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Canon EOS-1D X MarkⅡのスペックを見た率直な感想

4年ぶりに発表されたキヤノンのフラッグシップ一眼レフデジカメEOS-1D X MarkⅡ

4年ぶりに発表されたキヤノンのフラッグシップ一眼レフデジカメEOS-1D X MarkⅡ

オリンピックイヤーとなる2016年の今年、いよいよニコンに続いてキヤノンもフラッグシップ機を投入してきた。EOS-1D X markⅡ堂々のリリースだ。

フラッグシップとは艦隊の旗艦という意味である。転じて企業の持てる技術の粋(すい)を集めて結晶化させた製品のことをいう。昔で言うところの戦艦大和である。大和自体は無用の長物、大和ホテルなどと揶揄されたが、当時の日本の持てる最新技術を余すところなく投入した超弩級戦艦は、大艦巨砲主義から航空機が有用となる時代へと移り変わった太平洋戦争末期に沖縄沖に沈みはしたものの、その後の日本の造船技術に多大な貢献をしたと言われている。

カメラにおけるフラッグシップ機は、その企業のいわば代表選手、メインスターであるから、オリンピックイヤーとなる年の上半期にリリースされるのが通例となっている。その性能の特徴として、連写性能の高さがあげられる。

キヤノンで言えば、5D系よりも画素数は低い。その代わりに連写性能は比較にならないくらい高い。実際にカメラ量販店で試写してみれば分かると思うが、機関銃を操作しているかのような感覚を味わえる。

画素数よりも連写数を重視するのは、オリンピックを取材するカメラマンの使用を想定してのことである。スポーツ撮影には連写機能が必須だ。1秒間に14ショットの連写性能は、スポーツ選手の躍動感や一挙手一投足を克明に捉えることを可能にする。

前置きが長くなったが、早速1DX MarkⅡの機能を、初代1DXと比べながら率直に述べていこうと思う。

Canon 1D X MarkⅡと1D Xの性能比較
Canon 1D X MarkⅡ Canon 1D X
外観 EOS-1D X MarkⅡ 1dx
有効画素数 2020万画素 約1810万画素
画像エンジン DIGIC6+ DIGIC5+
測光 約36万画素RGB+IR測光センサー 10万画素RGB測光センサー
連続撮影速度 約14コマ/秒(最高16コマ/秒) 約12コマ/秒(最高14コマ/秒)
常用ISO感度 100~51200(拡張:最小50・最大409600) 100~51200(拡張:最小50・最大204800)
測距点 61 61
記録画素数 5472×3648ピクセル 5184×3456ピクセル
モニター 3.2型TFT液晶モニター・約162万ドット 3.2型TFT液晶モニター・約104万ドット
タッチパネル ×
動画記録方式 4096×2160(4K):59.94p
1920×1080(Full HD):119.9p
1920×1080(Full HD):30p/25p/24p
映像記録/圧縮方式 Motion JPEG
ALL-I(編集用/I-only)、IPB(標準)、IPB(軽量)
MPEG-4 AVC/H.264
フリッカーレス ×
GPS機能 ×
記録媒体 CFastカード/コンパクトフラッシュカード コンパクトフラッシュカード
重量 1530g 1530g
シャッター耐久 40万ショット以上 40万ショット以上

2020万画素フルサイズCMOSセンサーを搭載

ついにキヤノンもフラッグシップ機で2000万画素台に乗せてきた。実にめでたい。5D系はすでに2000万画素を超えているが、高連写性能と高画素数を兼ね備えるのは、並大抵のことではないらしい。14コマ/秒の連写性能を誇りながら、2000万画素の大台に乗せたのは、一つの到達点と言えるだろう。

さて、よく聞かれるのが、デジカメは1000万画素あれば十分という意見。PCの画面で見るのもスマホで見るのも縮小するし、プリントしても違いが分からないから、高画素はいらないという意見だが、果たして本当にそうだろうか。筆者はいつもその手の意見に疑問を抱かざるを得ない。トリミング使用や、高解像度ディスプレイ、4Kテレビ、巨大パネルの展示など、後々の様々な用途や技術発展を考えれば、高画素であった方が互換性が効くことだろう。1000万画素では少ない気がするし、妥協的な意見としか思えない。

