Canon 1DX MarkⅢ ファーストインプレッション

Canon 1DX mark3 ファースト・インプレッション!

Canon 1DX MarkⅢが届いたのは、コロナウイルスがいよいよ本格的に猛威を振るおうと牙を剥きだしている最中だった。ウイルス蔓延の封じ込めを狙う政府からの要請で日本の学校が一斉閉鎖したり、数々の大規模イベントが自粛に追い込まれたり、電車内のアナウンスでも手洗いうがいマスクの着用や時差出勤、リモートワークなどが連呼推奨されたり、民放テレビ各局の朝昼のワイドショーが重要な情報という大義名分を笠に着てここぞとばかりに視聴率稼ぎに躍起になりコロナウイルス関連の重箱の隅をつつくような枝葉末節な報道で埋め尽くされ国民の不安を必要以上に煽り立てたり、イタリアでは死者が1,000人を超え全店舗が閉鎖されたり、その挙げ句の果てにニューヨークダウや日経平均株価が連日のように歴史的暴落を演じている慌ただしい時期だった。注文時には納期未定で、このような状況なのでキヤノンの工場も生産が遅れているのではないかという憶測がインターネットの方々で飛び交っており、3月頭に注文した際には5月頃に手元に届くのではないかと踏んでいたが、1週間くらいですんなりと手に入った。キャンセルが出たのかこのような隔離閉鎖的な状況下でもキヤノンの工場が生産をフル回転させていたのか。

1DXからの乗り換えということで、ファーストインプレッションという形で比較していきたい。

化粧箱

重厚な黒い化粧箱から取りだしたのだが、希望小売価格90万円もするためか厳重複雑な構造をした梱包材によりガッチリと固められており、少々筺から取りだしにくかったが安心感のある梱包だった。

重量

1DXよりも90gは軽かっただろうか。片手で持ってみると、ほんの少し軽くなったような感じはするが、言われてみないと分からない。そこで1DXを取りだして重さを手で測り比べしてみたが、確かにMarkⅢの方が若干の軽さを感じる。

バッテリー

手に持ってみた質感としては、真新しいラバー部分の質感の気持ちよさはさておき、バッテリー部分は初代1DXに付属していた物とは異なり、ザラッとしたマットな質感に違和感を覚えた。MarkⅡに付属のバッテリーと同じだが、光学ファインダー撮影による撮影可能枚数は大幅に増えたという。

ファインダー

Canon EF24-70mm F2.8L Ⅱ USMを装着してファインダーを覗いてみると、1DXよりも視界が見やすいような感じがした。これは気のせいなのかそれとも7年近く使い倒した1DXのファインダーが濁っているのか、何らかの改良が加えられたのか。

測距点

測距点が多くなった分、小さくなっていてビックリした。しかしながらその幅はファインダー撮影では従来の幅とそれほど変わらないように感じられる。

ライブビューモードだとピントを合わせられる幅は縦横共に広がるが、隅までは広がらない。しかしながら実際の撮影でフレームのギリギリ端にピントを合わせることがあるだろうかと考えると、今まで撮影した中ではそのような体験は無かったように思うから、おそらく充分だろう。

AF-ONボタンの新機能「スマートコントローラー」

親指AFで使うAF-ONボタンはAFスタートボタンの他に、今回指でボタンをなぞるとAFフレームを移動させることが出来るスマートコントローラーと呼ばれる機能が加わった。キヤノンの新型ミラーレスの方では同じ位置にスライドバーが採用されてカメラの設定を変える事が出来るのだが、どうもインターネットでレビューを漁っていると、このスライドバーは微妙という意見をちらほらと見かけた。ではMark3のスマートコントローラーはどうかというと、こちらは価格コムのレビューでも評判が良い。なるほど確かに、マルチコントローラーのボタンをちまちま押して1個ずつAFフレームを移動させるよりもスムーズで快適だ。最初は慣れなかったが、使っていく内に慣れるだろう。

