etoile studio

人物撮影における斜め撮りの極意

斜め撮りはあなたの構図力と美意識が試される。

斜め撮りはあなたの構図力と美意識が試される。

ポートレートやコスプレ写真を見ていると、構図を斜めにした写真がよく目につく。これは1つには写真に動きを出すため、もう1つの理由として斜めに撮ればなんとなくカッコよく見えるため、あと1つの理由は、これはコスプレ写真に圧倒的に多い理由なのだけれど、アニメやマンガ、ゲームなどのイラストでは、斜め構図が効果的かつ頻繁に用いられているためである。

コスプレ撮影では、コスプレイヤーが撮影した写真に斜め撮りが多い。筆者自身も撮り合いで女の子に撮って貰った時に、斜め構図の写真が多く、その子は女性向けの恋愛ゲーム(所謂乙女ゲーム)の大好きな女の子だった。

一方でアマチュアの男性カメラマンは、斜め撮りの写真が少ない。フレンドのレイヤーから話を聞いたことがあるが、「斜めでは撮らない、写真のセオリーに反するから」というようなことを断言したカメラマンもいたという。

確かに富士山などの風景写真を斜めに傾けて撮れば、三脚が途中で壊れたのか地震で傾いたのかと疑いたくなるような不安定な写真になる。しかしそれは風景写真の範疇での話。人物撮影でそのセオリーは通用しないだけでなく、そのセオリーに固執していてはコスプレイヤーの求める写真を撮ることは出来ない。

とはいうものの、斜め撮りは絵が決まる時もあれば、ただ単に不安定な写真に見える時もある。斜め撮りで気をつけなければならないのは、考えなしに何でもかんでも斜めに傾けて撮れば良いというものではないという事だ。斜めに撮ればそれっぽく見えるという思い込みと手軽さがある。ここに落とし穴がある。

撮り合いの時に女の子に座っているポーズを撮って貰ったが、縦構図の写真で余りにも斜めすぎて流石に不安定さを禁じ得なかったので、斜め撮りはやめて真っ直ぐに撮って貰うように指示した事がある。つい斜めに撮ってしまう原因として、乙女ゲームのイラストは時に不自然なほど斜めに傾けた構図のシーンが多々あるからだろう。深く考えずに斜め撮りをしてしまうのに、マンガやゲームの影響があることは否めない。

斜めすぎて不安定感が強く出たので、真っ直ぐに撮って貰うように指示した。

斜めすぎて不安定感が強く出たので、真っ直ぐに撮って貰うように指示した。

真っ直ぐに撮ると、安定感が出る。

真っ直ぐに撮ると、安定感が出る。

とはいうものの、今度は動きがなくなり、何だか平凡な写真になった気がしないでもない。斜めで撮るべきか真っ直ぐで撮るべきかという選択はなかなか複雑だ。座りでも立ちでも、正面からでも上からでも、ピンショットでも集合写真でも、水平に撮ろうが斜めに撮ろうが、フレームに対して被写体が垂直になろうが対角線に突き抜けようがモデルと背景すべてが斜めに傾いていようが、撮影者の立ち位置と構図力と背景次第で絵が決まる。つまり絶対的な基準がない。しかし斜めに撮ると明らかに不安定極まりない写真もあるから、何を基準に撮れば良いのか迷う。

その場合は、どちらか片方に斜めに傾けて撮るのではなく、左右両方斜めに傾けて、2パターンの斜め構図の写真を撮ってみて、すぐにデータを確認し、どちらが不安定に見えないかを吟味して撮っていけば良い。

傾けて撮ってみたものの、イマイチ不安定感が否めない。

傾けて撮ってみたものの、イマイチ不安定感が否めない。

逆に傾けてみると、対角線上にあるが、不安定感が弱くなった。

逆に傾けてみると、対角線上にあるが、不安定感が弱くなった。

2枚とも対角線上にモデル(筆者)が位置しているが、1枚目は不安定感が強く、2枚目は不安定感が弱い。1枚目の写真は背景も大きく傾いているが、2枚目の写真は背景はそんなに傾いていない。この辺りに不安定感の大小の差の原因がある。

このようにしてトライアンドエラーを繰り返して、構図的に失敗と思われる写真を連発するのは悪いことではない。問題なのは撮った写真を確認せず、何も考えずにタダひたすら斜めで撮り続けることだ。失敗写真になることを恐れずデータをその都度確認しつつ、トライ・アンド・エラーを繰り返して様々な構図を試すことが重要である。失敗写真になることを恐れたり、経験に裏打ちされていない撮影論を鵜呑みにして様々な構図に挑戦しないことが最も愚かしい。

「撮影者はただシャッターを押していればいいだけ」という意識を捨てることが大切だ。よく聞かれるそのセリフは、モデルに対して裏方であるカメラマンの謙遜から出る言葉であり、鵜呑みにすれば誤謬にも繋がりかねない。また高価なカメラやレンズを使っているからといって、綺麗に写真が撮れるからといって、シャッターを押せば良い写真が撮れると考えるのは単なる思い込みだ。キチンと頭を働かせて構図を考えないと、不安定な写真になってしまう。

斜めに傾けて撮る場合、その写真をその場で確認してみて、シックリくるかこないかを基準としてみよう。もしどこか不安定で胸騒ぎのようなものがすれば、逆に傾けてみるか、傾け具合を変えてみるか、真っ直ぐに撮った方が良い。実際に例を見てシックリとくる基準を確認していこう。

