャンルどうこうよりも、ストロボをパーーーーーン!と当てた時に顔が綺麗に撮れたり、自然光での逆光だったり、多灯ストロボや雨撮影やスモーク撮影で格好いい写真が撮れたらいいなという方に軸がぶれる。

もし自分が20年前にコスプレイヤーとして活動していて、好きな作品を写真に撮って貰う時に、どのように撮ればその作品世界を再現できたり、それ以上にその作品の魅力を写真から溢れ出すように表現できるか、アニメや漫画という2次元の作品を2.5次元として発掘し表現できるか、子供の頃にアニメの世界に夢見たイメージを頭の片隅に意識し点灯させて撮影している。僕は写真という表現手法でやっているが、それと同じような事をやっている表現者が二次創作の同人誌を描いている人たちではないだろうか。

もちろん感情や体調の波もあるので常にそのように意識して撮影しているわけではないが、たとえ知らない作品であっても、もし自分ならどのように撮って欲しいだろうと想像を膨らませることにはやぶさかではない。コスプレ撮影は子供の頃の気持ちに戻ることができる時間なのかもしれない。

そうして撮った写真をコスプレイヤーに喜んで貰えるなら、その喜びはそのまま自分自身の喜びにもなり得る。たとえそこに世代間や意識の断絶があったとしても。