シャッター音

シャッターを押すと、こぎみよいシャッター音。初代1DXは「ガッチャン!」という大きな音でたまに近くに居るヨソの子供から煩いと毒づかれることがあったが、カシャッと、薄いビスケットかクリスピーを囓ったような繊細でいながらもシャッターを切った充足感が得られる心地よい音がする。

ライブビューモード

ライブビューに切り替えるときも似たようなカシャッという、こぎみよい音だ。カメラのモニター部分はタッチパネル方式で、AFのメニューも表示されて顔追尾や一点AF等ワンタッチで変える事が出来て非常に使いやすい。またAFフレームの位置も指1つで決められるので、ライブビューモードでの撮影が快適になりそうだ。後から詳しく述べるが拡大表示はピンチアウト(指で広げる動作)やダブルタップでは出来ないものの、虫眼鏡アイコンをタップすると拡大表示されて、ダイヤルを回すより楽。

しかしながらライブビュー撮影はカメラを顔の手前に不安定なポーズで撮影することになるので、体勢の面では撮りづらいことに変わりは無く、実際に撮影で使ってみないことには分からない。ピント合わせは従来品よりは楽になったことは確かだろう。

瞳AF

ライブビューモードにすると瞳AFの機能をオンに出来る。AFを作動させると瞳を自動的に認識して顔にピントが来るようカーソルが動くのだが、フィギュアで試してみるとピッタリと合った。ワンショットAFからサーボAFモードに変えて、AF-ONボタンを押しながらフィギュアを動かしてみると、カーソルが自動的に顔を追尾した。ミラーレスカメラの方でこの機能が良く取り沙汰されていて「人をダメにするカメラ」などと絶賛させるほどの性能らしい。

しかしながらライブビューモードでの撮影は、光学ファインダー撮影に比べてバッテリーの消費が激しい。撮影可能枚数が改善されているとは言え、ライブビューモードが必要な暗いシーンの撮影では、長時間の使用を想定した場合、予備バッテリーが必要になるだろう事は想像に難くない。1DXで使っていた旧型バッテリーを充てたいが、Mark3で使えるのだろうかという疑問が湧いた。これは次の記事で詳しく解説したい。

Canon EOS-1D X Mark IIIに、旧型バッテリーパックLP-E4Nは使用可能??

連写性能

連射も機関銃のようなこぎみよい軽快な音。連射を必要とする被写体の撮影欲に駆り立ててくれる。

画質

画質については申し分ない。買い占めで品薄とかいうトイレットペーパーやティッシュペーパー、マスクを買い出しに行くついでに1DX Mark3を持ち出して初試し撮りしてみたが、何ら文句の着けようのない画質。しかし中判カメラで撮ったらもっと鮮明に写るのだろうかとも思った。しかしながら中判カメラは撮りづらそうであるし、今まで買いそろえていったEFレンズ群が使えなくなるので、1からレンズなどを買い揃えるとなるとコスパも頗る悪い。

ダイナミックレンジも広がっているはずだから、白飛びしやすい逆光のシーンで撮影してまた感想を述べたい。

背面液晶モニター

モニター部分がタッチパネル方式になったので、撮影データ確認の時はスマホと同じ感覚で指を広げて拡大表示させたり、撮影データをスライドさせたりすることが出来る。指でクイッとつまむと(ピンチイン)複数枚一括表示も簡単に出来る。特に拡大表示はピントが合っているか確認する際に重宝する。ダブルタップでも拡大表示させることが出来、カメラの設定で等倍表示にすれば、顔部分をダブルタップして簡単に目にピントが合っているか等倍表示させて確認することが出来るので、非常に便利な機能だと実感した。モニターの角に表示画像に対する拡大部分も表示されるから、どれくらい拡大しているのかも分かりやすい。モニターに写る写真もより精細になったように感じられた。

