etoile studio

風景写真のような人物写真 – 光と陰を探す

model & retouch : Airi

model & retouch : Airi

撮影に入る前に、「人物小さめで、本当にどこにいるのかいないのか分からないくらい小さめで、風景写真のように撮って欲しい」と言われた。「暗めで、彩度も落として欲しい」という。「ユージさんが『これ良い感じ』という風にしあげてもらえれば」とも。

こう言われたときにふと思い出したのが、神戸の小磯記念美術館で見た風景画だった。イギリスかフランスの広大な暗い森の中に、白い服の人物が小さく描かれている。記憶が正しければそんな感じの風景画だ。バルビゾン派の絵画だっただろうか。後で画集で調べておこう。

レイヤーさんの言わんとしていることは理解できたが、果たしてこの場所でそのような撮り方で上手くいくかどうか。背景は好きなところを選んで欲しいと言われたのでざっと見回してみたが、フランスの奥深い森というわけではなく、日本の江戸期の大商家のお庭だし、普通の家の庭よりは広いけれど同じようには行かないだろうなぁと頭をひねる。

考えるよりもまずは実行で、風景写真のように撮ってみた。風景写真と言えばパンフォーカス。F7.1くらいなら前景から奥行きまでピントが合うパンフォーカスとは行かないまでもある程度はシャープに写るから良いかと絞って、更にピクチャースタイルで彩度を−4までMaxに下げて撮ってみたが、どうもしっくり来ない。個人的には後でPCで見る分には母屋と庭の木々を背景に撮った写真がどことなくしっくりとは来るが他がどうも・・・。

空気感を出すために、開放F値1.4で撮影してみた。ほどよくボケて空気感は出たが、小さめに写るのが良いとのことなので距離を取ることになり、開放F値で撮影したポートレートによく見られる強めのボケは見られない。しかしそれが逆におどろおどろしい空気感を醸し出してはいる。

model:Anna | 85mm | M | 1/1000s | F1.4 |

model:Anna | 85mm | M | 1/1000s | F1.4 |

小さく撮って欲しいと言われていたから、更に距離を置いてみた。しかし構図を決めるのになかなか難渋した。

model:Anna | 85mm | M | 1/1000s | F1.4 |

model:Anna | 85mm | M | 1/1000s | F1.4 |

これ以上距離も取れず、背景も決めるのが難しく、言うほどモデルが小さく写らないので、場所を変えて撮影。すると上手い具合に枯れた木が前景として入るのでぼかして入れてみたら、雰囲気は良くなった。

model:Anna | 85mm | M | 1/640s | F1.4 |

model:Anna | 85mm | M | 1/640s | F1.4 |

更に橋の上に立ってもらうと、明るい場所に出て自然光がモデルを照らす。太陽はモデルの背後だが雲に隠れている。白黒のコントラストが強くなり求めていた絵が導き出せた。他のレイヤーさんたちも同じ位置に立ってもらう。レフ板も使用せず自然光のみで撮影。

model:Airi | 85mm | M | 1/1000s | F1.4 |

model:Airi | 85mm | M | 1/1000s | F1.4 |

暗さをどのくらいに設定するかが難しかったので、暗く撮って欲しいと言われたが少し明るさを残しておいた。白飛びを防ぐために若干暗めに撮る人が多いが、今回は暗い場所でもあるし黒潰れを防ぐために、極端に暗めになるようにはカメラを設定しなかった。ただ人物に当たる光は結構明るいので、暗めには設定する。現場で撮影データを見せたら喜んでもらえたが、パソコンのRAW現像の段階で更にここから一段暗く補正した。

使用レンズはZeissのOtus1.4/85。同じ位置から撮るなら普段は200mmの単焦点望遠レンズを使って被写体を引き寄せるところだが、今回は趣向を変えて、大きな暗い背景の中に明るい被写体がぽつんといる、美術館で見たあの風景画を念頭に置きながら撮ってみた。

こういう時にOtusの開放F値での描写性能が生きる。開放F値1.4でも収差が全くなく、ピントががっちり合うと極めてシャープに写るために、小さく写っているモデルでも、白黒のコントラストと共に際立つ。問題はやはりピントを合わせなければならないモデルが小さいために、開放F値でのピント合わせが難しい。おまけにマニュアルフォーカスのみのレンズ。何枚かはピントが合っていなかったが、その他はがっちりとピントが合っていた。

マニュアルフォーカスでも、開放F値1.4でガチピンで写真を撮る方法

まぁピントは合っていなくてもモデルは小さく写っているし、合っていないことが目立ちはしないからそういう絵作りもありかなとは思う。もちろんがっちりピントの合った写真もキチン撮っておくこと前提だが。

フレームの中では橋が斜めに走るので、この橋もどこに配置するかを考えたいところだ。やはり構図をおろそかにしては印象に強く残る写真は撮れないという思いが頭の片隅にある。

この撮影の数日後に京都国立近代美術館で開催されていたゴッホ展に行ったのだが、ちょうど上述したような対角線上の構図について、浮世絵と絡めたゴッホのこだわりが解説されていた。橋の対角線をどのように配置するか迷いながら撮っていたから、その絵を見て色々と考えさせられた。

今回のピンショットもしくはツーショットの撮影で楽だったのは、8割方の写真を暗めに撮って欲しいと言われたことだ。コスプレ写真だと肌を綺麗に白く写すために、どうしても明るく撮って欲しいと言われる。するといろんな箇所が白飛びする、衣装だったり、ウィッグだったり、石畳だったり、場合によっては顔そのものが白飛びしてしまいがちになる。

後は家に帰ってからパソコンの前に座り、キヤノンのRAW現像ソフトDPPで露光量を調整。彩度もピクチャースタイルの設定から−4にしていたが、カメラ内ではこれ以上は下がらないので、DPPの色調整のタブから、彩度を70まで下げる。キヤノンのDPPは優秀だが、adobeのLightroomを使えばもっとダイナミックに細かく絵作りが出来るだろう。