集合写真の撮影現場で一人一人にフォーカスして撮るときに気をつけたい事 〜激しい明暗差を克服するたった1つの気をつけたいこと〜

集合の中で一人を抜く写真を撮るときに気をつけることは?
集合の中で一人を抜く写真を撮るときに気をつけることは?

2月下旬に18人の大型併せにサブカメラマンとして参加してきた。集合写真を撮る段になり、メインのカメラマンが中央に、サブのカメラマンは横から一人一人を背景をぼかして抜いて欲しいということだった。

場所は日本家屋。畳の部屋があり、縁側があり、庭がある。屋内で中央の主役を囲むように他のメンバーがギュッと並ぶのだが、顔は庭の方、南に向いている。

この日は曇り空で太陽も雲に隠れてあまり出ず、かといって日差しが弱いわけでもなく。だから前の列と中央及び後ろの列とのメンバーの明るさが全く異なるという感じだった。ソフトボックスを置く場所もないしこれは集合写真撮るの大変だろうなぁと思ったが、おそらく壁バウンスでやればなんとかなるだろうと思案していたら、集合写真担当のメインのカメラマンは壁バウンスで撮っていた。両サイドに2灯置いて、顔にストロボ光がかからないようにスタンドで高い位置に設定し、南側の壁にバウスンさせる。しかしこれでも前列とその他の列の明るさの差をストロボで調整するのは難しそうだ。挑戦しがいがあると言えばある。

さて、サブカメラマンとしては、個々のメンバーにピントを合わせて撮っていくから比較的楽なのだが、問題はカメラの設定。外光が当たっているメンバーは明るく、そうでない部屋の奥のメンバーは同じ設定のままで撮ると暗く撮れる。だからISO感度を上げなければならない。被写体が極端に暗くなってしまう場合は、後でパソコンで処理すればいいという安易な方法はあまりよろしくない。高感度撮影に臨む場合は、カメラの明るさの設定はなるべく撮影現場で厳密に詰めておいた方が良い。

高感度撮影した写真を更にパソコンで明るさを上げるとノイズが目立つからだ。無駄にISO感度を上げないようにF値やシャッタースピードを見直すのがコツである。

しかし今回は必要な明るさを確保するためにはF値もシャッタースピードも、ギリギリの設定にしなければならなかった。上述した理由からこれ以上は明るく出来ない。あとはISO感度のみが明るさを確保するための手綱となる。

屋内は思っているよりも暗く、200mmの単焦点望遠レンズF2.8の開放F値で、シャッタースピードは手ぶれしないセオリーの1/320秒、ここから導き出された適正露出はISO感度1000。しかしこれでもまだ薄暗いから実質ISO感度2000まで上げなければならなかった。

前列、2列目まではまだ外の光が当たるから、ISO感度1000でも顔が明るく写るが、それより後ろの3列から4列目は外光があまり当たらず極端に暗くなる。障子の後ろ、両サイドにはアシスタントがそれぞれ控えていて、桜の花びらを舞わせる。だいたいどのような絵作りになるかご想像いただけるだろう。

桜が舞う間に全員を抜いて撮っていかなければならないのだが、やはり18人ものメンバーがいると、一回の撮影で両サイドから全員を抜くのは難しい。今思えば、一回の撮影で文字通り右往左往するのではなく、撮影ごとに、右側・左側に位置を固定して撮影すれば右往左往する無駄を省けたことだろう。

しかしそうしたところでカメラの設定を逐一変えなければならない。いっそ一回目のシャッターで前列、2回目のシャッターで2列目、3回目のシャッターで3,4列という風に撮るメンバーを区切れば良かったかもしれない。これならいちいちカメラの設定を変える必要もない。しかし現場では何テイク撮るのか予想がつかなかったので、一回のシャッターでメンバーをまんべんなく撮るようにした。

当然焦りも出る。焦りがレンズに伝わり、被写体がぶれて写っている写真も何枚かあった。何せ望遠だ。しかし概ねブレてないし、等倍で見るとぶれている写真もツイッターやブログように縮小表示すれば、ぶれていないように見えるから許容範囲内だろう。

一番明るい前列のメンバーと暗い後列のメンバーを一緒に入れてどちらかに露出を合わせると、例えば後列の暗い方に露出を合わせると前列が真っ白に飛ぶ。前列に露出を合わせれば、後列が暗くなる。だからメンバーを切り取る必要があった。

200mm | F2.8 | 1/160s |  ISO1600 | 絞り優先AE | +1
200mm | F2.8 | 1/160s | ISO1600 | 絞り優先AE | +1