タッチパネルなので必要なメニューに指1つで飛べるのも、ダイヤルやボタンを弄る手間が省けて楽で良い。2,3回指でタップしただけで必要なメニューに飛べる。

背面ボタン

カメラ背面のメニューやinfoボタンの他、モニター下の4つのボタン、Qボタンはモニターをオンにすると淡く発光する仕様になっている。これはなかなかカッコいい。

ペンタ部

1DX mark2が出たときはこのペンタ部の出っ張りが高くて不評だった。mark3はどうだろうか。GPSが格納されているというペンタ部は少し高くなっているみたいだが、実感としてはぱっと見分からないし、ペンタ部が出っぱっていなかった初代1DXの乗り換え組としては気にならない。ただしカメラバッグに入れる際は今でも結構ぎゅうぎゅう詰めなので、スペースを空けて余裕を持たせておく配慮が必要だろう。

パソコンへのデータ転送速度

データをパソコンに取り込む際には、初代1DXの時は、コンパクトフラッシュカード(メモリーカード)をカメラから取りだして、高速転送を謳うバッファロー製のカードリーダーに差し込みパソコンと繋いでデータを送っていたが、CFastカードに対応したカードリーダーが手元になく、またカードリーダーの方にも不具合があると聞いていたので、カメラとパソコンを、付属のインターフェイスケーブル(USBケーブル)で繋いで、EOS Utilityを使い取り込んだ。取り込み速度はカードリーダーよりも速い。USBの規格がSuperSpeed USB (USB 3.1 gen 1)相当だからだろうか。iMacの背面にあるサンダーボルト用のコネクトに繋いだ。この辺りは余り使っていないので規格がどう異なるのか分かりづらい。

EOS Utility

ウン億年ぶりにEOS Utilityを使用したが非常に使いやすくなっていた。既に取り込んだデータとまだ取り込んでないデータを自動で識別する選択メニューがあるので、まだ取り込んでいないデータのみ取り込むように設定しておくと、メモリーカードに残っている同じデータを二重に取り込むミスを防ぐことが出来る。年月日フォルダがパソコンのハードディスクのピクチャフォルダに自動的に作成されて、そこにデータが保存され、取り込みが終わると、Digital Photo Professionalが自動的に起動した。

たまに対象となるファイルが存在しないという表示が出て、取り込まないときがあるが、メニューボタンを押すと自動転送が開始された。

ケーブルプロテクタ

カメラにUSB端子を差し込む際には、付属のケーブルプロテクタを装着して、送信途中でケーブルが抜けるのを防いだり端子が傷ついたりするのを防げるそうだ。今まで一切使ったことがなかったオプション品なので少し手間取った。プロテクタにインターフェースコードをU字型にして2箇所に填め込む。コネクタには華奢なネジが付いており、これを回してカメラの側面にある端子にプロテクタを固定する。穴から端子を差し込んで、もう片方の端子をパソコンに繋ぐといった手順だ。何とも面倒だが端子を傷つけたりコードが送信途中で抜けて貴重なデータや高価なCFastカードが破損するのを避けるのなら、それも致し方ないだろう。問題は自宅のテーブルのスペースが狭いので、データ送信する際にカメラをどこに置くかだが、なんとか収まっている。

購入から10ヶ月経った今は、このプロテクタは使わずにコードを繋いでいる。取り込みが素早く終わるし、地震でも起こらない限りテーブルから落とすこともないだろうし、強い地震が起こればコードなんて簡単に抜けるだろうし、よっぽど気が散っていなければカメラを落とすこともない。

取扱説明書

さて取扱説明書を片手にレビューを書いていったが、この取扱説明書はマルチリンガル使用になっており、日本語の解説ページは60ページ弱となっている。カメラ各部の名称と、液晶表示のパターンや意味、バッテリーの出し入れの方法や電源の入れ方などの基本的な使い方と、カメラ内メニューの内容という、簡素な解説になっている。

Canon 1DX mark3に同梱されていた取扱説明書。

その他の詳しい内容はキヤノンの公式サイトにHTMLとPDFの二種類で用意されており、取扱説明書に記載されているQRコードを読み込むことでアクセス可能だ。

冊子版も販売しているが、5,000円くらいするとのことだった。やはりイメージングシステム部門が右肩下がりな事による経費削減の一環だろうか。紙の質感も1DXの取説と比べると艶がなくてペラペラで安っぽい紙であることが分かるし、表紙も中身もモノクロの2色刷りだった。