あとはPCのスペックさえ上がってくれれば、高画素でも表示や編集に問題がないだろうから、言うことなしなのだが、2000万画素クラスなら、1シーズン型落ちの16万円程度の国産デスクトップPCでも何ら問題なく編集作業ができる。

デュアルDIGIC 6+を二基搭載

フラッグシップ機が高価な理由の一つは、16コマ/秒の連写性能を実現する為に、デジタルカメラの心臓部である画像エンジンを二基併設していることだ。

1DXはDIGIC5+だったが、今回は6+となった。先に発売された5060万画素を誇る5Ds・5DsRはDIGIC6だったので、さらに改良が加えられたのだろう。高感度撮影でのノイズの低減だけでなく、レンズの各収差や回折現象の補正なども向上したようだ。要はより速く、より美しくなったということだろう。

常用ISO感度51200・拡張ISO感度H3:409600

ISO感度の上限が1DXの2倍となっている。喜ばしいことだ。2倍になったということは、それだけノイズが減らせたということだろう。おそらくカメラを買い換える点で一番重視したいのは、高感度撮影でのノイズだと個人的に思う。この点が飛躍的に改善されなければ、買い換える必要性を感じない。

さて、輝度ノイズ・色ノイズの処理性能向上がいかほどのものかは実際に撮影したデータを見てみなければ分からない。このあたりは今月あたりカメラ雑誌が特集してくれると思うので、待とうと思う。

ISOオートの低速限界

プログラムモード(P)や絞り優先モード(Av)などで撮る際に、ISOオートの不便さについて先日の記事で述べたが、この機能が新たに加わったことで、手ぶれしないシャッタースピードに併せてISO感度を自動変更できるようなので、非常に喜ばしい機能だ。野外でのポートレート撮影が楽になる。

ピクチャースタイルのディテール重視と、シャープネス設定「細かさ」「しきい値」

この機能は5Ds・5DsRですでに実装されており、DPP4に対応したキヤノン製のデジタルカメラなら、カメラ側に実装されていなくても、恩恵を被ることができる。ファームアップでもいずれ対応するでのはないだろうか。

値として実にわかりにくいが、たとえば風景とディテール重視を比べた場合、後者の方が被写体の線がクッキリと目に見えるように描写される。対して風景は色という名の脂がのっていてコッテリした感じだ。

レンズ光学補正

キヤノンのホームページを見て驚いたのは、今後新しく発売されるレンズは、すべてレンズ側にレンズ光学補正のデータを加えるようだ。そして今までのレンズ光学補正データは、1DX MarkⅡにすべて備わっているとのこと。つまりmarkⅡを購入すれば、パソコン経由でデータを取り込む手間が省けるということだ。

レンズごとに併せて、周辺光量補正、色収差補正、歪曲収差補正、回折補正の4項目も細かくオンオフに設定できる。

目新しいのは、回折補正だろう。被写体をカリカリに撮りたい場合や風景写真の撮影者には朗報な機能だ。ローパスフィルターの解像力低下の補正にも一役買っているというから、5DsRでローパスフィルターキャンセル機を投入したとはいえ、ローパスフィルターの必要性にこだわるキヤノンとしては、この機能でキヤノンの方針をユーザーに納得してもらう意図もあるのだろう。

カメラ内デジタルレンズオプティマイザ

デジタルレンズオプティマイザは、キヤノンがユーザーに無償で提供している純正のRAW現像ソフトDPPに備わっている機能の一つ。先に述べたレンズ光学補正では対応できない収差をこれで補う。キヤノンのホームページ上では、「コマ収差、サジタルハロ、非点収差、球面収差など」となっているが、これらの収差の補正機能は、今回新しく加わったのだろうか。DPP4にはこれらの項目は存在しない。ローパスフィルターの悪影響もこの機能で改善できるそうだ。やはりキヤノンはローパスフィルターの性能にこだわりを持っているように見受けられる。

パソコン経由でDPPによる処理を行わくても、カメラ内でデジタルレンズオプティマイザの機能を適応させることができるというもの。ワークフローの改善に一役買うことだろう。パソコンでRAW→JPEG変換よりも、JPEG撮って出しカメラ内処理完結データの方が、画質が良い場合があるとも聞くので、これを機にRAWとJPEG同時保存で撮る楽しみも増えるかもしれない。

