瑠璃光院 – まほろば探訪 第19回

新緑が美しい瑠璃光院。秋の季節になると紅葉も楽しめる。
新緑が美しい瑠璃光院。秋の季節になると紅葉も楽しめる。

去年辺りにTwitterかどこかで新緑を水面に反射した美しい写真を見て、是非行きたいと思っていた場所がある。京都の瑠璃光院。京都市街から少し離れた緑萌える場所にその寺はひっそりと佇んでいる。

5月の晴れやかな空と涼やかな緑の中を10分ほど歩くとその寺に辿り着く。さっそく中に入り二階に上がると写真で見たのと同じ景色が広がっていた。

入り口で貰った写経の紙を机に敷いて、仏教の有り難い言葉をこれも貰ったシャープペンシルでなぞっていく。お経をなぞるだけで心が浄化され救われた気持ちになるというのは、科学万能の世の中では信じがたいことだがやってみる価値はある。一服の清涼剤だ。或いは他の来訪者達がやっていたように、もっと長い写経をやれば更に心が涼やかになるかとも思ったが、時間も無かったので写真を撮ることにした。

パノラマに広がる緑はさながら絵巻物のようで、水面と思っていたのは艶のある二台の机だった。美しいの一言に尽きる。やはりカメラで写真を撮っている人が多い。皆譲り合いながら物静かに写真を撮っている。

団体客がぞろぞろとやってきて机に写経の紙を置き、緑を愛でながら写経を始めたので、それをしおに一階に行ってみることにした。

さて一階へ降りて入り組んだ細い廊下を行くと、大きな蒸し風呂がある。大海人皇子(後の天武天皇)が壬申の乱の際に背中に負った矢傷を癒やしたと伝わる蒸し風呂があるのだ。中に入ってみると、少し土臭い。昔の蒸し風呂はそれはそれは準備に大変だったそうで、半日がかりだったとか。

一階にも広い畳の部屋があり、パノラマに緑が広がっている。住職がやってきて畳の上にすわり、この庭や寺院の名の由来などを物語り始めた。住職の口にした瑠璃色という言葉が頭の中に美しく響く。庭には鹿や猪もやってくるのだそうだ。

お抹茶と和菓子も提供しているという事で、庭を眺めながら頂く事にした。こちらは1000円。静寂に包まれた美しい庭を眺めながら頂く抹茶の苦みと和菓子の口の中に広がる甘さは何とも格別だ。

静寂な庭を眺めながら飲む抹茶もまた格別。
静寂な庭を眺めながら飲む抹茶もまた格別。

御朱印を押しているとお経が始まった。お寺に来たのだなと改めて思う。

春と秋に特別拝観をやっていて、一般にも開放されている。この日は入館料2000円だった。秋になれば紅葉で色づいた美しい光景が広がっていることだろう。

アクセス

普段京都に観光に行く時は京都市営バスが多いのだが、今回は京都バスで八瀬駅前停留所まで一本で向かう。始発の停留所はいつもの如く四条河原町。阪急河原町駅で降りて6番出口へと向かう階段を上ればすぐ右にバスの停留所がある。京都市営バスの他に京都バスも停まる、京都観光の入り口と言っても過言ではないバス停だ。

この日もいい古都チケットで全ての交通費を賄った。阪神阪急各駅で1600円で販売している1日乗り放題のチケットで、京都の市営地下鉄と市営バス・京都バス乗り放題となっている。ただ瑠璃光院は京都の中心街から少し離れた場所にあるので有効区間が気になった。実際バスに乗っていても、ある区画から料金が上がり、ここからは乗り放題のプリペイドカードを持っていても追加分の料金を払わなければならないという。しかしいい古都チケットは有効区画内だそうで、追加料金を払う必要は無かった。

秋の季節になればまた行きたいと思っているが、おそらく新緑の季節よりも混雑していそうだ。今まで新緑や紅葉に特別な風情を感じたことはあまりなかったが、京都に何度も足を通うことで、美しいと思えるようになった。これも写真を趣味にしたことによる効能だろう。