しかしそれほど気になる事ではない。最近の製品は取扱説明書が各国共通で必要最低限の簡素な記載となっている所が多い。アップル製品がその極致な例だ。1DXや他のキヤノン製のカメラに慣れていれば、取扱説明書がなくても操作できるし、分からない箇所があれば公式サイトのオンライン版の説明書を見た方が、メニューのリンクや検索欄から自分の必要な情報に簡単にピンポイントでアクセスできる。

問題はインターネットに繫がらない場合だ。実はこれを執筆している時点で、インターネットが上り下りとも超低速の不具合に見舞われ、ネットに繫がらない状態に陥った。スマートフォンの方のネットは繫がっているので、インターネットは出来るが、パケットに上限があるので、PDFに繋いで通信量が大きく取られないか心配ではある。

カメラの性能や機能についての詳細は、そのうち専用のムックが出るだろうから、そちらで確認した方が数々の機能を楽しく習得出来るだろう。

さて、取扱説明書の表紙にQRコードがあるので読み込んでみたら、英数字の検索結果が出てきたのだが、キヤノンと全く関係の無いサイトばかりだった。なんだこれは?と取説のページをめくるとそちらにも幾つかQRコードがあり、読み込んでみると無事使用説明書に到達した。

カメラ本体のメニューにも使用説明書のQRコードが表示されるので、必要なときにスマホのカメラで読み込めばいつでも閲覧できる。

高感度撮影

一番気になったのは高感度での撮影だ。試しに夕方4時に部屋の中でISO感度3200で撮影してみたが、驚くほど綺麗だった。1DXでの撮影時はISO感度1600でもノイズ処理でややノッペリとするので躊躇われたのだが、Mark3はISO感度3200でも階調が損なわれていない様に感じられる。これはもう少し様々な明るさの下で様々な色の被写体で撮影してみないことには良さが分からないのでまた日を追って報告したい。

スマホ対応

今回初めて通信に対応するカメラを購入した。そこでCanon Camera ConnectというアプリをiPhoneにインストールして試してみることにした。

まず驚いたのが、スマホでライブビューにしてカメラのシャターを切れることだ。スマホにカメラのモニターと同じ光景が写っていて、シャッターを押して写真を撮る事が出来る。どのようなシーンで役立つのか想像が広がるが、スマホでこんなことまで出来るようになったのかとビックリ。あとは撮影データをスマホで表示させることが出来る。RAWで撮ったがRAWでもスマホで表示できた。

オプション品のWi-Fi通信機器が8万円で販売されているが、それとの機能の違いがいまいち分かりづらいので、じっくりと説明書を読んで機能を習得していきたい。

10ヶ月程使用して

ここまでがファーストインプレッション。この先は10ヶ月程使用した所感を簡単に述べていきたい。

やはり高感度撮影のノイズ耐性に優れていてISO感度1600でも躊躇うことがなくなった。ISO感度3200はさすがにノイズが出そうではあるが、天の川と人物写真のコラボを撮影した時には重宝した。

24mm | F1.4 | 4s | ISO3200
24mm | F1.4 | 4s | ISO3200
85mm | F1.4 | 1/5s | ISO1600
85mm | F1.4 | 1/6s | ISO6400

画質も綺麗、1DXと比べて画質が少し向上しているように感じられる。撮影した女の子も同じようなことを言っていた。

連写性能も素晴らしい。コロナ禍でコスプレ撮影をする機会が半減しているので、最近はカワセミなどの野鳥を撮りに行ったりしており、鳥の目にピントが合う機能が評判のミラーレス一眼EOS R5の購入も検討しているのだが、色々レビューで調べてみると1DX Mark3の方がAFの食いつきが良いとかいう話であるし、カワセミのように高速で獲物を狙うシーンに評判のAFが上手く機能するだろうかという懸念もあるので、しばらく1DX mark3で研鑽を積もうと思う。

同じ映像エンジンの高級カメラを2台も持つのも少し勿体ないような気がする。高画素フルサイズミラーレス機は次の新機種が出るまでしばらく据え置くか。