陰影あるなし写真、どっちがお好み? – 西洋と東洋の違い

陰影を付けるか付けないかで、写真のイメージがガラッと変わる。
陰影を付けるか付けないかで、写真のイメージがガラッと変わる。

ストロボライティングを用いたコスプレ撮影をしていていつも迷うのは、顔に陰影をつけて撮るか、顔の影をすべて飛ばして撮るかだ。前者は主に男装を撮る時、後者は女の子キャラを撮る時に用いる。

顔や体に陰影を付けることで立体的な表現が可能となるが、必ずしも男装を撮る時は絶対に陰影を付けて撮るというわけではなく、シリアスなシーンでは陰影は有効だが、アイドルキャラの場合は顔の影を飛ばして撮って欲しいとコスプレイヤーに良く言われる。

顔の影をストロボライティングで飛ばした写真。女性キャラに好まれる。
顔の影をストロボライティングで飛ばした写真。女性キャラに好まれる。
ソフトボックスで陰影を付けて撮影。シリアスな男子キャラに好まれる表現方法。
ソフトボックスで陰影を付けて撮影。シリアスな男子キャラに好まれる表現方法。

欧米のポートレートの作例を観ていると、女性のポートレートでも陰影を付けて撮影された写真が多い。こちらのコマーシャルフォトグラファーの対談によると、西洋絵画は陰影を付けて立体的に描かれるが、日本画は平面に描かれるのでその影響があるのではないかというような事が語られていた。まさかライティングの話で文化比較論が聴けるとは思わなかった。

言われてみれば日本画は平面的である。戦国武将や歴代の徳川将軍の肖像画も陰影がなくノッペリとしている。江戸時代に一時期、陰影法や大気遠近法などの西洋絵画の技法を取り入れた秋田蘭画の文化が華咲いたが、後継者もなく廃れてしまった。

長年培われた日本画の文化が、今になってまで我々の趣向に遺伝子として受け継がれているのだろうか。とかくポートレートにしろコスプレ写真にしろ、女性は陰影のない写真を好む傾向にある。

顔に陰影をつけると、肌のきめ細かな部分まで克明に描写される傾向がある点も見過ごせない。例えば月の写真にしても、満月の写真は平たいが、半月の写真になると陰影がついて、クレーターなども立体的に見える。

F7.1~F10くらまで絞って陰影をつけて撮ると、肌の毛穴や凸凹などが克明に描写されてしまうので、女性に避けられてしまう傾向にある。

顔全体を影を飛ばして撮ると、F10まで絞った写真でも肌の毛穴や凸凹は気にならない。ウェブに上げる写真サイズ長辺900px程度なら、肌レタッチなしでも充分問題なく肌を綺麗に写せる。

本音を言うと、男装にしても女子キャラにしても陰影を付けて撮った方が立体的になるので、見栄えが良いのではないかとも思うのだが、おそらく西洋的な価値観が染みついてしまっているせいだろうか。顔の影をすべて飛ばすライティングだと、平面的でノッペリとしてしまう。

しかしそのよう撮り方が日本画風てあり、日本の伝統でもあり、その伝統を受け継いでいる2次元の平面的な漫画やアニメのキャラクターの再現をするのがコスプレ写真の醍醐味であれば、自分が納得する要素の一つとして受け入れるしかないのかも知れない。