Otus 1.4/85の単焦点レンズに付け替えて撮ってみたが、これだとメンバーがたくさん写りすぎる。自分が写り込むのでこれ以上被写体に近づくことも出来ない。それにマニュアルフォーカスのみのレンズなので、ピント合わせに時間がかかり、こういった矢継ぎ早の素早いピント合わせが求められる撮影では実用的ではない。もちろんF値は開放1.4。先ほどよりも明るさは十分確保できたし、写りも良いが、いつ集合写真の撮影が終わるのか予想がつかないので、AF機能の備わっているレンズに戻すことにした。

またこの200mmの望遠レンズも単焦点なので、距離が取りづらい。しっかりと決まるメンバーもいれば、障子が映り込みすぎたり、アップ過ぎたりするメンバーも。刀の擬人化キャラだから刀もしっかり写したいところだった。

おそらく70-200mmF2.8のような望遠ズームレンズがあれば、被写体との距離が取りづらい狭い場所では撮りやすかっただろう。実売価格23−25万円か。うーむ。月3万円のショッピングローンの支払いでいっぱいいっぱい。

さて、明るさの設定。いっそのことカメラの設定をマニュアルではなく絞り優先AEで撮ってみてはどうかと思いついた。しかしマニュアルよりも撮りづらくなった。ISO感度を1600に固定したのだが、メンバーによっては1/160秒と手ぶれしやすいシャッタースピードになるし、シャッタースピードが1/800秒と必要以上に速くなり、ISO感度を上げてるのがもったいなかったり。手ぶれ写真の原因のほとんどが1/160秒や1/125秒などのスローなシャッタースピードのせいだ。こりゃいかんということでISO感度を2000に固定したが、今度はメンバーによって1/1600秒とか1/2000秒とか必要のない速さのシャッタースピードになる。ノイジーかと問われれば、フルサイズの1DXだし、ノイズ処理が施された写真を見ると、ノイズは気にならない。むしろノイズ処理が施されたことで肌がツルッと綺麗になる思わぬ効果がある。しかし低い感度であるに越したことはない。頭が混乱しそうだったので別の撮影場所に移る際にマニュアルに戻した。

200mm | F2.8 | 1/1600s |  ISO2000 | 絞り優先AE
200mm | F2.8 | 1/1600s | ISO2000 | 絞り優先AE

ストロボは使わずに天井の昭和風の蛍光灯も消して自然光のみで撮ったが、まぁ綺麗な肌の色に写っている。やはり自然光は素晴らしい。屋内は暗いがISO感度を1600や2000に上げればなんとかなったしノイズも気にならなかった。

あとはRAW現像で明るさ調整。露出がバラバラなので、いつもよりも補正に時間がかかると思いデータお渡しまで2.3日の猶予を主催に伝えておいたが、結果2時間程度で現像を終えることが出来た。

絞り優先AEで撮影した写真はメンバーの色によっても明るさがバラバラ。そういえばカメラは白い物を暗めに撮り、黒い物を明るめに撮るという習性があったがその通りだった。この点も逐一RAW現像で明るさ調整した。

測距エリア選択モードでスポットAFにしていたが、他に変えれば良かっただろうか。マニュアルのみで撮っていた弊害がこういうところで出てくる。いつも露出は液晶画面に映し出された写真を元に自分の目分量で決めていたから、カメラの機能で自動的に適正露出を決める場合に最適な測距エリア選択モードについて熟知していなかった。しかしこのモードを変えたところで全員を均等の明るさで撮れるとも限らない。外光が直接当たっていたり、衣装が白かったりまたは黒かったり、後ろに白い障子があったりとかなり複雑な明るさだから、果たしてこの機能を使えたとして上手くいっていたかどうか。次回までの課題に取っておこう。

200mm | F2.8 | 1/1640s |  ISO1600 | 絞り優先AE
200mm | F2.8 | 1/640s | ISO1600 | 絞り優先AE
200mm | F2.8 | 1/320s |  ISO1000 | M
200mm | F2.8 | 1/320s | ISO1000 | M
200mm | F2.8 | 1/320s |  ISO1600 | M
200mm | F2.8 | 1/320s | ISO1600 | M

開放F値での撮影による収差やレンズの描写力はデジタルレンズオプティマイザをオンにすることで解消。精細さが若干加味される。ホワイトバランスやホワイトバランス微調整、彩度なども調整して完成。無事お渡し。何人かの方からも喜んで頂けたので、良しとしよう。