苦手な撮影分野を克服する為の処方箋

目の前が暗澹としていても、撮り方さえつかめれば道は必ず開ける。
目の前が暗澹としていても、撮り方さえつかめれば道は必ず開ける。

写真撮影を進めていくと、苦手な分野が壁となって立ちはだかることがある。それは経験の少なさから上手く撮れないだけなのだ。撮り方のコツさえ覚えれば、苦手意識は克服できる。今回は苦手な撮影分野を克服するための方法を見ていこう。

集合写真が苦手

焦点距離が変えられない単焦点レンズや、距離が取れない中望遠レンズ、端の人物が歪んでしまう広角レンズで撮ってはいないだろうか。

集合写真というと、大勢の人たちを写さなければならないから広く撮らないと行けないと思いがちだが、広角レンズを使うと、歪みが発生してしまい、綺麗な集合写真とはならない。

理想的なのは50mm辺り(APS-C機なら35mmが最適)の焦点距離で撮ることだが、会場によっては距離が取れないという場合もある。集合写真を撮る地点の撮影場所の広さが予想がつかない場合は、焦点距離を変えることが出来る24-70mmもしくは24-100mmあたりの標準ズームレンズを持って行けば、如何様にでも対応できる。

後はカメラの設定を覚えるだけだ。被写界深度を深くすれば良い。F5.6-F11くらいまで絞ると良いだろう。数値が高いほど、全員にピントが合う。

被写界深度の深さの比率は「前1:後ろ2」なので、ピントを合わせた後ろの方がピントが合いやすい。つまり数段の雛壇状態で集合写真を撮影する場合は、前の列の方にピントを合わせると良い。

集合写真で全員にピントを合わせる6つのコツ!撮り方の基本を覚えよう

野外ポートレートが苦手

単焦点レンズを使って、逆光で撮ってみよう。逆光でピントが合いにくかったら、マニュアルフォーカスに切り替えるか、ライブビューモードで撮影するといいだろう。高校生でもバイトすれば買える最新の明るい単焦点レンズもラインナップされている。

野外の人物撮影で失敗する原因の一つに、順光で撮ってしまうことが上げられる。太陽がモデルの前方に位置する順光での撮影は、モデルが眩しくて表情が作りにくく顔をしかめてしまうだけでなく、顔が脂でも乗っているかのようにテカテカに写ってしまう。硬いイメージになってしまうのだ。

逆光で撮れば、髪の縁に光が乗り、神々しい写真が撮れる。

野外ロケでステキな写真を撮る為のたった一つのセオリー

野外で人物撮影する場合、余り暈けないレンズでパンフォーカス気味に撮ると、メインの被写体とサブの背景が平坦に写り、主役が際立たない。複数人でワチャワチャした撮影なら風景に溶け込んでいるだろうからそれでもいいが、ポートレートなどピンショットの場合は、風景に溶け込んでしまうと、モデルの美しさがクローズアップされにくくなる。

単焦点レンズを使って背景を思いっきり暈かして撮れば、それだけで被写体が映え、モデルの美しさを際立たせる魔法をかけることが出来る。

スタジオ撮影が苦手

スタジオにはライティング機材が豊富に置いている場合があるが、定常光のソフトボックスは思ったよりも明かりが暗く、表現方法が限られてくる。単焦点レンズか大三元ズームレンズの購入を検討してみよう。Canon EF24-70mm F2.8L Ⅱ USMのような明るいレンズなら、ソフトボックスのない蛍光灯のみのスタジオでも、光を読めばある程度綺麗に撮ることが出来る。

もしそれで満足がいかなければ、ワンランク上の撮影方法に移行すれば良い。電波通信式のストロボと一緒にアンブレラやソフトボックスの購入をお勧めする。アンブレラやソフトボックスなどの機材を使って撮れば、肌が綺麗に撮れるだけでなく、影を着けて立体感のある写真が撮れる。プロのような写真が撮れること請け合いだ。

ストロボ撮影が苦手

ストロボの設定を、TTL自動調光からマニュアルに切り替えよう。取扱説明書を見てストロボの設定法補を確認する。取説の端から端までを読む必要はない。必要な部分だけを読んで、ストロボをいじりながら必要な知識を頭に叩き込もう。

