マニュアルフォーカスを妨げしもの達

硬度に優れた鏡筒に滑らかなトルクで、マニュアルフォーカスでピントを合わせる愉しみを甦らせてくれるCarl Zeiss Otus 1.4/85 ZE
硬度に優れた鏡筒に滑らかなトルクで、マニュアルフォーカスでピントを合わせる愉しみを甦らせてくれるCarl Zeiss Otus 1.4/85 ZE

ここ1年ほどのメインレンズはツァイスのOtusとなった。その写りは中判カメラを彷彿とさせ、開放から撮っても解像感豊かでシャープ、収差を徹底的に排除した完璧なレンズである。使わない手はない。

だいたい割合にして、7,8割程度をOtusを使って撮影している。写りの違いが分かるので率先してOtusで撮って欲しいと言う人もいれば、そんなに違わないから別にAFレンズでもいいんじゃない?そんな高いレンズ買う必要ないんじゃない?と言う人もいる。

マニュアルフォーカスなので、ピント合わせはオートフォーカスのレンズのようには行かない。特に開放F1.4で撮るとなると、ピント合わせはシビアになる。それでも撮影枚数の95%はガチピンになるようなピントの合わせ方を独自に編み出した。残り5%はテスト撮影で外した枚数だ。

マニュアルフォーカスでも、開放F値1.4でガチピンで写真を撮る方法

今日は人通りの多いところで撮影してきた。人通りが多いだけならまだ良いが、一般人の通行の邪魔にならないように配慮しながら撮影するのは、著しく神経を消耗する。その日もOtusを付けていたが、いつものやり方ではなかなかピントがガチピンにならない。周りの雑踏の気配が心を乱す。あるいは余り光が入らない場所なので、いつものやり方ではガチピンにならないのかも知れない。

そこでいつものやり方をやめて、すべてを勘に頼ることにした。撮影中でもふと気を抜いて滑らかなトルクを回し、開放でピントが合うかどうか試し撮りをしたりする。クルマを運転しているドライバーが運転中にハンドルを遊ばせるような感覚に近いかも知れない。

そんな感じで普段からマニュアルフォーカスでピントを合わせる勘を養っていたので、この日も一切を5本の指先に叩き込んだ勘に任せてトルクを回した。そうしてようやくガチピンの写真を撮ることが出来た。

窓越しに撮って欲しいとも言われたので、これも勘に頼った。ガラスの向こうの被写体にピントを合わせるのは、AFは迷いがちだし、MFのいつものやり方でも難しい。こういうときはマニュアルフォーカスに切り替えて、一切を勘に頼るに限る。トルクを回す指先にすべての集中力を送り込むことが出来る。

そしてまたしてもジャスピン。無事前哨戦を終えることが出来た。

明日からは10日間にわたり、桜ロケを敢行してくる。滑らかなトルクをゆっくりと回してマニュアルフォーカスでピントを合わせる往年の写真撮影の楽しみ方を、存分に味わってこようと思う。