疑似望遠効果のメリットとは何か

Photoshopでトリミングすれば疑似望遠効果を得ることが出来るが・・・。
Photoshopでトリミングすれば疑似望遠効果を得ることが出来るが・・・。

カメラ雑誌などでAPS-C機が取り上げられる時、長所の1つとして疑似望遠効果が度々上げられる。疑似望遠効果とは、同じ焦点距離のレンズでフルサイズ機で撮影した場合に比べて、センサーサイズが小さいことが原因で撮影範囲が切り取られるような形で、擬似的に焦点距離が長く見えるようになり、望遠効果を得られるという意味だ。

それなら初めからフルサイズで撮って、カメラのクロップ機能やパソコンのPhotoshopでトリミングすれば良いじゃないか、画質だってフルサイズの方が良いし。と筆者も最近まで思っていた。

しかしメーカーやユーザーからここまで疑似望遠効果の使いやすさが叫ばれるのだから、何かしらメリットがあるに違いないと、暇な時にあれこれと思いを巡らせていた。

疑似望遠効果が威力を発揮するのは飛行機撮影やスポーツ撮影、野鳥撮影の分野だろう。望遠レンズは高い。焦点距離が長くなればなるほど高価になるが、まさに飛行機撮影やスポーツ撮影は300mm以上の望遠レンズが必要になってくる。

本当は600mmの望遠レンズがあれば良いのだが、100万円以上する。おいそれとは手が出せない。そこで疑似望遠効果の見込まれるAPS-C機で撮れば、400mmの望遠レンズで撮影した場合、フルサイズに換算すると、キヤノン機の場合は×1.6倍で、実質640mmの焦点距離のレンズで撮影したような、より狭い画角になってしまうというわけだ。

400mmの焦点距離をカバーしたレンズなら、キヤノンの純正レンズでは実売価格26万円のズームレンズがある。100万円以上するレンズと比べると、手が届きやすい。更にシグマやタムロンなら、実売価格12万円で150-600mmをカバーしたレンズがある。(ただしテレ端の600mmの描写は甘いそうだ。)

12万円や26万円で、600mm以上の疑似望遠効果を得ることが出来る。つまりコストパフォーマンスの面から優れていると言える。

でもフルサイズ機で撮った方が画質が良いし、カメラのクロップ機能を使うなり家でPhotoshopを使ってトリミングすれば良いんじゃないの?という疑問が沸き起こる。画質を優先するなら、ほんのちょっとの手間じゃない、と。

しかしフルサイズ機は高価だ。30万円する。家計やお財布に優しいカメラ趣味を送るなら、画質の良し悪しについては目を瞑る選択も充分考慮に入れるべきだ。人は写真のみに生きるにあらず。他にも様々な楽しい趣味がある。コストパフォーマンスを重視するなら、APS-C機の方が最適だし、デジタルカメラの技術向上で10年前よりも画質は格段に良くなっているから、そこまで気にすることもないだろう。

でもAPS-C機だと、フルサイズで撮ったら写っている部分が切り取られちゃうんでしょ?それって勿体なくない?

確かに人物撮影やスナップ写真、旅の写真などを撮る場合は、フルサイズよりも小さいセンサーサイズは不利になるシーンがあるかもしれない。フルサイズと同じ広さを得ようと思ったら、被写体と距離を取らないといけない撮りづらさ、風景がたくさん入らない面において。そういった問題が生じた場合は、より広角のレンズを使用することで広く写るので回避できる。

疑似望遠効果が生きてくるのは、ポートレート撮影やスナップ写真よりも、飛行機撮影やスポーツ撮影、野鳥撮影などの、望遠レンズを使って撮影する分野だ。

フルサイズ機で400mmの望遠レンズで撮って、飛行機がそんなに大きく写っていなかったとする。空の余白や周りの余計な景色がやたら目立ち、主題の飛行機が小さくて霞んでしまう。トリミングして飛行機が写真に占める面積の割合を大きくする必要があるだろう。

つまり余ってしまう周辺の部分は、作品として写真を仕上げる際に不要な部分となる。つまり初めから切り捨てるべき、いらない部分というわけだ。写っていなくても問題のない無駄な部分を、フルサイズ機だとそのセンサーサイズの大きさから写してしまう。

もし切り取られる部分が不要と分かっている分野の撮影なら、APS-C機でも問題ない。トリミングの手間が省ける。これだけで撮影やその後のワークフローが快適になる。

そう考えると、疑似望遠効果と連写性能を兼ね備えたAPS-C機、Canon EOS 7D MarkⅡは、スポーツ撮影や飛行機撮影、野鳥撮影の分野のカメラマンに撮っては名機ではないだろうか。1秒間に10枚撮影が可能な機種は60万円以上するフラッグシップ機Canon 1DXMarkⅡの次に多い枚数だ。フルサイズ機の5DMarkⅢだと、1秒間に5枚しか連写できない。

しかも実売価格は12万円とコストパフォーマンスに優れている。金がかかり手が届きにくいスポーツ撮影や飛行機撮影、野鳥撮影の分野をぐっと身近にしてくれるカメラだろう。

※後記(2017/02/03)

よくよく考えてみれば、Canon 7Dmark2は画素数が2000万画素あるので、約1800万画素の1DXで撮るよりも拡大効果が得られる。同じ被写体を、例えば飛行機を、同じ地点から、同じ焦点距離のレンズで撮影した場合、同じ大きさにしようすれば、フルサイズ機で撮影した写真の方はトリミングしなければならない。トリミング不要の2000万画素と、トリミングしなければならない1800万画素の画像を比べれば、同じ被写体でもAPS-C機の方が画像サイズがが大きくなる。これがしきりにキヤンのパンフレットで謳われていたAPS-C機のメリットである疑似望遠効果かと納得がいった。