集合写真の場合

学校の集合写真を思い出して頂きたい。必ず水平に撮っている。斜めの写真は皆無だ。記念行事の集合写真のような大勢の集合写真を、被写体と同じ目の高さで撮る場合は、風景写真のセオリーと同じく水平に撮れば間違いない。

しかしポートレートやコスプレ写真は、記念行事の写真とは違う。襟を正して畏まる必要がない。ゆえに真正面からの集合写真であっても、斜めに撮るとスマッシュショットが撮れることもある。

斜めに撮る時は、正面からよりも上から撮影した方が、絵が決まりやすい。動きが出てストーリーが始まりそうですらある。

脚立に乗って上から斜め撮り。

脚立に乗って上から斜め撮り。

上の写真はメインの真ん中の子以外は斜めに撮れている。背景も斜めに傾いている。しかしメインの子が肘を突いて体を傾けていたために、斜め撮りしたことでフレームに対して垂直になり、安定感が出ている。

同じポーズで縦の構図で斜め撮り。

同じポーズで縦の構図で斜め撮り。

同じシーンで縦に斜め撮りしても不自然さがない。メインの子が垂直に写っているからだ。

では逆の方向に傾けてみてはどうなるだろう。

同じシーンで逆に傾けて斜め撮り。

同じシーンで逆に傾けて斜め撮り。

メンバーと背景両方が斜めに写っているのでやや不安定感が出たが、これはこれで動きが出ていて良い。乙女ゲームのワンシーンにありそうな構図だ。

ピンショットの場合

モデルと同じ目の高さからピンショットを撮る場合は、水平に撮った方が無難だ。斜めに撮ると不安定な写真になりやすい。

モデルと同じ目線にあるときは、真っ直ぐに撮らないと安定感がなくなる。

モデルと同じ目線にあるときは、真っ直ぐに撮らないと安定感がなくなる。

ハイアングルやローアングルで撮ると、斜めの方が動きが出て大胆でパンチの効いた写真になりやすい。次の2枚の写真では、斜めに傾けているが、一方の写真は被写体がフレームに対して45度の対角線上にあり、もう一方はフレームに対して被写体がほぼ垂直にある。そして被写体がほぼ垂直にある方が、写真としては不安定さがなく、シックリとくる。

背景は傾いているが、モデルは垂直に撮れている。

背景は傾いているが、モデルは垂直に撮れている。

モデルも背景も傾いて撮れていて、不安定感が否めない。

モデルも背景も傾いて撮れていて、不安定感が否めない。

では背景は斜めで、モデルは垂直になるように傾けて撮れば良いかというと、そうとも限らない。モデルをほんの少し傾くように撮ってみると、不安定感を感じさせずに動きが出る。

ほんの少しだけ斜めになるように傾けて撮った。ポーズと相まって動きの出る写真となった。

ほんの少しだけ斜めになるように傾けて撮った。ポーズと相まって動きの出る写真となった。

反対側に僅かに傾けても違和感がない、決まった絵になる。

反対側に僅かに傾けても違和感がない、決まった絵になる。

縦で撮る場合は傾けすぎに注意した方が良いということだろう。モデルが対角線上に位置することになる45度に傾けると不安定な写真になる。大きく傾ける構図は、横幅が長いゲーム内のイラストにありがちだが、縦写真でやると不自然になる。5-15度程度の傾け具合で良い。

もちろんこれは一例であり、すべての斜め構図の写真に当てはまるセオリーではない。時にはダイナミックに傾けた構図の写真が、マンガやゲームの世界を見事に再現することも忘れてはならない。例えば次の二枚の写真。横で撮る場合は、大きく傾けると良い感じになる。

対角線上の45度にモデル(筆者)が位置している。不安定感は全くない。

対角線上の45度にモデル(筆者)が位置している。不安定感は全くない。

おそらくモデルを水平に置いて撮っていたらイマイチな写真になっていた頃だろう。次の写真は対角線上にモデルを配置することで、真っ直ぐに撮るよりもモデルの体がフレームにたくさん入るようにして貰った。

横構図の場合はダイナミックに傾けると、座っていても動きが出て、写真に躍動感が出る。

横構図の場合はダイナミックに傾けると、座っていても動きが出て、写真に躍動感が出る。

ざっと述べてきたが、これはあくまで被写体と背景と撮影位置の関係から導き出したその時々の最適なやり方なので、必ずしもあなたが今置かれている条件に最適とは限らない。重要なのは常に頭を働かせて、トライアンドエラーを繰り返して、最適な構図を導き出すことだ。

斜め撮りのポイント

実際に恋愛ゲームのイラストでも大胆な斜めの構図が用いられている。故に斜め撮りのセオリーは存在しないといってよい。傾きの角度も、全身かバストアップかという基準も、人物は真っ直ぐで背景だけは斜めかそれとも人物も背景も斜めかという構図も、それらが正しいか間違っているかではなく、基準があるとすれば、斜めに撮った写真を見てしっくりきているか来ていないかのみが基準となる。故にカメラマンとモデルの美意識の問題となってくる。

処方箋として言えることは、とりあえず垂直水平の構図でしか撮らないというカメラマンはその考え方を捨て、どんなシーンでも斜め撮りばかりしてしまうコスプレイヤーは著しく不安定な構図になっていないか考えるようにしてから撮ると良いだろう。

答えを導き出すためには、ありとあらゆる被写体と背景の組み合わせで撮影して、自分自身で答えを導き出すしかない。撮影の度にあなた自身の美意識が繰り返し試されることになるだろう。 (model:Yuji, Asa, Megu, Uzuki, and others)