集合写真は焦点距離35mmではなく50mm以上で撮る理由!

カッコいい集合写真を撮る秘訣は?
カッコいい集合写真を撮るための秘訣は?

集合写真を撮るときは50mmの焦点距離がベストだと以前書いた記憶がある。なぜ35mmでは駄目なのか。レンズにもよるが35mmでは両端にゆがみが生じてしまうからだ。隅々まで人物がいる場合に35mmで集合写真を撮ると、サイドが横に歪んでしまう。

どうしてもフレームアウトしてしまう場合は、35mmの焦点距離で撮るしかない。これ以上焦点距離を縮めると、歪みがどんどん激しくなっていくのでお薦めできない。表現の一つとして歪みを生かした集合写真を撮るという確固たる目的があるなら別だが、そうではない場合、きちんとした集合写真を撮りたい場合は、周辺の歪みは極力避けたい。

もう一つ、35mmよりも50mmで撮った方がいい理由は、人物の大きさに関わってくるからだ。35mmと55mmで7人が4列になる集合写真を撮ってみた。まずは16mmから28mmあたりの焦点距離で撮ってみたが、歪みすぎる。歪みの表現を生かして撮ってみてはどうかと思ったが、このフォーメーションではあまりうまく撮れない。

そこで次に35mmの焦点距離を選んでみた。55mmよりも先に35mmを優先させたのは、全員の顔、特に目にピントを合わせたいからだ。55mmよりも35mmの方がぼけにくいから、まずは35mmで妥協してみることにした。被写体が写真の中央に集中しているので、周辺の歪みもおそらくは気にならないだろう。

しかしレイヤーさんからOKが出ない。どうも何か違うという。撮っている僕も何か違うなと感じた。そこで55mmに付け替えて撮ってみた。するとOKが出た。

何が違うのか。二つの写真を比べてみると、被写体の大きさが異なっていた。35mmで撮影すると、フレーム内にメンバーを余白なく入れようとするため、被写体に近づくことになる。被写体に近づくと遠近感が生じる。前後のメンバーで大きさが異なって写ってしまう。近くの被写体は大きく、遠くの被写体は小さくなる。つまり後ろの被写体が最前の被写体に比べて小さく写ってしまいバランスが崩れる。ゆえにこの場合、絵に締まりがなくなる。

レイヤーの要望は、全員を均等の大きさで撮りたいということだった、ように記憶している。今年の2月頃の撮影なのであまりよく覚えていないが、つい先日大型あわせの撮影に赴いたときも、全員を同じ大きさで写して欲しい、後ろの人が小さくならないようにして欲しいという要望が出たので、35mmではなく55mmで被写体から距離を取って撮ることにした。6ヶ月前に得た教訓がすぐに頭の中の引き出しから出てきて、55mmのレンズをとっさに選ぶことができた。

55mmで撮ると、遠近感は解消された。後ろの最後尾の被写体が最前と比べるとやや小さく感じられないこともないが、35mmよりも全員の大きさのバランスがとれている。85mmも使ってみようかと思ったが、F11でも全員にピントを合わせるのが至難な予感がしてやめた。

要は35mmの焦点距離のままで被写体から距離を大きく取ればいいのだけれど、余分な部分も写るので、データを渡す時にトリミングの手間がかかることになる。あとは写真全体に対する被写体のサイズが小さくなってしまう点がデメリットだろう。ウェブにあげる、もしくは写真集などに印刷する際に必要十分な解像度が足りているかを確認する必要もある。

またトリミングを前提に写真を撮るという行為は、現場では抵抗がある。風景写真ならまだしも、相手がいる場合はその場でデータを確認してもらうので、広角寄りに取った余白の多い写真を見せて、これは後でトリミングしますといちいち説明しなければならない。レイヤー側にトリミングしてもらうという方法もあるが、果たして意図が伝わるかどうか。そのまま余白の多い写真を載せられる可能性もある。

要するに、様々な面で余計な手間がかかる。

集合写真を撮るときに、ボケにくいからといって安易に35mmを選ぶと絵作りの面でうまくいかないことがある。集合写真の焦点距離の基軸は50mmと据えて、その場で求められている絵に応じて、焦点距離を変えていくとうまくいくだろう。