大人数の集合写真をハウススタジオで撮る時のカメラの設定

総勢22人の豪華な大型撮影。あなたならどう撮る?
総勢22人の豪華な大型撮影。あなたならどう撮る?

6月初旬にハウススタジオで22人の大型併せを撮影してきた。カメラマンは総勢4人。1階と2階両フロアを貸し切っての豪華な撮影だった。

22人の集合写真は僕に託されていた。集合写真というのは人数が増えれば増えるほど構図が限られてくると以前にもブログで述べたが、今回は22人という大人数という事もあって、当然構図はより限られてくる。これが集合写真を撮るのが一見難しいように思われて、コツを掴めば簡単な理由だ。役者は揃っている。ライティングのセットも完了、カメラマンは同じ位置からシャッターを切る。時にカメラの高さや傾きを変えて、しかし場所は動かない。というか動けない。それだけ。

当然ながらスタジオ内で綺麗に集合写真を撮るためにはそれなりのライティング機材が必要だし、全員にピントを合わせなければならない。かけ声も必要だし、それぞれの顔が被っていないか確認する必要もある。

集合写真を撮る時のカメラの設定と焦点距離の基本

  • 絞り値はF8~F11
  • 焦点距離は35mm以上。出来れば50mm以上

この2点に集約される。

「これだけの人数を撮るとなるとF11くらいは必要でしょうね。僕らは4,5人だからF5.6くらいでいけるだろうけど」とその日来ていた別のカメラマンさんに言われ、やっぱりギリギリの所のF11か、確かにそうだなとスタジオを見回してみて思った。

集合写真を撮る場合、F値は大きければ大きい程よい。例えばF5.6のような2~5人程度の併せの写真を撮る時に用いるようなF値では、今回のような大型集合では全員にピントが合わない。失敗写真の原因となる。

またF値を絞る事で、レンズの持つ解像力が最大限に引き出される。絞りを絞って撮ると、解像感が出て、写真の隅々までより綺麗に写るというわけだ。人が写真の隅まで写る事になる集合写真においては、写真の隅々まで綺麗に解像している事も大切な要素となる。

また、これだけ大勢が写っている集合写真の場合、自分の写っている部分だけトリミングして使うという事も考えられる。そういった使われ方がなされた場合に、暈けた写真になっていたら話にならない。データも原寸の長辺5000ピクセルで渡しておけば使い道に多様性が広がる。考えられうる限りの写真の使用方法を事前に想定してカメラのセッティングをしておくべきだろう。

F値の絞りすぎで生じる小絞り暈けに注意!

ただし、絞りすぎには注意する必要がある。フルサイズならF11、APS-C機ならF9よりも絞ってしまうと、小絞り暈けが発生し、写真の解像感が損なわれていってしまう。風景写真ではパンフォーカスを得るためにF22迄絞るという芸当もあるが、今回は被写体が人、尚且つタイムテーブルがキツキツの大型併せの撮影なので、三脚を使ってのんびり撮る余裕がない。ストロボの光量にも限界がある。手持ちでF22まで絞ればISO感度をそれこそ6400以上に上げなければならない事態に陥るだろうし、小絞り暈けとノイズの両面で写真の解像感が損なわれてしまうのは目に見えている。

スタジオでは被写体とカメラとの距離が自由に取れない

また、スタジオの場合、野外での撮影と違って被写体との距離が自由に取れない。距離を大きく取る事でボケないようにして全員にピントを合わせるという方法が採れないので、F値と焦点距離を操る事で全員にピントが合うようにセッティングする。しかし距離が取れないなら自ずと使える焦点距離が固定されてくる。必然的にF値は小絞り暈けが発生しないであろう最大値のF11まで絞るという結論に至る。

シャッタースピードは緩めない方が良い

更にはスタジオの明るさの問題もある。F値を絞り、ストロボを強く炊いたとしても、背景が暗くなってしまっては意味が無い。背景の明るさの事も考慮に入れなくてはならない。

シャッタースピードを緩めて、ISO感度を上げる。この2つの方法で、ストロボ光が届かない箇所の明るさや、ストロボの光量では足りない明るさを確保する。ここで誤ってF値を小さくしてしまうと、全員にピントが合わなくなる。

しかし手ブレ防止機能がついているからといってシャッタースピードを緩めてしまうと、今度は被写体ブレが発生してしまう可能性が出てくる。実際5人グループを撮る際に1/50秒で撮影してみたが、一人だけぶれてしまっていた。チョットした動きが被写体ブレとなってしまう。大型撮影だと皆ピッタリと静止するが、5人の撮影となると緊張が解けたり、雰囲気的にもワチャワチャするので、ついウッカリ動いたりする事も想定される。結局の所、1/80秒から1/125秒の間で撮るのが一番無難となる。

焦点距離は35mm以上!

さて、焦点距離であるが、35mmでも端の方は若干歪みが生じてしまう。だから理想としては50mmが歪みが是正されて85mmよりも暈けにくいから集合写真を撮る際には最も理想的なのではないかと思われるのだが、全員が入りきらなかったので、35mmの焦点距離で妥協する事にした。ギリギリ許容範囲の歪みだろう。

まとめ

  • 絞りはF11(小絞り暈けに注意!)
  • シャッタースピードは1/80秒~1/125秒
  • ISO感度でストロボでは足りない明るさを調整
  • 焦点距離24-70mmの標準ズームレンズ、もしくは35mmの単焦点レンズ

シャッタースピードは1/100秒前後に落ち着くという事は、コスプレ撮影の現場では手ブレ防止のついたレンズよりも、手ブレ防止のついていない大三元ズームレンズで撮った方が良いのか?という疑問が湧いた。10万のレンズより20万のレンズの方が描写性能だって良いんじゃないだろうか?その辺りの所は固有のレンズとF値によっても変わるので、キヤノンのレンズに関してはキヤノン EFレンズ FANBOOKで詳しく解説されているのでお薦めしておく。この本を熟読してどのレンズが自分の目的に合ったレンズかを判断すると良いだろう。

他のカメラマンさんとご一緒すると嬉しい事もある。この日もう一人のカメラマンさんが、キヤノンの5D系にCanon EF24-70mm F2.8L Ⅱ USMを付けているのを見て、お、凄いなぁと思ったら、うちのブログをいつも読んで頂いていて、購入してくださったという事だった。感謝に堪えない。