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白飛びにこだわりすぎると写真が上手くならないワケは?

この日一番のふんわりした写真。

この日一番のふんわりした写真。

コスプレイヤーを撮っていると、大抵は白飛びしないで撮って欲しいと言われる。顔は明るく飛ばして欲しいけれど、衣装やウィッグは白飛びして欲しくないという無茶ぶりな要望にいつも四苦八苦する。ところでレイヤー基準の白飛びとは如何程のものなのだろうか。

それこそ初心者のカメラマンにありがちな、瞳以外は識別できないほどに真っ白ないわゆる失敗写真のことなのか、白飛びの面積にしても、衣装やウィッグが白飛びし過ぎているチョット飛ばしすぎの類いか、それともウィッグや衣装が少しでも白飛びしていたらダメなのか。

白飛びの許容範囲は、人によって様々だ。ストロボで顔を白く飛ばして欲しいというコスプレイヤーもいる。顔にかかる影や凹凸、その他のニキビや吹き出物などが飛び、レタッチいらずの肌に撮れるからだ。

一方で、衣装やウィッグの白飛びを好まないレイヤーもいる。カメラマン側に分かりやすいように、デジタル風にコスプレイヤー側の要望を翻訳すると、写真データのRGB値が255 255 255の部分を一切なくして欲しい、つまり衣装やウィッグが写っている部分は、データがない状態にはしないで撮って欲しいということだ。

その中間ぐらいの立ち位置で、「これくらいの白飛びならまあいいや」という人もいる。白飛びの価値観に関しては人さまざまで、これといった正解がない。これはプロの風景写真家も事情が同じらしく、デジタルカメラマガジンでも白飛びはOKかNGかで各カメラマンが持論を述べていた。

さて、先日初音ミクの可愛いキャラを撮影してきた。撮影前にテストショットをしたのだけれど、気は抜けないものだ。レイヤーさんにTwitterで速報に使って頂いていた。明るさテストだったので、実は少しだけピントが緩い。後はお互い初対面で緊張していた事もある。

撮影のはじめの段階で撮った写真が、一番可愛く撮れたかなと、家に帰ってデータを見返してみて思った。衣装やカーテンやシーツが白飛びしているが、肝心の顔はちゃんと写っている。

衣装やカーテンなどが若干白飛びしているが、顔は綺麗にふんわりと撮れている。

衣装やカーテンなどが若干白飛びしているが、顔は綺麗にふんわりと撮れている。

データ上に白飛びが発生していない写真。バランスが取れているが、先ほどの写真と比べると、ふんわり感が弱い。

データ上に白飛びが発生していない写真。バランスが取れているが、1枚目の写真と比べると、ふんわり感が弱い。

デジタル時代とフィルム時代の写真鑑賞の違い

白飛びが気になるのは、写真がデジタルになったせいもあるだろう。

デジタル時代の写真鑑賞法は、パソコンの大きなディスプレイを介して等倍表示をするのが前提となっている。当然撮影者の目は厳しくなるし、コスプレイヤー側にしても、現場でデータ確認の際に、カメラの液晶表示をせっせと等倍表示にして、自分の目にキッチリとピントが合っているか確かめる人が多い。デジタル時代になり写真鑑賞の目は厳しくなった。

先ほどピントが緩いという打ち明け話もしたが、これがフィルム時代の、写真はプリントで鑑賞する時代なら、ピントはキッチリと合っているように見える。

試しにA4プリントで印刷してみたが、24インチのディスプレイで8800万画素の写真を等倍表示で見るとピントは緩いが、A4サイズのプリントで見るとピントはキッチリ合っているという寸法だ。

白飛びにも同じ事が言える。大画面で等倍表示で写真を閲覧すると、白飛びとそうでない部分の境界がギザギザに描写されている。RAWデータで見てもそうなのだから、JPEGに圧縮変換すれば、白飛びの境界線は更にギザギザの、モザイクのような描写になってしまう。

こちらもA4プリントで確かめてみたが、白飛び部分は気にならない。胸元のピンクのリボンが少し描写が飛んでいるかなというくらいで、セーラー服の白い部分の白飛びはむしろ描写が滑らかだ。そもそもカーテンやシーツの白飛びなんて気にならない。

同じ写真データでも、パソコンで見るのと、プリントで見るのとでは、色味や階調性において趣が異なる点は否めない。5色インクのプリンタのせいなのか、それとも光の三原色と色の三原色の描写の違いなのか、プリントした写真は少し色が薄い感じもする。

むしろ白飛びのある写真は、パソコンのディスプレイで見た方が親和性が高いのではないかと思えるくらい、明るい写真はモデルを美しく引き立てている。白い衣装が白飛びする程に明るく飛ばした方がモデルが可愛く見える。

そもそもコスプレ写真でポスター並みの大きなプリントで鑑賞したりすることはおそらくほとんどないし、コスプレイヤーもわざわざ写真をプリントする人はごく少数だろう。ウェブに上げるにしても大きくても長辺1920ピクセル、一般的には長辺600pxから900pxが多い。

その程度の大きさなら、等倍で見た時に瞳がガチピンでない写真なんて、おそらく気づかないだろう。600px~900px程度の大きさの写真で、狙ったのにピントが合ってないように見えたら、それは明らかに問題のある失敗写真だけれど。

それに今はスマホで写真を撮り、スマホで写真を見る、スマホ全盛の時代だ。ウェブ閲覧にしても、僕のブログは6割がスマホからのアクセスだ。スマホで見ると、白飛びの境界線のギザギザが全く分からない。白飛びの有無に固執することが意味のない時代に片足を突っ込んでいるような状態だ。

白く飛ばす表現が必要な時もあるのに、それでも白飛びが駄目と固執するなら、柔軟な発想が求められる写真表現の分野で、その頭の硬さはスキルアップには致命的となるだろう。

方の羽根飾りを白飛びさせて、神々しく見せる。

方の羽根飾りを白飛びさせて、神々しく見せる。

というわけで、白飛びに関して軽く考察してきた。写真の教科書に書いてある通りの事に固執していては駄目だ。座学と実践の両輪で事に望むのは、いにしえの時代から受け継がれている箴言でもある。