マニュアルモードでの撮影は、自分自身でストロボの明るさを決めることになる。1/1のフル発光から1/128まで。分母の数値が大きい程光量は小さくなる。

まずはストロボをオフにして、カメラだけの設定で背景の明るさを決め、次にストロボをオンにして、試し撮りしてみる。ストロボ光の当たった被写体が明るすぎればストロボを手動で暗くし、明るさが足りなければストロボの光量を明るく設定する。ガイドナンバーやISO感度や被写体とストロボとの距離などの精確な計算は、する必要はない。すべてマニュアルで、実際に撮って確認しながら、大まかな感じでセッティングしていけば良いだろう。

知らない作品を撮るのが苦手

漫画やアニメやゲームのコスプレ撮影を依頼されたが、知らない作品をどう撮れば良いのか分からないという場合は、この作品はこう撮らなければならないという考えに固執しているのが原因と考えられる。まずは頭の中をフラットにしてみよう。自分の中にこびりついている固定観念を壊すことが重要だ。知らない作品故に頭の中にイメージが湧かないのなら、その作品の大まかなイメージをイラストなどから掴むようにしてみよう。幾つかの大まかなイメージに分類されるはずだ。

知らない作品でもイメージに近づけて撮る方法

また作品を知らなくても、ライブ衣装ならライブ風に、バトル物なら戦闘シーンの撮り方で、カフェ衣装ならオシャレな感じで、といった風に、今まで蓄積されてきた人生経験から簡単に分類して最適なイメージを引き出せるはずだ。

作品のイメージが伝わるように撮るには、撮影機材とスキル、モデルとのコミュニケーションが重要となる。

当日現場でどういう感じで撮れば良いか、コスプレイヤーから直接ヒアリングすれば良い。キャラの関係性は知らなくても、それはコスプレイヤー自身が再現してくれる。レイヤーの表現(ポージング)から酌み取って、カメラマンは持てる機材とスキルで応えていけば十分だ。

機材やスキルやモチベーションがなければ、作品を知っていても上手く撮れるとは限らないということを頭の中に入れておこう。作品を知らないカメラマンが撮った写真からは伝わってくるものがないなどと言うのは経験のない人間が思いつきそうな薄っぺらい机上の空論だ。作品を知らないカメラマンが、作品を知っているカメラマンよりも伝わってくるものがある写真が撮れたら、言い訳が効かなくなる安っぽい論理に惑わされないようにしよう。

時折作品を知らないから(男装は)撮れないという男性カメラマンを見かけるが、要は男装撮影の依頼を断りたい為の方便で、これが例えば肌色の多い女性キャラなら作品を知らなくても喜んで引き受けるだろうし、コミケなどの即売会や大阪日本橋で開催されるストフェスなどで、これまた肌面積の多い露出過多なコスプレイヤー達を見かければ、作品を知らなくても列に並んだり輪になって喜んで撮っていることだろう。

そもそもコスプレイヤー側に、カメラマンが作品を知っているかどうかに頓着しない人が多い。うちに来る撮影依頼も、まず始めに「何日空いているか」という話は来るが、作品や衣装についての詳細は二の次という人が多い。つまり作品の知識よりも、カメラマンとしてのスキルを求められているのだ。

作品を知らなくても撮れるのは、現場でのコミュニケーションや、スタジオの雰囲気に合わせた撮影者のスキルでまかなえるからだ。ツーショットを撮るにしても、二人の関係性を知らなくてもだいたい雰囲気で掴めるし、右の子を暈かしたり、次に左の子を暈かしたり、横から抜いたりと、撮り方のバリエーションはある程度決まっているので、撮る事が出来る。

それが出来ないのは経験不足という他はない。あるいは被写体の気持ちになれないことも原因だろう。僕自身コスプレをして撮られる側の気持ちも理解できる。

中にはツーショットを綺麗に撮って欲しいだけという人もいる。その辺りを推し量るのは難しいが、作品を知っていなければならないのはレイヤー側の方で、ポーズやキャラの関係性による立ち位置も作品を知っているからしっかりとやってくれる。後はカメラマンのスキルでレイヤーの望む写真となるように、構図や絞り値を引き出すだけだ。