記録方式

三種類のRAWと四種類のJPEG。この辺りは特別言及することはない。完成された十分な機能だ。

圧縮率を10段階で変更できるそうなので、用途に合わせてファイルサイズを柔軟に対応できる。

4K動画、オートフォーカス機能

ついにキヤノンも4K動画に乗り出した。なぜ5Dsと5DsRに実装されなかったのか残念でならないが、おそらく画像エンジンの処理が追いつかないという理由だろうか。

4Kがどれほど綺麗なのか、家電量販店のテレビコーナーに行けば、一目瞭然だ。今までのテレビとは全く違う。ハイビジョンが出た時は、こんな綺麗な映像はないと感嘆したものだが、4Kは更にその上をいく。臨場感が半端ない。テレビのディスプレイの奥に実際に俳優がいて動いているかのような感覚に陥る。一度blu-rayで映画を見たら、DVDにはもう戻れない感覚と似ている。いずれ4K動画にも目が慣れてしまい、次は8Kということにもなりかねない。

キヤノンの人もカメラ雑誌のインタビューで自慢していたが、5Dsから動画もAFで撮れるようになった。この機能は確かに素晴らしい。ただインタビュアーはカメラではあまり動画を撮らないのか、若干スルー気味だった。

14コマ/秒、最大16コマ/秒の連写性能

1DXよりも連写性能がさらに向上した。今後一眼レフはどこまで性能が向上するのか。向上してもデジカメの売り上げは右肩下がりなのが残念だが、もっと向上すればスマホに取られたユーザーも戻ってくるかもしれない。

筆者はスポーツは撮らないので、この辺りは特に述べることが見当たらないが、実際連写で撮ると、凄い。バシャバシャバシャバシャバシャー!! 武器を持っているような感覚になる。

というわけで、1DX MarkⅡにおける連写性能はメインディッシュの項目なのだが、この程度で述べるにとどめる。

シャッター音・振動対策

連射でもシャッター音をソフトにできるように対応。あの機関銃掃射のような音がソフトになるわけだ。実際にこれは実機で試してみないことには分からない。

5Ds・5DsRには、5060万画素という高画素によって目立つ手ブレやミラー稼働によるブレを最小限に抑える工夫が施されていたが、1DXMarkⅡにも5Dsで培った技術は適用されているのだろうか。

約36万画素RGB+IR測光センサー

36万画素は1DXの3倍となる。この部分で何が向上するのかというと、AFの精度や測光、さらにはオートホワイトバランスやオートピクチャースタイル、オートライティングオプティマイザなどでもより正確な色や処理が期待できるというわけだ。AWBで一面緑の場所で撮ったら全体的に寒々しい色になる事もなくなるのだろうか。小さい顔にAF精度が増すのは助かる。

フリッカーレス撮影・オートホワイトバランス(雰囲気重視・ホワイト重視)

両方ともすでに5Ds・5DsRで実装されている機能。フリッカーレス撮影は、蛍光灯下での撮影で速いシャッタースピードで撮影すると、色のバラツキが出るのを抑える機能。

オートホワイトバランスの雰囲気重視・ホワイト重視は、オレンジ色の光源下で見たまま通り温かみのある色で撮影するか、白重視に補正して撮影するか。こちらはお手持ちのカメラがDPPが対応していれば、パソコンで補正可能。

AF性能の向上

61点デュアルAF。全測距点でF8でも対応。

カメラ内GPS機能

どこで撮影したかがデータに付加される機能。写真の管理には最良だが、インターネットなどに写真を上げる際には、データによっては位置情報は削除しておいた方がいい。データに付加された情報から個人の住所などが特定され悪用される恐れもある。GPS機能は追加で買うと高いので、カメラに備わっているのは非常に魅力的だ。

後はプロフェッショナル機だけあって、業務の効率化に対応した様々な細かい機能がついている。

と、まあ各機能の所見を述べてみた。正直発表時にスペックだけを見たら、初代1DXとそんなに違わないので買い換えはないかぁと思っていたが、こうやってじっくりと性能を吟味していくと、物欲が湧いてきた。1DXと5DsRの両方を所有している身としては、これ以上買い足すとお財布が傷むどころではないので、キヤノンの株価が1万円の大台に乗るのを待とうと思う。業績回復か自社株買いの発表お願いします。